神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『復讐鬼』 ~83年前の「津山事件」を巡る3本の映画

 知らなかったんだけど、今日5月21日は、今から遡ること83年前に、かの「津山三十人殺し」の大惨事が発生した日だったんだそうだ。

 

史上最悪の大量殺人「津山三十人殺し」猟銃と日本刀で村人を襲った男の真実
https://news.yahoo.co.jp/articles/f41fa92e4706c95b3b85c87a5f287382622c03d0

 

 この「津山三十人殺し」(もしくは「三十一人殺し」)といえば、かの横溝正史が戦時中岡山に疎開した際、この事件のことに触れ、後に『八つ墓村』を発表するんだけれど、その『八つ墓村』(特に野村芳太郎監督版)と、若松孝二監督の『新日本暴行暗黒史復讐鬼』、田中登監督(そして奥山和由プロデュース)の『丑三つの村』の3作品が、この事件をテーマ及びモチーフにして描かれた映画である。

 

 勿論無差別殺人者に理由も糞もないが、それでも、実際の「津山事件」では、犯人である都井睦雄の事件に至るまでの過程はいささか同情の余地がある。そのためか、山崎努の鬼のような狂気が炸裂した『八つ墓村』を除き、『復讐鬼』も『丑三つの村』でも、殺人者の主人公を、同情すべきアンチヒーローとして描いていた。

 

 「映画が展開される世界はすべて虚構である」という前提の上で、私は個人的に全編アナーキーなバイオレンズに包まれた若松監督の『復讐鬼』に強く惹かれている。本作はもともと、レンタルショップでその隣に陳列されていた同監督の『犯された白衣』をタイトルに惹かれてヾ(- -;)ヾ(- -;)借りようと思っていたが、いつになっても「貸し出し中」のタグが付いたままなんで、仕方なくこっちの方を借りて観て、あまりの衝撃にすっかり虜になってしまった曰く付きの作品である。本作を観たおかげで、若松監督のピンク時代の初期の作品に興味を持ち、そのまま若松監督に傾倒していったものだった。

 

 

 本作では、『丑三つの村』以上に主人公兄妹は、村人から凄まじい虐待を受け、しかもその過程で主人公は母親と妹を失い、文字通り“復讐鬼”と化して、彼らに酷い仕打ちを行った村民たちを次から次へと日本刀で殺害していく。その過程が粗くコントラストがきつめのモノクロ映像で描かれているので、そのシャープさは半端なく、いつの間にかシリアルキラーである主人公に思い入れてしまう、何とも危険な作品である。

 

 

 主人公の吉澤健は、黒澤明監督における三船敏郎や、石井輝男監督における吉田輝雄のように、初期の若松作品で、監督の分身というか“代弁者”のような役割で常に主役を務めていた。今でも健在で、当時の若松プロにオマージュを捧げる名作『止められるか、俺たちを』にも出演していたのは嬉しかったな(;^_^A