神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『マンハント』 ~ジョン・ウー監督が描いた「角川」映画~

 昨晩CSでジョン・ウー監督の『マンハント』を視聴。今回が初見だったんだけど、観終わった率直な感想は「何! 何! 凄んげぇ面白いジャン!!」って思い。ジョン・ウー監督と言えば、『男たちの挽歌(英雄本色)』シリーズがお気に入りなんだけど(特に『Ⅱ』)、本作もそれに勝とも劣らないくらい、とても楽しめる作品だった。観賞後暫く興奮を禁じ得なかったよ(;^_^A

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 物語は、ご存知のようにかの佐藤純彌監督が徳間資本で「大映ブランド」として撮り、日本よりも中国で大ヒットした1976年の作品『君よ憤怒の河を渉れ』を、中国資本でリメイクした作品である。オリジナルで高倉健が演じた主人公の検事が、今回は中国人の敏腕弁護士に替わった以外は、概ねオリジナルの世界観で描かれている。それにしても、主人公のドゥ・チウの漢語表記がオリジナルと同様「杜丘」だったり、彼を追う大阪府警係長(警部?)役の福山雅治がこれまた同様に「矢村」だったり、ヒロインのチー・ウェイが「遠波真由美」だったりと、オリジナルへのリスペクトに満ち溢れたネーミングだったよ。そう言えば、チー・ウェイが徐々にオリジナルの中野良子に見えてくるから不思議だ(もしかしたらそれを見越してのキャステングか?)。

 ただし、設定上の大きな相違は、人間を思うままにコントロールする新薬「AX」が、傷みを忘れ強靱な肉体を持つ化学兵器に替わっていたぐらいだったが、展開自体は、オリジナルを遙かに凌駕するくらい、破天荒且つノリノリ且つハチャメチャで、「オリジナルが持つ何処か重苦しい雰囲気をリメイク版でも引き摺っているのかなぁ」って不安視していた自分にとっては、驚くくらい予定調和・勧善懲悪の物語だったよ(;^_^A オリジナルでの矢村(原田芳雄)が“正当防衛”の名の下に諸悪の根源・長岡(西村晃)に無数の鉛の弾丸をぶち込む衝撃のクライマックスシーン以外は、今回の『マンハント』の方が外連味たっぷりに演出されていたと思うね。

 劇中、レイン(『朝鮮美女三銃士』のハ・ジウォン!)とドーン(ジョン・ウー監督の愛娘のアンジェルス・ウー!)の華麗な殺し屋2人組(冒頭の居酒屋でのヤクザ皆殺しのシーンは秀逸!)が執拗にドゥ・チウらを追い詰めたり(レインは最後まで物語に関わる)、カーチェイス・バイクアクション・淀川で展開する水上バイクアクションで血湧き肉躍らせてくれたり、闘志迸るガンアクション・ソードアクション・果ては肉弾アクションまでこれでもかと畳みかけたり、『男たちの挽歌Ⅱ』のチュ・ユンファとディーン・セキの敵包囲陣突破の際に二人で階段を転がり落ちながら銃を乱射するシーンが、チャン・ハンユーと福山雅治によって再現されたり、『手錠のままの脱獄』があったり、「闘え!ドラゴン」の倉田保昭が抜群の身体能力健在のまま渋く登場したり(これもリスペクトあってのキャスティングか?)、斉藤工が“噛ませ犬”役で出演したり(;^_^A、やっぱり竹中直人が出てたり(;^_^A、ともう、娯楽アクションの全てをつぎ込んだかのような、息もつかせぬてんこ盛りの内容。クライマックスも、敵の懐に飛び込みながら化学兵器を投与されたドゥ・チウが、それでも意識は失わずに矢村係長と共闘して、敵の製薬会社の連中をバッタバッタと情け容赦なく撃ち殴り締め上げて文字通り叩き殺し、ついにはオリジナルの長岡に匹敵する諸悪の根源・酒井親子(國村隼池内博之)を追い詰め、自棄になって自身に投薬した息子・宏を返り討ちにし、父・義廣は息子の死を嘆いて自ら命を絶つという、如何にも(そして個人的には好みの)な勧善懲悪な結末を迎える。

 オリジナルでは、事件解決後も杜丘は冤罪ながら検事には戻れず、ほろ苦い結末を迎えるが、こちらの方は「物語の展開に関係なく敵が倒された瞬間ジ・エンド」という香港映画のセオリーを踏襲してか、何事もなかったかのように、ドゥ・チウと矢村は笑顔で別れを告げる。その際に矢村が「better tomorrow」って呟いたシーンには思わず涙してしまったよ(何を隠そう『男たちの挽歌』の英タイトル名!(;^_^A)

 邦画音楽の第一人者・岩代太郎の劇伴はどこか往年の大野雄二を彷彿させるし、全編日本ロケだったし(主に大阪・奈良・岡山)、かなり多くの日本人スタッフ・キャストが参加してるし、本作は「ジョン・ウー監督が撮った邦画」もしくは「ジョン・ウー監督が描いた角川映画(春樹の方)」といった佇まいを感じさせる映画だった。もっとも日本を舞台にしながら、日本語と中国語と英語の微妙なブレンド具合から、出演者の会話(日本語パート)が福山雅治と彼の部下役の桜庭ななみのやり取りを除いて、全てカタコトのように聞こえてしょうがなかったよ。明らかに日本の役者同士とわかっていてもね(;^_^A


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