神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「わかもの映画祭」感想(映画上映会)編

 昨日で2週続いた広島インディーズムービー界の「黄金週間(ゴールデンウィーク)」は終了してしまい……その反動でちょっぴり放心状態に陥っているけれど(;^_^A  気を取り直して、今までおざなりになっていた上映作品の感想をここに認めたいと思う。まずは9日の「わかもの映画祭」(映画上映会)から。生憎午後からの参加だったんで、上映作品のうち拙作『天使諜報★神宮寺真琴~市民の敵は場外へ飛ばせ!~』と劇場商業映画『鯉のはなシアター』を除く8作品について(『鯉のはなシアター』はいずれ別立てで……)。

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充実していた上映会パンフレット!


『楽々園物語』(佐々木宏一監督)
我々の世代にとってはとても懐かしい,かつて当時の五日市にあった遊園地「楽々園」。その開業当時の8ミリフィルムが見つかったということで企画された作品。今風の若者がそれをネットで見掛け、渋る彼女と一緒に今の地名だけ残った「楽々園」に向かったことで起こる、ハートフルなファンタジー。地元の協力もあって、取材形式の冒頭から、一人の少女を登場をきっかけに、時空を超えたファンタジックな世界に観る者を誘う。グリーンバックを用いたクロマキー合成によって、8ミリ映像と現実がクロスオーバーする幻想的なシーンが良かった。物語の展開も伏線の張り方も、意外にオーソドックスで、観ていて安心できる作品だった。

『聖火広島をゆく』(広島エイト倶楽部制作)
 タイトルの通り、今から55年前、日本で初めてオリンピックか開催された際、ギリシャアテネで灯火された聖火が、九州を出発点に日本を縦断する過程で、広島を通過した光景を克明に記録した映像作品。それも単なる記録に留まらず、きめ細かい演出によってじっくり魅せてくれる作りになっている。それにしてもテレビ局顔負けの映像量・アングルには舌を巻く。一度しかない撮影のチャンス、しかもビデオと違い一発勝負の撮影で、その成否も直ぐには確認できなかった8ミリフィルムによってあそこまでの映像を的確に残した、老舗中の老舗「広島エイト倶楽部」の技巧ぶりは、まさに圧巻の一語に尽きるほどだった。記録映像として後世に残して欲しい作品である。

『御曹司』(本光優香監督)
「スクリーンライブHiroshima7th」でも観賞し、その際感想も認めた(
https://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/29234597.html)作品だが、今回再び観て、改めて各役者陣のノリの良い演技を堪能させてもらった。こう言う一発ネタのジョークの効いた軽快な作品は観ていて本当に癒やされる。女性監督だからこそ描けたのであろう等身大の女性像がとても愛くるしい。

『手紙』(吉松幸四郎監督)
 雨に煙る尾道を舞台に、主人公の女性と訳あって離ればなれになった父との心の交流を描いたショートストーリー。全編降り続く雨は、敢えてそんな日を狙ったのか、それとも不可抗力なのかは分からないが、雨にしっとり濡れた街(尾道には雨も似合う!)に、主人公の指すアンブレラの光景が実に映えていて、主人公の境遇と父と娘との微妙な距離感に上手くマッチしていたと思う。また流れる水滴のごとく、流れるようなカメラワークも作品世界に溶け込んでいくようで心地よく、映像を見ているのではなく,映像世界の中を漂っているような気分にさせてくれる。主演の藤岡真由子さんは、『神宮寺真琴』シリーズの謎多きマネージャー・真船桂とはまた違った“静”の魅力を感じさせてくれている。5分という短い尺の中に、果てしない世界を感じる作品である。

『dead track~廃線路~』(吉松幸四郎監督)
 配線路という虚無的な世界に、白と赤のコントラストも鮮やかなコスチュームに身を包んだ神秘的な女性。「風車」「音叉」「柘榴」といったアイテム。理屈めいたストーリーなど要らない、圧倒的な映像が全てを物語ってくれる作品だった。それも、映像が「物語」を説明するわけでもなく、「テーマ」を伝えるわけでもなく、ただただ映像が映像として、観る者の心の中にストレートにどんどん流れ込んでいくような感じ。この感覚は、かつて理由も分からずそれでも強く惹かれた、NHKドラマ『四季・ユートピアノ』のそれを彷彿させる。“神秘性”なんて陳腐な理由付けすら凌駕する程の映像の強烈な存在感。映像が映像のまま駆け抜けていく力強さを感じる。

『こころのともだち』(吉田浩美監督)
 主人公は周りと馴染めない性格だが、彼女には唯一自分を理解してくれる“親友”がいる。しかしその姿は、彼女以外の誰にも見えない……果たして“親友"の正体は? との謎かけから、彼女が大切にしている千切れた写真の切れ端をキーワードに、主人公の成長の物語へドラマは展開していく。本作は「広島こわい映画祭2018年」にノミネートされた作品だそうだが、むしろ色濃いファンタジーのテイストを感じさせる作品である。拙作に、出産時に死別した双子の片方の魂がもう一人の心に宿る『瞳』(1988年)って8ミリ映画があるんだけど、もしかしたらその手の映画化と思ったりもしたけれど、彼女と似た境遇を体験した女子大生(?)の献身が、彼女を自立させる内容になっていて、件の“親友”の正体は明かされぬまま。ただ、海岸での二人の別れはあまりにも美しく、涙を禁じ得なかった。ある種極めてオーソドックスな小粋なファンタジー作品だった。

『トマト仙人とサヨ物語』(岩本浩明監督)
 神石高原町を舞台に、都会での生活に疲れた女性・サヨの帰郷と、何故が現地に出没する“トマト頭”の「トマト仙人」との奇妙な交流を描いた作品。冒頭の、いきなり怪しげな男との唐突なバトルに端を発し、サヨにストーカーまがいに関わって行くトマト仙人のエキセントリックな演技が兎に角目を引く。トマトのかぶり物の中に真っ赤に塗りたくった顔の仙人の言動のシュールなこと! この役を演じた脇田吉宏氏は、他にもバカップルのヤンキーや研究所のエリート博士、果ては女子大生(?)と、あらゆるジャンルを演じきるフレキシブルな役者さんだ。そんな彼に翻弄されるサヨだが、物語は意外にハートフルな展開に……ちなみにサヨ役の女性、どこかで観たことがあるな、なんて思っていたら、何と『女子高生戦士☆英あいり』に出演してくれた竹下ひかりちゃんじゃあ~りませんか!

『夢に向かって~広島市青少年センター今昔物語~』(佐々木宏一監督)
 今回の「わかもの映画祭」の舞台になった広島市青少年センターの歴史を、同センターで活動する女子高生・せーみを狂言回しに展開するセミドキュメント。『楽々園物語』同様、センターを記録した8ミリフィルム(それも当時にしては珍しいプロモーション映像だったらしい)をきっかけに制作された作品。今回の「わかもの映画祭」の趣旨に一番マッチした内容だった。セミドキュメントの手法を取りながらドラマとしてもしっかり魅せてくれているのは『楽々園~』でも発揮された佐々木監督の手慣れた演出の妙に尽きる。歴史と今が交錯する、タイトル通り「今昔物語」が上手く描かれていたように思う。広島市青少年センターに思いを馳せるにはうってつけの作品。主人公のせーみさんは『女子高生戦士☆英あいり』と時と同様、元気いっぱいの演技を魅せてくれている。


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