神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

東宝特撮映画に於ける「ケレン味」とは

 昨晩のCATVでは、午後7時頃から『宇宙大戦争』と『エクスペンタブルズ2』とが、また9時台には『惑星大戦争』と『エクスペンタブルズ3』とがバッティングするという、アクション・特撮の好きな自分にとっては、身体もチューナーも2つほしいくらい、ある種贅沢すぎる夜になってしまったよ。まあ、幸い全作DVDは持ってんだけどね(;^_^A

 さて、不肖私がこの中の一作『惑星大戦争』に格別の思い入れをしていることは、当ブログでも何度か紹介してきたが、当時中学生の頃、本作を今は亡き宝塚会館地下2階の広島東宝(嗚呼、この言い回し何度も使ってるよなぁ……ヾ(ーー ))で封切観賞した後、高3の時の再放送、いいオッサンになってからのDVD観賞、そして今回の観賞、と半世紀以上に亘って何度か観ていくウチに、最初は感激、でも徐々にアラが見えて失望、でもそんなアラが逆に魅力的にあって再評価、と、あたかも“2周回って元に戻る”みたいな感覚になった、愛すべき映画である。

 今回見直してみて改めて感じたのは、「これはまさに早すぎた“実写版『宇宙戦艦ヤマト』だったのかなぁ」との思い。考えてみれば遙か14万8千光年先にある星を目指して1年という限られた時間で往復しなければならない「ヤマト」に対して、「轟天」の航路は地球から9日で到着する太陽系内の金星までなんで、よっぽど“あり得る”展開ではあるが、ただ単に「ヤマト」の物語をシンプルに再構築して作った実写特撮と思えばそれもアリかなって思う。実際当時の技術で「ヤマト」の実写化を目指したら、案外こんなテイストの物語になったに違いない。

 他にも、侵略者の旗艦「金星大魔艦」(これも何とも安直な“あり得ない”ネーミング)一艦のみ倒せば闘いは終わり、という安易さや、“オキシジュンデストロイヤー”宜しく都合良く存在していた究極兵器「エーテル爆弾」の存在、そして「轟天」艦内での滝川ジュン(浅野ゆう子)のあっけない誘拐劇に、何と「金星大魔艦」艦内に侵入してのこれまたあっけない奪還劇等々、本作はとことん“予定調和”に満ちている。そのくせ準主役級の沖雅也をあっけなく殺してしまったりなど意外に乗組員が死んでいく展開など、まるであらゆる手段を講じて観客の心を揺さぶろうとしている様が見て取れる。もっともこう書いてしまうとまるで批判のように思われてしまうかも知れないが、実はそんな部分に強く惹かれて、本作が改めて好きになったわけである(;^_^A

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 この根底にあるものこそ、前のブログでも言及したように「ケレン味」だったのではなかったか。ここまであり得ない大風呂敷を広げつつ、力業と“お約束”とで観客に分かってもらおうとする手段だ。思えばその前に放映された『宇宙大戦争』においても、クライマックスにナタール円盤母艦の絶対零度冷線によって上空に吹き飛ばされる東京のビル街、自動車、都電のシーンも、正直誰一人それが実際に起こった出来事と思う者はいまい。でもそこら辺は“暗黙の了解”であって、素直に今スクリーン上に展開している光景が“作品世界の中での現実”として観て、それで大いに楽しんでいたのだろう。そんな“お約束”を共有してこそ、作品の「ケレン味」が生きてくる。

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 CGの革新的な進歩が、逆に観客から想像力を奪ったせいで、近年は「ケレン味」がなかなか理解できない時代になっていったのかも知れないけれど、もともと映画とは、現実を忘れる快感と、物語世界にのめり込む快感とを味わうために存在するメディアだと思うので、あまり“非現実”と目くじらを立てることなく、むしろ「ケレン味」を素直に受け入れ、楽しむ方が絶対にいいはず。ドラマにまで“ドキュメンタリー”のような誠実さを求めなくていいから、まずはお気楽に楽しむべき!(;^_^A