神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「野村君!」 ~ジャンボーグAとミラーマンがクロスオーバーする時?~

 現在CSの「チャンネルNECO」で再放映されているミラーマン。その注釈に「円谷プロが『ウルトラ』シリーズ以外で初めて製作した巨大特撮ヒーロー」とあって、なるほどと思ってしまった。確かに東映における『人造人間キカイダー』『イナズマン』「ロボット刑事』『宇宙鉄人キョーダイン』『快傑ズバット』『変身忍者嵐』『超人バロム1』『忍者キャプター』といった“アザー仮面ライダー”ヒーローと同様、この『ミラーマン』から『ジャンボーグA』『ファイヤーマン』『恐竜大戦争アイゼンボーグ(アイゼンボー)』といった円谷“アザーウルトラ巨大ヒーロー物”が次々と生み出されていった(個人的には、他にも東宝特撮怪獣映画も含め、メインキャラではない“傍流”の作品が大好きだ(;^_^A)。

 

 さて、先にも書いた『ジャンボーグA』は『ミラーマン』放送終了から1年後、『ファイヤーマン』『ウルトラマンタロウ』『怪獣奮戦記ダイゴロウ対ゴリアス』と共に、「円谷プロ創立10周年記念」作品として企画・制作された特撮ドラマである。この『ジャンボーグA』は、他の円谷ドラマと比べて、いくつもの画期的な特徴を有していた。中でも、主人公の立花直樹が、セスナと自家用車に憑依した(と書けば妙な表現になるが、要はエメラルド星人がこれらの“乗り物”に戦闘ロボット機能を授けた、という意味)「ジャンボーグA」と「ジャンボーグ9」を必要に応じて「道具」のように使いこなすというアイディアは、他の特撮ドラマに例のない、斬新で素晴らしいアイディアだった。

 

 そんな『ジャンボーグA』の画期的なアイディアの一つに、先行する『ミラーマン』の対怪獣チームSGM(サイエンス・ガード・メン)のメンバーが参加するというのがある。今まで東映まんがまつりの『マジンガーZデビルマン』『グレートマジンガーゲッターロボ』のように、それぞれ冠たるヒーローが競演するものは存在したが、ヒーローを支えるチーム組織ノミの競演というのも珍しい。しかも、同じ制作会社の作品とはいえ、放送局が異なるキャラクターが、映画ならいざ知らず、テレビで共演するのは、あたかも「全日本プロレス中継」(日テレ)に新日本(ワールドプロレスリング)の猪木が出演するみたいなくらい、なかなか考えられないシチェーションなのだ(ちなみに『ミラーマン』はフジ系で、『ジャンボーグA』は毎日放送)。だからこそ嬉しくなってしまう。

 

 『ジャンボ―グA』にSGMが参戦するのは、第32話「大爆発!マッドゴーネの最後」から。その時、SGMの村上浩チーフ(和崎俊哉)と野村由紀隊員(市地洋子)が、なんとジャンボフェニックスに乗って登場する。しかも設定が、「『ミラーマン』での戦いが終わったのち、それまで“アフリカ戦線”で戦っていた」という、「それってナチのロンメル将軍かよ!」って突っ込みを入れたくなるようなものだった。でも『ミラーマン』(フジ系)の象徴ともいっていいジャンボフェニックスが、毎日放送のブラウン管に出るというのは、今考えてみても信じがたいことである。

 

 この設定は、『ジャンボーグA』企画時にあったわけではなく、シリーズ後半に向けての“テコ入れ”として急遽決まったことなのだそうだ。それ故、それが思いがけない効果を生む。御存じ『ジャンボーグA』の対怪獣チームPATの紅一点は“肝っ玉女性隊員”こと野村せつこ隊員(加瀬麗子)だが、32話で参戦するSGMの紅一点も野村由紀隊員。そこでPATの作戦本部にやってきた村上チーフが「野村君!」と呼ぶと、せつこ・由紀の“両”野村隊員が「はい」と返事し、直後村上チーフより「失礼、由紀君の方だ」といわれ、野村“せつこ”隊員が憮然とした表情を浮かべるシーンがあり、実に印象に残っている。これなんかも、予め『ミラーマン』と『ジャンボーグA』の世界観をクロスオーバーさせるつもりならば、そもそも両チームの紅一点を同じ姓にするはずもないので、如何に急ごしらえの設定だったかが与り知れる。ちなみに、オンエア当時は、シリーズを通じてPATの野村せつこ隊員に十分感情移入していたから、このシーンを観て「SGMのメンバーって不躾だなぁ」なんて思ったものだったが、今思うと、急遽決まった設定を逆手に取った、スタッフの「お遊び」的な演出だったのだろう。

 

村上「野村君!!

 

野村由紀・野村せつこ「(異口同音に)はい!

 

村上「失礼、“由紀”君の方だ」

 

野村“せつこ”「…………(このオッサン、何なん!!)」

 

 

  


  東映の『極道vsまむし』『極道vs不良番長』の例を挙げるまでもなく、自社に多くのキャラクターを有する制作会社は、そのクロスオーバー作品を企画することが出来る。また時としては、今回の例のようにサブキャラの競演という面白い企画も可能だ。最近はなかなか映画の世界では難しくなってきているが、その分テレビドラマの世界で、何とかこのように胸がわくわくするような企画をどんどん出していってほしいものである。

 

 ちなみに、件の32話で『ミラーマン』以来久々の共演となったこのコンビは、共に広島出身である(和崎俊哉は呉・市地洋子は東広島)。しかもチームで2人だけ出演というのも、『ミラーマン』を通じても今回だけ。それゆえ“広島”という固い絆で結ばれている2人のこと、「野村君!」と呼んでそれが「由紀隊員」であるのも自明のことと言うべきである……なんてね(;^_^A(;^_^A