神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『惑星大戦争』と『宇宙からのメッセージ』 日本特撮陣の心意気

 昨晩のチャンネルNECOは19時台から東宝の『惑星大戦争』、そして20時半から『劇場版 宇宙からのメッセージ銀河大戦』を放映した。分かる人には分かると思うが、この2作品(例え『宇宙からのメッセージ』オリジナルではなく『~銀河大戦』の方だったにしても)が並んで放映されることにある種の感慨を覚える人も多いと思う。

 『惑星大戦争』『宇宙からのメッセージ』は共に78年公開(厳密に言えば『惑星~』は77年末公開)で、ご存知のように日本国内では同78年夏の公開となった全米大ヒットのSF超大作『スターウォーズ(SW)』の、悪くいえば便乗映画として制作・上映された“ロジャーコーマンスピリット”な作品たちであった。ただ、それからもう40年近く経った今思い起こしてみると、外枠は同じ“ロジャーコーマンスピリット”な便乗映画でありながら、個々を検証してみると、全く違うベクトルを持つ映画だったといえる。

 改めて『惑星大戦争」を観るにつけ、当時の制作陣が「例えきっかけが『SW』であっても、俺たちは俺たちのキャリアと意地で“俺たちのスペースオペラ"を撮ってやる」との気概を持っていただろうと思えてならない。本作は"スペースオペラ"の体を成してはいても、骨の髄までブレない"東宝特撮"だった。当時そういう頑なな態度を、「近未来SFなんやから、冒頭シーンで森田健作は普通の制服ではなくゴレンジャーのような恰好で出てきたらええねん」などと揶揄するコラムがあったりしたが、別にこれで良かったんだと思う。現代社会が突如遭遇した宇宙人侵略による滅亡の危機、海底軍艦轟天号」を現代に蘇らせた万能宇宙戦艦「轟天」、ジェットジャガー宇宙戦艦ヤマト乗組員の制服を融合させたような宇宙服、馬鹿馬鹿しいまでにデコレーションされた金星大魔艦、そしてオキシュンデストロイヤーを彷彿させるエーテル爆弾に発明者滝川博士の特攻と、まさに東宝特撮王道と言っていいの外連味のオンパレード! 今になって、これが『SW』の便乗と決していわせないくらいの気骨に溢れている。興行的には併映の百恵友和映画『霧の旗』をメインといわれるくらい惨憺たる有様だったようだが………

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 それに対し『宇宙からのメッセージ』は、そんなプライドは明後日の方に捨て置いて、ただただ『SW』の“便乗”に特化した、イタリアの“マカロニSF”のような作品に仕上がっている。ガバナズ要塞の通過する描写、宇宙船同士のドッグファイトなどなど、『SW』に興味を示し始め、公開が待ちきれないファンを取り込むのに十分な、まさに“ロジャーコーマン的商法”に気持ちいいくらい便乗した作品となった。それでも、ストーリーのベースが『南総里見八犬伝』であったり、本家ILMも当時成し遂げられなかった筒の中を宇宙船が跳ぶシーンを意地で撮ったりと、東映映画人の心意気が見え隠れしていて嬉しい(^^)

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 両作品にいえることだが、天下の「東宝」「東映」がハリウッドで受けた(しかもコーマン一家他インディペンデント系映画制作会社が守ってきたB級SF市場を大手に荒らされることとなる)SF映画の便乗映画を撮れと上から指令された時の失望感・怒り・屈辱を考えたら胸が痛む。でもそれを逆手にとって、片や「意地でも『SW』に尻尾は振らないよ」というスタンスから敢えて古き良きノリの『惑星大戦争』を撮った東宝特撮陣や、一方で「どうせパクるんだったら“本家”を超えてやれ!」とばかりに、忠実すぎる映像と、開国僅か200余年の国に日本の深い歴史を知らしめるストーリーを用意した東映特撮人の心意気には、そろそろ正しい評価を与えてあげなければならない。

 何といっても日本のお家芸は「0から1を生み出す」ことよりも「1を100にかえる」開発力なんだから……(;^_^A