神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「ウルトラセブン」と広島

 先日、広島市西区民文化センターで開催された「ウルトラマンシリーズ秘話 『ウルトラセブン』最終話上映」なるイベントに参加してきた。これは28日より3日間開催される「ひろしまアニメコンサート」の一環で、タイトル通り、西区民ホールのスクリーンでセブン最終話『史上最大の侵略』前後編が上映され、トークショーのゲストは、な、何と! ウルトラシリーズをはじめ、『ミラーマン』『ファイヤーマン』『怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス』など円谷作品に多数楽曲を提供している“ウルトラ音楽の父”こと冬木透氏と、ウルトラ黎明期の『ウルトラQ』、『ウルトラマン』で連続してヒロイン(マドンナ?)役を務めた桜井浩子さんのお二人! それで入場無料とは何と太っ腹な企画。正直「これは事前に整理券が必要なのでは?」と思い直接西区民文化センターの受付に問い合わせたくらいだ(;^_^A

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 当日は開場30分前に着いたものの、既に会場前は長蛇の列。それでも広いホール故、無事座席は確保できた。そして定刻に始まった当イベント、司会を務めたのは作曲家にしてエリザベト音大の冬木さんの“半世紀後輩”の坪北紗綾香嬢。若い娘さん故、往年のウルトラファンとしては「?」なキャスティングだったが、なかなかどうして、若いなりに50年近く前の作品をしっかりレクチャーして臨んだようで、堂に入ったインタビュアーぶりだった。ゲストのお二人に関しては、冬木氏とは4年前の九月に開催された「こころの故郷 ひろしまコンサート」でお会いした(https://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/26535584.html)けれど、桜井さんを生で拝見するのは今回が初めて。しかしイメージとことなり、実に気さくな方だった。

 イベントの方は、まず「史上最大の侵略」の前編が上映され、続いてお二人と坪井嬢によるトークショー、その後後編の上映、ミニトークショー、という流れだった。トークショーでは「ウルトラマンシリーズ秘話」と銘打たれているだけあって、お二人から興味深い話をいくつも聞けた。桜井さんからは、『Q』のオーディションに参加したことが出演のきっかけとなったことや、元々東宝映画女優でありながらできたばかりの「円谷プロ」に出向しての作品作りにはやや抵抗があったものの、スタッフもキャストも分け隔てなくみんなで作品を作っている現場を楽しく思うようになったことや、『Q』では全て自前の衣装で臨んだこと、また、怪獣と対峙する際に目線に困ったこと、そして、好きな怪獣は、『Q』では「ピグモン」(おそらく「ガラモン」と勘違いしていたと思われる)・『マン』では「ジャミラ」と語った上で、「ジャミラ」の登場する『故郷は地球』の台本を読んで思わず泣いてしまい、そこで改めて自分たちは凄いドラマに出演してるんだと実感したことなどを語ってくれた。

 続いて冬木氏だが、まずセブンの楽曲を故円谷一監督(兼社長)から依頼された際に、当時のテレビの小さな画面では表現しきれない宇宙の広大さを曲によって表現してほしいと言われたことを語ってくれた。そして話題が有名な防衛隊出動・戦闘シーンの定番曲「ワンダバ」に移った際、本来は『帰ってきたウルトラマン』で初めて登場したはずの「ワンダバ」が、何故かセブンで流れていたように思いませんか、との“謎かけ”に始まって、元々『ウルトラセブン』の主題歌は、実際の曲と、インストルメンタルのみ予告編で使用された「ウウウウウ~ルトラセブン~♪」のNG曲と共に、もう一曲あったことを披露。しかもその曲は「ワンツゥスリフォ(ファイブシックス)セブン!」の、かの有名な劇中曲『ULTRA7』で、だから元々短かった同曲を主題歌然とさせるために前奏をあんなに長くしたのだそうだ。この曲は現場でも結構好評だったようで、『帰マン』の際も同等の曲を求められたものの、タイトルが『セブン』だからできた「ワンツゥスリフォ~セブン」の様な数字繋がりの歌詞は使えず、結局「ワン」のみの「“ワン”ダバ」が果てしなく続く「ワンダバ」が完成したのだそうだ。そんなわけで、最初の氏の“謎かけ”は、『セブン』の劇中に「ワンダバ」のルーツが流れていたから、というのが答えだったらしい。もしかしたら知る人ぞ知る有名な話なのかも知れないが、私にとってはとても新鮮だった。それと「セブン」最終回に、戦闘シーンさえも敢えてシューマンのピアノ狂想曲を選曲したのは、いつも戦闘シーンは勇ましいものばかりなので、たまにはこんな趣向もいいのではないか、との考えがあった、という話も聞くことができた。

 私にとっては、作品鑑賞も去ることながら、お二人のトークが楽しみで楽しみで今回のイベントに参加できたので、実に有意義な時間を過ごせた(^^) 何といってもかの冬木氏が、広島ゆかりの作曲家であることが広島人として誇らしい(^^)

 ところで、桜井さんの方は、何故自分が「『セブン』のイベントに呼ばれたのだろうか?」なんて意味深なことを話していたが、この言葉は実に奥が深い。『Q』『マン』でヒロインを演じた彼女も実は1本だけ『セブン』に出演している。彼女をミューズとして重用していた実相寺昭雄監督の第12話「遊星より愛をこめて」がその作品だ。しかしながら本作は『怪奇大作戦』第24話「狂鬼人間」同様、放映はおろかソフト化も封印された、今は観ることが叶わない曰く付きな作品である。しかもその理由は、実際のドラマとは関係なく、登場するスペル星人が当時の少年誌で勝手に「ひばくせい人」」と表記され、それに被団協が抗議したことがきっかけである。だから桜井さんは自分の『セブン』体験談を語りたくても語れない立場にあった訳だ。

 そうなると『ウルトラセブン』のイベントが「広島」で開催され、そのゲストが「桜井浩子女史」となると、いかんともしがたい思いに駈られる。しかしながら、元平和祈念資料館館長で自らも被爆者であった故高橋氏は、問題発覚後同番組を観賞して「むしろ平和のメッセージを感じさせる作品だ」との感想をもったそうだし、この作品の封印には問題点を指摘する識者も多い。今回のこの思いがけない“カップリング”をきっかけに、同作品の封印が解け、次回のこのようなイベントが開催できた暁には、是非再び桜井浩子さんをゲストに招き、その上で「遊星より愛をこめて」の上映が実現し、今度は「自分も『セブン』の一員」と、胸を張って『セブン』について語っていただきたいと切に願う。そしてその突破口になるのが、何を隠そう、我が広島であるはずなんだ。