神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

ハッピーエンドな「浅丘ルリ子」

 今年BS日テレは開局20周年だそうで、その記念の一環で、往年の石原裕次郎日活作品を集中的にオンエアしている。それでこの度放映されたのが『銀座の恋の物語』だ。

 

 今まで『狂った果実』『俺は待ってるぜ』『錆びたナイフ』『零戦黒雲一家』『夜霧も今夜も有り難う』『赤いハンカチ』『夜霧の慕情』を筆頭に、裕次郎主演の“日活アクション””ムード歌謡”映画はいっぱい観てきたが、今回の『銀座の恋の物語』はほとんど未見状態で、今回初めてラストまで観賞できた。そして意外なハッピーエンドにホロっとさせられた。

 

 本作はマドンナに浅丘ルリ子を起用し、愛し合う裕次郎とルリ子が、いよいよ結婚を決意して裕次郎演じる伴次郎の故郷へ向おうとした矢先に、東京駅に向か久子(ルリ子)がダンプにはねられ、そのため記憶を失う、という、『夜霧よ今夜も有難う』と同じ展開を迎えるんだけれど、その結末は『夜霧』とは別のものだった。

 

 『夜霧』では、ルリ子は記憶を失ったまま、某国の革命家(二谷英明)と結婚し、裕次郎は2人を無事国外へ逃亡させるため、彼女への思いを忍んで任務を遂行するんだけれど、本作では、彼やルリ子を取り巻く者たちの協力によって、最終的にルリ子は記憶を取り戻し、無事裕次郎と結ばれる。その過程で、裕次郎に思慕を覚えながらもルリ子の捜索に奔走する婦警役の江利チエミや、ルリ子の下宿のおばさんで、最期まで裕次郎やルリ子に献身するお松役の清川虹子裕次郎の親友で音楽家志望だったが、その夢に破れ密造酒のメンバーとして私腹を肥やし、一時は裕次郎とルリ子の思い出の絵画を金で奪い取るが、やがて二人のために絵画を返しそのまま自首する宮本役のジェリー藤尾が実にいい味を出していて、周囲の愛と献身にはぐくまれて、裕次郎とルリ子の愛が無事成就する、というストーリー展開になっている。結局思い出の絵画も記憶を戻す決定打にならなかったものの、宮本が作曲し裕次郎が歌詞をつけた歌、要はこの映画を撮るに至ったきっかけのタイトルと同名の大ヒット歌謡曲裕次郎が口ずさんだのかきっかけでルリ子が記憶を呼び起こす、という実にベタな予定調和な結末なんだけど、それもまた嬉しい(;^_^A 逆にこのハッピーエンドがあるからこそ、同じテーマの『夜霧よ今夜も有り難う』では、あんなクールな展開になったのか、なんて思ったくらいだ。

 

 

 それにしても、当時の浅丘ルリ子は実に美しい! ちょっとバタ臭い表情もほっぺの膨らみも、ぽっちゃりした唇も、憂いを含んだ瞳も素敵だ。世代的には、いしだあゆみと何処か表情がかぶる、やせぎすで失礼ながら化粧のケバい時代のルリ子をリアルタイムで観てきただけに、往年の日活映画で彼女の雄姿を観ると惚れ惚れする。確か彼女は少女時代ファンタジー系の作品『緑はるかに』に出演した際、その役名だった「ルリ子」がそのまま芸名になったと記憶しているが、この頃の彼女はまさに“ルリ(瑠璃(子)”の名にふさわしい、瑠璃色に輝くようなヒロインだったといっていい(;^_^A

 

 そして、どちらかといえば、薄幸の女性、それも最初は幸せでドラマ途中から厳しい状況に晒され耐える(『赤いハンカチ』もしかり)役柄が多い浅丘ルリ子だけに、本作のようなハッピーエンドで幸せに幕を閉じる姿を見ると、ますます素敵に見えてくる。

 

 こんな思いを味わうことが出来るから、こうやってまだ生まれる前に制作されたはずの往年の日本映画に思いを馳せてしまうんだろうな(;^_^A