アクションヒロインを“演出”するコスチュームの妙
このスチールは改めて説明するまでもなく、ご存じ『こんな学園みたことない!』の「ワルキューレさやか」こと一条寺さやかである。
もともと、ジャケット・グローブ・ミニスカート・ショートブーツと、全身黒いレザーのファッションを身に纏っている「ワルキューレさやか」だが、こうやってモノクロでしかもこのようなトリミングがされていると、そのレザー感が半端なく、その表情も相まって、まるで俊敏な黒豹のようだ。
昭和60年代に百花繚乱のごとく世に送り出されたヒロインアクションドラマは、セーラー服がある種”正統”で、そんな中で『セーラー服反逆同盟』の“白いセーラー服”なんてアヴァンギャルドなコスチュームも存在したが、それでも「ワルキューレさやか」の黒レザー姿は突出した感がある。というかあまたの60年代系ヒロインと比べて、極めてアダルティだ(;^_^A
まあその点は、『スケバン刑事』3部作も『セーラー服反逆同盟』も『少女コマンドーIZUMI』も『禁じられたマリコ』も皆主人公(ヒロイン)は高校生(『花のあすか組』に至っては女子中学生!)なのに対して、『こんな学園みたことない!』の一条寺さやかは成人した中学校教師なのだから、それも頷けるところだ。ただし、それを演じる奥田圭子の、整ったいかにもお嬢様然とした表情が、つい彼女をあまたのJKヒロインと同系列に観てしまうきらいがある。
ところで、それが演出の妙であれ、斉藤由貴にしても南野陽子にしても浅香唯にしても五十嵐いづみにしても仙道敦子にしても中山美穂にしても、戦闘時に於いてはどこか“獣性”を感じさせる節があるが、こと奥田圭子の表情に関しては、むしろ凜とした騎士性を感じるのである。
彼女の身体能力の高さは、すでに『天使のアッパーカット』で証明されていたが、彼女の華奢な体格とお嬢様(ていうかお姫様)然とした表情からなかなか精悍なアクションヒロインをイメージしずらい。しかし、この黒いレザーのコスチュームに全身を包まれることによって、件のお嬢様然とした表情が、大人びたクールなヒロインに昇華され、悪党との戦いに説得力を持たせる。
キャットスーツがアンチヒロインというか小悪魔的な雰囲気を醸し出す例を挙げるまでもなく、コスチュームが、それを身に纏った女優の秘めた可能性を引き出し、キャラクターを確立していくことが往々にしてあるものだ。ヒロインアクションにおけるコスチュームの重要性を改めて感じている次第である。