神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「実録路線」を継承する二つのベクトル

 昨年10月から、日本映画専門チャンネルで4Kリマスター版放映が始まった『仁義なき戦い』も、一昨晩の『完結編』を以てシリーズ5作品すべてが出揃った。こんな往年の作品がデジタルリマスター化されて全作放映されてしまうのが、日本映画専門チャンネル日本映画専門チャンネルたる所以だったりするが(;^_^A、東映実録路線をけん引したこのシリーズが、先日話題にした『孤狼の血LEVEL2』の初放映と共に幕を閉じるのは何とも象徴的だ。

 

 

 以前、古舘伊知郎だったか、この『孤狼の血』が北野武監督の『アウトレイジ』シリーズに対する東映からの返答だったのか、云々というコメントがあったような気がするが、共に『仁義なき戦い』辺りの東映実録路線をそのルーツにしながら、ヤクザ社会の冷徹さ、仁義無さを、人間が一瞬にして“物”と化す「死」の描写に徹底的にこだわりながら描き出した『アウトレイジ』に対して、『孤狼の血』二部作は、無軌道で殺伐とした雰囲気を情念たっぷりに描くなど、互いに全く別のベクトルで「自分たちの世界」に昇華しているような気がする。

 

 ところで、こんなことを書いたら元も子もないが、個人的には、件の東映実録路線はあまり好きではない。勿論好んで観たりもするが、同じ東映でも『緋牡丹博徒』シリーズのように楽しめないからである。その理由は、ひとえに「カタルシス」にかけるところだ。このカタルシスという点においては、今まで観てきた中では、松方弘樹の『北陸代理戦争』と北大路欣也の『資金源強奪』ぐらいしか思いつかない。『仁義なき戦い』においても、主人公の広能(菅原文太)が、仁義なき広島ヤクザ社会で徒に翻弄され、結局一番姑息な山守(金子信夫)の“サクセスストーリー”で終結することに違和感を覚えてしまう。だから実は、千葉真一御大の破天荒な大友勝利ぶりと、村岡組若衆役の川谷拓三のやられっぷりがピカイチな『広島死闘篇』以外はほとんど観返してこなかった(後は『完結編』における大友(宍戸錠)の「牛のクソにも段々があるんで!」くらいか(;^_^A)。

 

 そのカタルシスに関しては『アウトレイジ』よりも『孤狼の血』の方があるかな、とは思う。だから『アウトレイジ』シリーズでは、やはり山王会と花菱とに翻弄される昔気質のヤクザ・大友(ビートたけし)が、後半その花菱のヒットマンを借り受けて、まずは自分を裏切った山王会の面々に次々と落とし前を付ける『大阪電撃作戦』のノリと、ラストで後輩の悪徳刑事・片岡(小日向文世)を自らの手で殺害する、という点にカタルシスを感じる『ビヨンド』ばかリ観てしまう(;^_^A(おっとここにも「シリーズは2作目こそ面白い」の法則が……!(;^_^A)。『孤狼の血』に関しては、五十子会長(石橋蓮司)を便所で尾谷組の一ノ瀬(江口洋介)が叩っ斬る1作目の方がむしろカタルシスは上だったかな。『LEVEL2』はとにかく広島県警の腐りきった現場が観ていて不愉快で不愉快で、その割には落とし前があっさりしていてモヤモヤが残ってしまったよ。

 

 もともと実録路線とは、外連味たっぷりだった仁侠モノのマンネリ化に伴う、その打開策で生まれた新機軸だった。その先陣を切った『仁義なき戦い』があまりにもヒットしたので、しばらくはこの路線が続くわけだが、仁侠映画の”ファンタジー”とは異なり、実際のヤクザ世界を描くとどうしても本当は“仁義”が”なき”世界であることが図らずも判明していき、結局これまた昭和の“徒花”となり、前出の『北陸代理戦争』の公開直後に、主役のモデルとなった実在の暴力団組長が射殺されるという衝撃的な事態が引き金となって、同路線は幕を閉じることとなる。それが今になって、『アウトレイジ』『孤狼の血』となって甦ったのである。

 

 『アウトレイジ』は完結したが、果たして『孤狼の血』はどのように展開していくのか……

 

 おっと、実録路線といえば、『日本統一』シリーズ(45話はオール広島ロケ!)をはじめとする、一連のVシネにも言及しなければいけなかったよ! 「おいおい、“実録”は『アウトレイジ』と『孤狼の血』だけじゃないぜ!」ってお叱りを受けそう(;^_^A