神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

千葉チャンと「段々」

 現在CSの日本映画専門チャンネルで、シリーズが次々4Kリマスター版として放映されている、邦画界の金字塔『仁義なき戦い』。予定では来る2月にはシリーズ最終作の『仁義なき戦い 完結篇』が放映されるが、注目は、宍戸錠演じる「大友勝利」の演技および名台詞だ。

 そもそも大友勝利と言えば、『広島死闘篇』(個人的にはシリーズ中一番好き(;^_^A )に登場した、千葉真一演じる狂犬のような広島ヤクザとして、主人公・広能昌三(菅原文太)とシリーズの人気を二分するといっても過言でないキャラクターだ。この役は本来、北大路欣也が当てられていたが、その役に難色を示した北大路が、元々千葉が演じるはずだった山中正治との役柄チェンジを申し入れ、父親の市川歌右衛門の威光もあってか、クランクイン直前に、千葉が大友を演じることになったのは有名な話だ。しかし最近になって深作欣二監督関連の書物を読んで、もしそんな理由で自作のキャストをチェンジさせることなんて許さない侠気・気骨を持った深作監督が、逆に千葉チャンが大友を演じる可能性に期待し、敢えて口を挟まなかった、というのが真相らしいことを知った。そして結果的には深作監督の思惑通り、千葉真一の大友勝利は、その後のヤクザ映画にも影響を与える見事なキャラクターに昇華した。

 そんなわけで、この大友勝利が再登場する『完結篇』には“千葉”大友なくして考えられないところだが、なぜか登場したのは宍戸錠の“代役”大友勝利だった。この時は千葉チャンのスケジュールが合わなかった故の代役だったようだが、例えば、「渥美清が出ない『男はつらいよ』があり得ない」の同等といっていいはずの“千葉”大友に、結局拘らなかった東映の姿勢に、この『仁義なき戦い』も所詮プログラムピクチャーの域を出なかったんだな、ということを改めて実感させられる(;^_^A 

 

 さて、件の“宍戸錠版”大友勝利だが、これは菅原文太がシリーズを通じて広能昌三を演じきったことを考えると、えらく老けた大友といえなくもない(まあ、千葉チャンとジョーとは6歳しか離れてないけど、もともとジョーさんは老け顔だしね(;^_^A )。それでも“宍戸”大友はしっかり“狂犬”ぶった演技を魅せてくれるが、狂犬というよりも「たちの悪い酔っ払い」然と見えるのがご愛敬か(;^_^A  そんな“宍戸”大友の一世一代の迷台詞が「牛のクソにも段々があるんで!」という台詞だ。

 

 

 これは実は広島ではなく隣県の島根で用いられるたとえらしいが、そのインパクトたるや絶大である。しかもこんな過激な台詞ながら、言いたいのは「物事には順序がある」という至極まっとうでありきたりの内容なんで、このムダに過激な言い回しは、いつ聴いても抱腹絶倒! 腹を抱えて笑ってしまう(;^_^A 

 

 


このシール、めっちゃほしい!!(;^_^A 

 

 ところで、もし本作の大友を、本来の千葉真一が演じていたならどうだろうか。もちろん台詞自体は変わらないだろうから、あの甲高い声で「牛のクソにも段々があるんで! ォウ!」なんて宣ったかもしれない。しかし……しかしである、果たしてあの無軌道で無頼の輩であった大友勝利にいくら過激な言い回しとはいえ「物事には順序がある」なんて説教くさい台詞が似合うだろうか? そんな物事の順序を無視した無頼こそ大友勝利の真骨頂だったはずである。まあ、「牛のクソ」ってとこまでは言いそうだけどね(;^_^A 

 というわけで、この台詞はあくまで本家よりは若干ソフトな“宍戸”大友だからこそ成立した台詞といえるかもしれない(;^_^A