神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

沖雅也と森田健作~これも昭和の徒花~

 先日AXNミステリーで『赤かぶ検事奮戦記』(フランキー堺版)の放映が始まった。当初は、各時間枠が5時間程度と長く、「もしかしたら『火曜ミステリー劇場』枠のスペシャルをまとめて放映するのかな?」なんて思ったけど、実際は第一シリーズから順番に流していく枠らしい。本作に関しては、特に『赤かぶ検事奮戦記Ⅲ』が山口県萩市を舞台にしていて思い入れが強く、昨年本作がホームドラマチャンネルで放映されると知り、わざわざCATV受信契約のグレードを上げたという曰くつきの作品だ。それ故このシリーズは再放映も含めて既に全話録画出来ているので、今回はせいぜい垣間見程度の観賞になりそうだ。

 

 さて、本作は御存じの通り、フランキー堺演じる柊茂検事が、シリーズ一貫して名古屋弁丸出しの“気のいいオッサン”然としながらも、探偵ばりに、そして意外に理詰めに事件を解決し、それでいて時に犯人(加害者)へも情を魅せるという、判事らしからぬ姿が好評だったシリーズだ。彼の娘の葉子は弁護士という彼と真逆の立場にいて、シリーズ初期は法廷における“親子対決”も何度か展開されていた。今回たまたま垣間見たのは、最初の『赤かぶ検事奮戦記』第一話で、この時の葉子役は倍賞千恵子だった。柊検事の“片腕”である榊田警部補と、ライバルの法眼正法弁護士は、共に検事の娘の葉子に“ホの字”の設定らしく、ちょうど榊田が柊家の前で葉子を待っていたところに、葉子を乗せた法眼弁護士の自家用車が到着したことで一悶着が展開する。ちなみに法眼役は沖雅也で、榊田役は森田健作である。そんな2人が同じフレームの中でいがみ合っているシーンを観ながら、今更ながら気づいたのは、「あ、これって『惑星大戦争』のコンビじゃないか!」ってこと。

 

 

 1977年公開のSF特撮映画『惑星大戦争』(福田純監督)は、その前年に全米で空前のヒットを挙げた『スターウォーズ』に触発されて、同作の……否、その18年前に制作された『海底軍艦』(本多猪四郎監督)の“換骨奪胎”として制作された映画だ。その劇中、沖演じる村井と森健演じる三好は、親友として、また宇宙戦艦「轟天」のクルーとして登場する。そんな二人は、彼らが尊敬する「轟天」艦長・滝川博士(池部良)の愛娘・ジュン(浅野ゆう子)と共に曰く付きの関係で、かつては付き合っていた三好がアメリカに旅立ったため、ジュンは村井と交際していたものの、宇宙人の地球侵略戦争が突如勃発し三好が「轟天」搭乗のため帰国したことで、微妙な三角関係が展開していく。三好の帰国によってジュンの“やけぼっくいに火が付いた”ことを感じ取った村井は、三好と一対一で語り合い、今回の金星での宇宙人との戦闘でもし生きて帰ったらジュンにプロポーズすると、“死亡フラグ”あげまくりの宣言をする。結果、金星へ向う過程でジュンは宇宙人に拉致され、それを救出に向かった三好たちを援護するために、小型戦闘機スターファイターで出撃した村井は、ジュンの無事救出の報を受け安堵するものの、帰艦直前に撃ち落されるという、犬死に近い形で命を落とす。

 

 その後、「轟天」と敵宇宙戦艦「金星大魔艦」との戦闘が繰り広げられ、劣勢の「轟天」から、自らが発明した究極の秘密兵器「エーテル爆弾」を抱えたまま、滝川博士が「大魔艦」に特攻して、金星もろとも宇宙人の侵略の野望を粉砕して、物語は幕を閉じる。そして村井の死を踏み台にして、生き残った三好とジュンとの恋の行く末を暗示しながら「終」マークがスクリーンを包む。

 

 この「惑星大戦争」が公開されたのが1977年。上記の『赤かぶ検事奮戦記』の放映開始が3年後の1980年なんで、撮影時には未だ『惑星大戦争』の現場の余韻は残っていただろう。もっとも本作の現場は、元ネタ『海底軍艦』と同様、上映までほとんど猶予のない超過密スケジュールだったらしいので、とてもその余韻に浸る暇はなかったかもしれない。でも立場は違えど、同じ三角関係を演じているのは、傍から見たら実に興味深い(;^_^A

 

 ちなみに、件の沖雅也は若くして“自裁”し、森健は自民党議員や県知事として今も傍若無人にふるまい、そして浅野ゆう子はイロモノ扱いだったグラビアアイドルのイメージを払しょくするかのようにトレンディー女優として一時代を築くなど、それぞれが全く異なった人生を歩んできた。滝川博士役の池部良も、柊茂(赤かぶ検事)役のフランキー堺も、既に鬼籍に入って久しい。まさにすべてがもはや“二重の過去”となった「昭和」の、これも徒花のような話だ……