神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

麻薬ギャングから総理大臣まで~素晴らしき“ジェットコースター”人生

 もうかれこれ40年近く前の話なんだけれど、学生時代、私に映画製作のノウハウを伝授してくれた“師匠”とも言うべき2人の先輩が、当時「別府日活」でもぎりのバイトをしていて、たまにその両先輩が揃ってバイトを務める日には“陣中見舞い”と称して、オールナイトの劇場に足を運んだものだった。そんな折「ロマンポルノにしては、ラスト銃撃戦もあって、凄いよ」と言われて観たのが、片岡修二監督の『地下鉄連続レイプ』だった。

 人の顔を覚えるのが得意なホステス(藤村真美)が、その特技が災いして、暴力団の仲間を裏切って麻薬を横領した男に拉致監禁された挙げ句“シャブ漬け”にされるという、当時のバイオレンス系ロマンポルノの典型的なパターンの作品である。その麻薬強奪犯を演じていたのが大杉漣。劇中全く笑ったり微笑んだりすることなく、それでいてギラギラした獣性を秘めた役柄だった。ここら辺はロマンポルノ黎明期に、主にレイプ犯役が多かった蟹江敬三に似たキャラクターだった。結局、最後は哀れ彼を追う暴力団の兇弾に倒れ、しかも一方的な被害者であるホステスも巻き添えを食って射殺され、何とも後味悪く映画は終わる。これが私の大杉蓮とのファーストコンタクトだった。

 以後、活躍の場をピンク映画から一般映画、Vシネマ、そしてテレビへと移していくが、しばらくはピンクで培った凶暴で陰惨な役柄が多かったけれど、いつからか、強面な表情の内に秘めたコミカルさ、優しさといった部分がクローズアップされてきて、徐々に好感度が増してゆき、ついに『シン・ゴジラ』では総理大臣役にまで上り詰めた。これは『地下鉄~』から彼を見続けた者にとっても感慨深いものだったよ。個人的にはサブ監督の『ポストマンブルース』に登場する末期癌の殺し屋役が好きだったなぁ……

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 それにしても、彼のメジャーデビューに一役買った北野武監督作品では、地中に首から下を埋められて、その脳天を車に惹かれて死ぬ『北陸代理戦争』ネタの大往生が、まさか最終作になるとは……まだ66際、今から円熟味を増してさらなるステップを歩むはずだったのに……もっとも、wiki等で知れる彼の凄まじいまでの出演本数を見るにつけ、演者としては“大往生”ともいっていいくらい活躍したんだなぁって実感……

 すでに亡くなってから数ヶ月が経過して、今更追悼文? とも思ったが、『アウトレイジ最終章』に触れたのをきっかけに、今ここに記す。そんな彼の本当の意味での遺作『恋のしずく』が、我が広島を舞台にした映画としてこの10月に公開される……改めて合掌