神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ツンツン節だよ全員集合!!』~倍賞美津子のコブラツイスト~

 BS11の「昭和喜劇シリーズ」で、松竹の『全員集合!!』シリーズが放映されている。確か公開当時は『男はつらいよ』の併映作品だったと思うが、昔のことなんで劇場公開は叶わず、専らテレビで放映されるのを観ていた。このシリーズはテレビの『8時だョ全員集合!!』とは異なり、映画ならではのどぎつくエグい内容で、それが逆に刺激的で、放映時にはそれこそ腹を抱えて笑っていた。しかしかつて松竹ビデオで何本かは買ったものの、昨今は見る機会のない、まさに“幻のシリーズ”になっていた(番組の方も【HD初放送&未DVD化作品】と謳っているし)。それが今回、奇蹟の一挙放映! たまたまチャンネルを切り替えてこの放映を知ったときには狂喜乱舞したね(;^_^A

 そんなわけで、今定期的に録画しては、楽しんで観賞させてもらっている。そんな中、今回は『ツンツン節だよ全員集合!!』(渡辺佑介監督・1971年)について。

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 「セントラル移動食品KK」という名の“屋台会社”の社長・関(谷啓)と昵懇の長吉(いかりや長介)は、関に頼まれて、故郷の日陰村で言葉巧みにヒデオ(加藤茶)・忠次(荒井注)・風太高木ブー)、工作(仲本工事)を三輪トラックに乗せて東京まで連れてくる。しかし長吉は悪名高い“人買い”で、その日から4人は檻に繋がれ、只同然で長吉や「セントラル移動食品KK」から奴隷のようにこき使われる。一方、関と長吉は夢はデカイが実行力がなく、関に至っては今でいうヤミ金融屋の熊井虎吉(小松方正)から多額の借金を抱え、にっちもさっちも行かない状態。挙げ句の果てには、新たな借金の形に、妹の美代(倍賞美津子)を彼女に横恋慕している虎吉の弟・豹太(左とん平)に差し出す始末。

 しかしヒデオたちや、魚河岸の健チャン(山本紀彦)と相思相愛の美代も黙ってはいない。極度に幽霊を怖がり夜中一人ではトイレにも行けない長吉の性格を逆手にとってさんざ脅したり病気をでっち上げて追い詰めるなど逆襲に転じる。また美代も当然ながら豹太の許へ行くことを拒み、遂に業を煮やした虎吉と豹太は、配下や重機を揃え、「セントラル移動食品KK」への“強制執行”に踏み切るのであった……

 私がこれらの『全員集合!!』のフォーマットとして記憶していたのは、「主人公のいかりや長介が、最初は虚勢を張って残りの4人をこき使うが、やがて化けの皮がはがれて立場が逆転し、加藤茶を中心に逆襲されてしまったり、“寅さん”宜しくマドンナに失恋したりする」というもので、どちらかといえばいかりや長介を“やや可哀相で愛すべきキャラクター”と捉えていたが、本作における“いか長”は、そんな同情の余地なき“鬼畜”な存在で、殆ど感情移入できなかった。今でいうところの“ブラック企業”の最たるもので、彼に搾取され文字通り“奴隷”のようにこき使われる4人のメンバーの逆襲には心底スカッとする。

 また、クライマックスの強制執行のシーンでは、まだ映画娯楽が今よりは隆盛を誇っていた時代の名残か、しっかりしたセットを惜しげもなくぶち壊す描写が爽快で、重機の鉄球の一撃を頭から受けた“いか長”がずぼんと畑に顎までめり込んだり、小松方正に至っては、背後から襲いかかった鉄球攻撃で大空に吹き飛ばされ(合成で空を飛ぶ小松方正の姿が秀逸!)、遙か先の事務所の二階に飛び込んでくる、という、まさにスラップスティックなシーンまで用意されていて、馬鹿馬鹿しいことこの上ない。

 それと、大立ち回りの場面で、女だてらに抗争に加わった美代が、あろうことか敵にコブラツイストをかけるシーンもあり、この年に美代こと倍賞美津子が私生活において“コブラツイスト”を得意技とするアントニオ猪木と“1億円”の結婚式したことを考えると、何とも興味深い。これって、渡辺監督の“ご祝儀”カットだったのかな?(;^_^A

 あまりの“いか長”の非道ぶりに、ギャグというよりは「復讐劇」の様相を呈していて、クライマックス以外は心底笑える作りではなかったけれど、やはり当時ならではのハチャメチャな展開が楽しめる作品だったと思う。“いか長”目線で行くとほろ苦い展開の『全員集合!!』シリーズだけど、その点に関しては、本作の方が気兼ねなく笑えたかな(;^_^A