神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

挑戦する?ムービープラス

 過日ながら、CSのムービープラスが「人類の頭上に最初の核兵器が投下された」8月6日にチョイスした作品が、“11発の核爆弾で合衆国の大地が消失”という設定の『スカイバウンド 大地消滅』と、先の大戦を“都市爆撃する米軍爆撃機の側”から描いた『メンフィスベル』の2作品。たちの悪い冗談というか、まるで「広島原爆の日」に“挑戦”するかのようなラインナップだった(゜Д゜)

 前者の『スカイバウンド』は、どうもドイツ映画(Vシネマ?)らしいが、情報を得ようにもwikiすら立ち上がっていないような作品で、しかも申し訳ないが“ながら観”だったんで、詳細まではよくわからない部分が多い。大まかなストーリーは、富豪の息子が所有するジェット機に乗った5名の大学生&潜入した老いたる狂信カルト教団教祖の6人が、突如発生した核戦争によって壊滅したアメリカ本土に着陸できず、結局放射能の及ばないであろうハワイに向かうが、燃料が残り少なく……といった展開。殆ど部隊が機内で、しかも雲の上に浮かぶキノコ雲以外核兵器被害を描くカットもなく、この稀代の大惨事が全く以て余所ごとのように描かれている。パニック描写も、核攻撃による電磁パルスによって飛行機の衝突防止装置が機能せず、シカゴ上空で飛行機が次々衝突していく場面がCGによって描かれるくらいしかない。結局、ハワイに行くには足りない燃料をもたせるために機体を軽くせざるを得なく、機内のものはおろか片方のエンジンまで(持ち主である富豪の息子の決死の行動によって)切り離したものの、それでも足らず、あわれハワイを目前にして機は洋上に不時着大破。しかし一行が 意識を取り戻すと、彼らはハワイの海岸に打ち上げられていて、メデタシメデタシ、といったストーリー。福島の原発事故程度で太平洋が激しく放射能汚染されてるってのに、水爆が11発も北アメリカで炸裂したとんでもない事態にあって、ハワイまで逃げたら大丈夫っていう無知というか大楽観論が何とも鼻につく。それは、ドイツ製とはいえ“偽アメリカ映画”の成せる業か。

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 後者の『メンフィス・ベル』は「25回出撃したら除隊できる」という米軍のルールで最後の出撃となる米爆撃機B17「メンフィス・ベル」号乗組員の青春模様を描いた作品だ。当然彼らに感情移入させながら物語を描いていくので,途中迎撃するにやってくるドイツ軍の戦闘機メッサーシュミットや、数限りなく炸裂する高射砲の砲弾は、主人公たちを追い詰める憎っくき敵として登場する。しかし立場を変えれば、この迎撃こそ本土を焦土にさせないための必死の抵抗であって、徒に敵とはいえ非戦闘員が住んでいる都市に爆撃を続ける爆撃機の方がよっぽど非人道的だ。劇中、なんとかブレーメン都市の工場のみをピンポイントで爆撃し周囲の学校等の施設を避けようとする爆撃手と「みんなナチだから構わず投下しろ」という他の隊員との葛藤なども描かれているが、こんな形で都市爆撃が美化されても困ってしまう。もしこの手法で、廣嶋に原爆を投下するために飛び立ったエノラ・ゲイの乗組員を主人公にした青春群像映画なんて撮られたら、決して受け入れられないだろう。都市爆撃という意味では、「ブレーメン」も「ヒロシマ」も一緒なんだから(当然、「ゲルニカ」や「重慶」も一緒)。

 8月6日にムービープラスがこの2作品を放映したのは単なる偶然か、それとも何らかの意図をもってのことなのか(『スカイバウンド』に至っては、平和記念式典の時間帯にぶつけてきてるし)、それは分からないが、ハリウッドを中心に洋画を放映する局故、結果的に、戦争に核に対する認識が極めて甘い作品が流れるのも致し方ないのだろう。

 ちなみに明日9日(長崎に原爆が投下された日)のラインナップを観ると、絶対的な宇宙人の侵略に対し、核攻撃も辞さない米海軍の中で、断固使用に反対し、通常兵器での決死の闘いを挑む主人公の活躍を描く『バトル・オブ・バミューダトライアングル』(リンダ・ハミルトンが米海軍司令長官の役で出演!)が放映されるんで、少しはましかな?

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