70年代邦画の味
最近、CSのシネフィルWOWOWで、かの佐藤純彌監督作品の“角川映画第二弾”『人間の証明』が何度もリピート放映されている。もともとこれが始まったのは佐藤監督の訃報が流れる前だったので、単なる偶然とは思うが、本作を「一番の“心”の映画」と勝手に位置づけしている自分にとっては、願ってもない展開だ(;^_^A
それにしてもこの頃の邦画って、往年の大作の雰囲気とも、昨今の(特殊効果は激しいが)テレビドラマの延長のような雰囲気とも違う、独自の“味”を持っていたような気がする。まだまだせっせとフィルムで撮られていた時代だし、地にしっかり足を据えて撮ってる感もよく、また反面、初期のフィルム撮影だった2時間ドラマとかぶる雰囲気もあった。往年の大作の方がどこか浮き世離れしていた分、こっちの方が「映画を撮ってる」って雰囲気が強かった。
佐藤純彌監督の大作路線は『新幹線大爆破』や『君よ憤怒の河を渡れ』辺りに端を発したと思うが、その大作監督ぶりが顕著だったのは、やはり角川陽希事務所と組んだ一連の作品だったと思う。その70年代後半から80年代にかけての日本映画の独特の雰囲気……まだ2本立ての残滓が残っていて、プログラムピクチャーと揶揄されながらも、一応『映画」 としての威厳は持ち続けていた時代。この頃の雰囲気を直に肌で感じて来れたのは、今での我が大きな遺産だと思っている。
それにしてもその時代の映画の威厳が、その後何と「ピンク映画」の世界でしばらく息づいていた(少なくともつい最近までフィルムで撮られていたし、情感も70年代映画っぽかったし……)ことに気づいたときには、あたかも絶滅したと思っていた恐竜の子孫が鳥類として息づいていたことに気づいたときのように衝撃的だったよ(;^_^A