神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「わかもの映画祭」感想(コンペティション)編①

 もう10日も経っちゃったけど……10日に開催された「わかもの映画祭」参加作品に対する感想の続きです(;^_^A 今回はコンペティション「若者が制作映画部門」の6本です。

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『貞代』(葉月朔史監督)
 この作品は、去る2月に参加した「スクリーンライブHiroshima8th」でも上映されたが、その時は会場入りが遅れてしまった関係で、ようやく今回全編の観賞が叶った。この作品のポイントは何といっても、Jホラーの、そして『リング』の“お約束”を逆手に取った(言葉の意味としても、実際の演技としても)演出の妙に尽きるのではないか! “貞子”を託した恐怖と怨念の存在である「貞代」を、そのまんまスィートなラブロマンスの領域に文字通り引きずり込む着想は見事としか言いようがない。本作は女性監督によるものだが、まさに「女性の感性侮る事なかれ」と痛感させられる出来だった。「貞代」の素の可愛らしさもさることながら、彼女を支える彼氏役のぶっきらぼうでクールな演技も実に良かった。

『記憶×記憶』(白根貴大監督)
 二人の女子高生の友情とすれ違いを感じさせる冒頭に、二人が並んで座るブランコの映像に特殊なエフェクトをかける演出と、大いに期待を持たせつつ、ここで物語はおしまい。唐突な感じを受けたが、舞台裏では作品の方向性や日程での“葛藤”があったらしい。映画というものの特性として、生のライブや舞台と違い、作品は100%完成しないと出すことすら出来ないという厳しさがある。「まだ“完成”まで達していないけど、取り合えず“出たとこ勝負”で行こう」が通用しないメディアである。それ故、何とか上映出来るように持って行った所は評価したい。また流れた映像自体は若々しさを感じさせて実に雰囲気が良かったので、次回作は大いに期待できる監督及び作品だったと思う

『願い』(中村暦監督)
 この作品も「スクリーンライブHiroshima8th」で既に観賞していた作品だが、僅か5分の尺に主人公のまさに「願い」が凝縮されている、何とも切ないストーリであることを改めて思い知らされた。この作品の魅力は2人の登場人物の憂いを含んだ演技と、時間と空間が“曖昧”にブレンドされて交錯する構成に尽きる。特に主人公の「願い」というか「未練」がストレートに伝わり、観ていてドキドキしてしまう。高校生時代の思い出ながら、一瞬その後のバイク事故の時の彼に姿を変える細かなショットは前回見逃していただけに、流石、と思ってしまった。それを受け止めきれない彼女の切なさもビンビン伝わってくる。さりげないシーンが、重く心にのし掛かる、そんな映画だった。

『記念寫眞」(香川美香監督)
 昨年2月の「スクリーンライブHiroshima7th」以来の観賞。兎に角この映画の妙は、登場人物3人の設定が見事に観る者の予想を裏切ってくれること。亡霊?って思ったキャラが実は“狂言回し”の主人公だったっていう前半の“オチ”に圧倒され、後はそのまま作品世界にのめり込んでしまう計算されたテクニックだ。突如訪れる凄惨な場面から、主人公が緩やかに狂気に走っていくシチュエーションは秀逸! 『電光石火☆八城忍』で主役を張ってくれた香川美夏さんが、主演・監督と八面六臂の活躍を魅せてくれている逸品。以前かレビューで「ラストがもう少し分かりやすかったら、もっとよかった」なんて書いてしまったんだけど、再見してそれは私の観賞の浅さだったと気付いて猛反省。強烈な結末が衝撃的な作品だった。

『雨上がりのあとに』(小島舞子監督)
 優しさに満ちあふれた等身大のハートフルな物語。雨に降られた主人公が偶然訪れた喫茶店で、これまた偶然にも同じ年頃誕生日の男性と出会う。二人の微妙な距離感と、その裏腹に惹かれ合う雰囲気がいい。雨傘に関する自分と妻とのエピソードを語るなど、どこか2人にエールを送っているような、店のマスターの優しいまなざしも素敵。日々の生活に翻弄されながらも精一杯生きている若者たちの生活と、ファンタジックな雨の設定が上手くマッチしていて、仄かな恋愛ストーリーに展開していく。演出面で非常に計算された数多の「偶然」重なり合って、タイトルのように、本当は「雨上がり」が好きな彼らのために、しっとりした青空が広がるエンディングに繋がっていく。雨にまつわる撮影秘話も聞かせてもらったけど、条件の厳しい中、上手くまとまった作品だった。

『ボクらのかたち~君と歩いていく未来~』(中野裕李監督)
 いきなり強烈な「別れ」のシーンに圧倒される。彼女役の主人公の視点に立った移動撮影が見事で圧倒される。この映画の上手さは、途中までありふれた恋愛ドラマの設定を踏襲しつつ、後半でアッと思わせる演出にある。何処にでもある「男」の勘違いと嫉妬かと思いきや、その矛先と理由は別にあった、というオチというかテーマには驚かされた。「彼氏」役の演技が兎に角素晴らしく、確かに後から考えれば声が高かったかなって思ったけど、普通に男と思いこんで観てしまった。彼(彼女)の存在なくして本作は成立しない位の存在会だった。「LGBT」というテーマに敢えて真正面からチャレンジした心意気を評価したいし、やや荒削りな演出もそれだけこのテーマに対して思い入れがある故と考えると、まさに若者の思いとパワーを感じさせる作品だった。

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