神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『アウトレイジ 最終章』カタルシスなき展開

 北野武監督の『アウトレイジ』シリーズ。一作目は「全員、悪役」なんだから感情移入せずに観ようとしたものの、悪党倒しのカタルシスを凌駕するほどの残虐シーンに辟易したが、二作目は大友(ビートたけし)をメインに据えて観たら、作中の善悪の構図(社会的にはどちらも“悪”だが)がハッキリしたせいか後半の「山王会」潰しの凄惨なシーンが却って小気味よく、そんなわけで『アウトレイジビヨンド』が大いに楽しめたんで、今回の『~最終章』はとても期待していた。しかしながら、観終わって感じたのは、やるせなさばかりだった……

 確か古舘伊知郎fだったか、東映の最新作実録ヤクザ映画『孤狼の血』封切に際し、「これは『アウトレイジ』に対する東映の返答ですね」ってコメントしていたと思うんだけれど、『最終章』を観てn、なるほどこの『アウトレイジ』シリーズは、『仁義なき戦い』を元とする東映実録映画に対する、北野監督なりのアプローチだったと直感した。

 今回の後味の悪さは、任侠の世界に生きる大友が、西田敏行演じる花菱会の老獪な若頭・西野にさんざ利用された挙げ句、結局自死に追いやられるという結末に尽きる。この結末を以てして、この『アウトレイジ』シリーズが、大友=広能(菅原文太)、西野=山守(金子信雄)の構図で『仁義なき戦い』5部作と同じ展開にあると感じた。このシリーズも、実際の広島ヤクザ界(共政会)になぞったものの、任侠・仁義とは無縁の姑息な存在である山守が、舎弟たちや周りを利用し翻弄した挙げ句、彼らの犠牲の果てに結局天政会のトップにのし上がるという結末を迎える。物語として独立した『広島死闘篇』を除けば、何とも後味の悪いシリーズだ。

 『アウトレイジ』シリーズも、『ビヨンド』での、姑息な手段によって山王会のトップに上り詰めた加藤(三浦友和)や、大友を裏切ってのし上がった石原(加瀬亮)を元とする一派を、後半悉く惨殺するシーンがカタルシス満点だったけど、今思えば暗殺集団は大友たちに荷担(利用?)した花菱会から派遣された者たちだった。だから今回、花菱会に大友が義理で利用されたのかも知れないけれど、何か「ターゲットが違うんじゃない?」といった感じ。本来ならば『ビヨンド』の因縁もあって若頭の西野や補佐の中田(塩見三省)に矛先が向くべきなのに、いいように利用されて、別に因縁もない新組長の野村(大杉漣)の殺害に奔走するってのは、何とも理不尽で頂けなかった。しかもこんなところで『北陸代理戦争』をオマージュするなんて、思いも与らなかったよ(;^_^A

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 『ビヨンド』では、加藤も石原も、そして"メフィスト"のごとき姑息な悪徳刑事・片岡(小日向文世)をも殺害し、ドス黒くも文字通り「スカッと」する展開だっただけに、本作は期待したんだけれど、その点は大いに失望したね。こんなストレスを観る者に与えちゃだめだよ! 別にフィルムノワールを観に来た訳じゃないんだから……北野監督の“邪なカタルシス”を多くのファンは期待してたんだから………