神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

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佐藤純彌監督~凡庸なるが故の職人芸~

 角川映画の『人間の証明』は、その後の自分に大きな影響を与えてくれた尊い作品だ。この原作本を貪るように読んだおかげで、読書を通じて文芸作品に深く興味を持つことが出来たことで今の職を得ることが出来た。また、この映画を通して「角川映画」に傾倒したおかげで映画を深く愛することが出来、最初は「自分で原作を書いて角川映画化」なんて途方もない夢を見ながら、やがて大学で自主映画に触れ、今日までインディーズながら映画制作を続けてきた。

 そんなわけで我が人生の“エポックメイキング”的な映画だけに、当然本作を演出した佐藤純彌監督のことも早くから名を覚え、且つとても興味を持っていた。佐藤監督は、その後も角川で『野生の証明』を手がけたり、傑作・問題作取り混ぜて「大作の監督」ってイメージが強く、それこそハリウッドのジョン・ギラーミンを彷彿させる監督でもあった。

 ただ映画に精通すればするほど、映画に対して“スレ”てきたりするもので、黒澤明のような絶対的な“権威”でもなく、実相寺昭雄鈴木清順大島渚石井輝男といった“カルト”な人気を誇るマニアックな監督でもない佐藤監督には、いつしか「無難だけど個性に欠ける」まさに“凡庸”な監督のレッテルを勝手に貼ってしまって、「きっと上層部の覚え目出度い人だから、巨額の制作費をつぎ込む大作に抜擢されるんだろうな」なんて穿った見方をするようになってしまった。

 しかしながら、佐藤監督の他に舛田利雄監督や鈴木則文監督といった、一件“凡庸な御用監督”の様に見られてしまいがちな面々が、実はどんな作風であろうともどんな条件であろうとも、そつなくこなして一定のレベルの作品を作り出す、本当の意味での“職人監督”なんだって思えるようになってきた。まさに“凡庸”なるが故の職人芸といってもいい。それに佐藤監督はその気になれば『実録・私設銀座警察』のような、上記のカルトな監督たちでさえ裸足で逃げだしそうな企画でも、見事に映画化しているではないか。まあ、『北京原人Who are you?』は御愛嬌だとしても……

 それはともかく、先に挙げた3人の職人監督に中では、その作品のスケールから一番の巨匠だったといっていい佐藤純彌監督の訃報を聞き、また昭和の稀代の監督が黄泉の国に旅立ってしまったことを嘆くと共に、もう夢もなくなった“うつつ”の世界を離れ、今頃天国で、往年の盟友・深作欣二監督と旧交を温めてるんじゃないかな、って密かに願っている……合掌



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 映画監督の佐藤純彌が多臓器不全による衰弱のため、都内の自宅で2月9日に86歳で死去していたことが明らかになった。遺族が東映を通して発表した。

 関係者によると佐藤は約3年前に消化器系疾患の診断を受けたが、手術などの治療を拒み、普通の生活を続けることを選んだ。今年の1月19日には、東映東京撮影所OBで行われた恒例の麻雀大会に参加し、元気な姿を見せていたという。2月16日に通夜、本日17日に告別式が都内の斎場で親族のみで執り行われた。喪主は長男の佐藤東弥

 1932年11月6日生まれ、東京都出身の佐藤は、東映撮影所に助監督として入社し、1963年の監督デビュー作「陸軍残虐物語」でブルーリボン新人監督賞を受賞。“やくざ映画”を中心に監督生活をスタートさせ、68年には東映を退社しフリーに。1970年代後半には「新幹線大爆破」「君よ憤怒の河を渉れ」「人間の証明」「野性の証明」など話題作を連発した。

 1988年に公開された中国との合作「敦煌」では、第12回日本アカデミー賞にて最優秀作品賞、最優秀監督賞などを獲得。

 そのほか監督作にモントリオール世界映画祭にてグランプリを獲得した三國連太郎の出演作「未完の対局」、本田博太郎北京原人を演じた「北京原人 Who are you?」、太平洋戦争末期を生きた男たちの姿を描出した「男たちの大和/YAMATO」がある。遺作は2010年の「桜田門外ノ変」。刑事ドラマ「Gメン」シリーズなどテレビドラマの演出でも手腕を発揮し、監督生活55年目を迎えた2018年には「映画監督 佐藤純彌 映画(シネマ)よ憤怒の河を渉れ」を発売した。

 「敦煌」「植村直己物語」で主演を務めた西田敏行は、訃報を受け「佐藤純彌監督が逝去されたと聞き、1985年に撮影した『植村直己物語』のことが思い出されました。ことに、北極での撮影ではスタッフ・キャストの命を守り、作品の成功に導かねばという、pressure(プレッシャー)と戦いながら、皆の前では穏やかな表情で監督指揮をしていた姿です。人望があり、学者肌の映画監督でした。ご冥福を祈ります」とコメントを寄せている。「桜田門外ノ変」に出演した大沢たかお、「敦煌」に出演した佐藤浩市のコメントは下記の通り。

大沢たかお コメント

突然の訃報を先ほど京都太秦東映京都撮影所で聞きました。
佐藤監督とは映画「桜田門外ノ変」でご一緒させて頂き、
その時もここ東映京都撮影所での撮影でした。
現場で、佐藤監督から仕事への姿勢、情熱そして優しさ、
俳優として一生の指針となるような沢山の経験をさせて頂きました。
その時の教えが、今でも自分の作品への姿勢となっています。
これからもその教えに恥じないよう精一杯頑張りますと、
天国の佐藤監督に報告したいと思います。
佐藤監督、沢山の素晴らしい作品をありがとうございます。
そしてお疲れ様でした。心よりご冥福をお祈りいたします。

佐藤浩市 コメント

およそ30年前、当時の中国での半年間に及ぶ苦しい撮影の中、
佐藤純彌監督には色々教えていただきました。
親子でお世話になりました。