神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

映画よ憤怒の川を渉れ!

 時節柄というか……今日立ち寄った書店で、思わず買ってしまった。結構高価だったけど、今こそ読まないわけにはいかないだろう。

 「映画監督 佐藤純彌 映画よ憤怒の川を渉れ(シネマよふんどのかわをわたれ)
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 あれだけ凄い大作のラインナップを携え、「巨匠」の名をほしいままにしながら、おそらく氏に関する書はこれぐらいではなかろうか。それ故今回手にした次第。折角なんで、今からじっくり、時間をかけて読んでいきたいと思っている。

 ところで、以前氏のことを、「“一見”凡庸な御用監督の様に見られてしまいがちな」云々と称したことがある。勿論“一見”と理を入れた以上、その逆説を弄するための表現だったんだけど、確かに氏の大作は、みな制作者サイドの“要求に答えたような「無難」作品に仕上がっているように一般に理解されている節がある。しかし、私が記憶している氏の作品の中には、実に過激なシーンが満載されていたと思う。

 例えば、「角川映画第三弾」と称して、一大海外ロケや莫大な広告宣伝費をつぎ込んだ文字通り超大作であった『野生の証明』においても、冒頭からサバイバル行軍に駆り出された陸上自衛隊特殊工作隊員たちの描写の中で、とある隊員(キャスト名未詳)が飢えに苦しんだ果てにアーミーナイフで自分の腕の肉をほじくり出して喰らうという、何とも殺伐としてえげつないシーンが、ストーリーに殆ど関係なく登場したり、他にも主人公・味沢の抹殺を図る特殊工作隊が、その過程で機密保持のため友軍の自衛隊員を悉く殺戮する血糊迸るシーンもあったりと、ある種ドラマそっちのけでトラウマものの演出がなされていた。

 また、徳間大映資本で制作され、昨年ジョン・ウー監督の『マンハント』でリメイクされた『君よ憤怒の河を渉れ』では、ラスト原田芳雄演じる刑事が、検事の高倉健を陥れるなど諸悪の根源だった黒幕の西村晃を、「俺が裁く」と言わんばかりに拳銃でめった撃ちして叩き殺すシーンが、実に過激で秀逸だった(これこそ真の“スカッと”だぜ!)。

 そして、最近やっとレンタルで観賞できた『実録・私設銀座警察』に至っては、復員後、自分の妻が進駐軍の兵隊と不倫の果てに子供まで授かっていた事態に狂乱した復員兵・渡瀬恒彦が、その子をフルスイングでドブに投げ入れて絶命させた挙げ句、妻も撲殺する(そのくせ、件の米軍兵には何も出来ない)というアナーキーな場面に端を発し、主にその後ヒロポン中毒の“殺人マシーン”に成り下がった渡瀬を中心に、残虐ともスプラッターともつかない過激なシーンが延々と続く。

 「“一見”凡庸な御用監督」の正体が、実はこんな過激な描写を徹底する、まさに「能ある鷹は爪を隠す」監督だったのである。でもそれをひけらかさない。そんなところが実にダンディーでカッコイイのである(;^_^A

 この佐藤純彌監督は勿論、同様のカテゴリーで論じられることが多い、鈴木則文監督や舛田利雄監督についても、これから拘って、いろいろ考察していきたいと考えている。確か舛田利雄監督関係の書物も、一冊はあったような記憶が……