神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『眠狂四郎炎情剣』~圧巻!玉緒のヴァンプぶり!~

 昨日、日本映画専門チャンネルで『眠狂四郎 炎情剣』を観た。実は往年の邦画ファンを標榜しながら、まともにこの大映の稀代の名作シリーズを観たことがなく、しかも例によって途中からの観賞になってしまったんだけれど、面白いのなんのって……しっかり作品世界にのめり込んでしまったよ(;^_^A

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 この映画の面白さは、まさに市川雷蔵演じる主人公・眠狂四郎の圧倒的な力と、「全てをお見通しだ」とでも言いたげな達観したキャラクターに限る。まさに完全無欠! 本作の前半ではどうも、毒婦の口車に乗って本来助けなくてはならない者を手にかける、という失態を演じてしまったようだが、それもお構いなく、結局、水軍の財宝を横取りした挙げ句、水軍生き残りの抹殺を画策する家老の安部徹と豪商・鳴海屋西村晃を文字通り“破滅”させて物語を一件落着させる。

 中でも後半クライマックスの、法事に訪れた家老の一派を片っ端から切り捨てるシーンは圧巻の一言に尽きる! 特に、家老の懐刀・加倉井こと上野山功一(『快傑ズバット』の記念すべき用心棒第一号「ランカーク」!)との一騎打ちの場面では、背景に寺の巨大な瓦屋根を配置し、狂四郎が加倉井を円月殺法で切り捨てるまでをワンカットで撮っていて、あたかも大映独特の「墨絵のような美しさ」に満ちていた。その分、家老を叩っ斬るカットは、大悪党故もっと“ため”がほしかったかな(;^_^A

 そう言えば、本作はライティングの妙か、主に室内シーンでの俳優の陰影の出し方がまた素晴らしく、独特の映像美を醸し出していたと思う。それでいて女優には極力陰影のでない、心憎いライティングがされていたっけ(;^_^A

 ところで、本作『炎情剣』の一番の特徴は、家老の元で働く檜垣ぬいこと中村玉緒のヴァンプ(毒婦)ぶりに限る! その美貌を武器にした巧妙な誑かしと策略で、観るものの怒りを一心に浴びる凄いキャラを嬉々として演じていた。中でも、狂四郎に取り入るため、わざと赤い襦袢姿で手足を縛られ駕籠に乗せられて、わざわざ彼の眼前で駕籠を倒させその姿を晒すという“猿芝居"を演じるのだが、その晒された肢体が実に官能的で素晴らしかった。密偵のごとき行動力も相まって、彼女のダークな魅力が満載だった。この時の彼女ならば、「ルパン三世」の峰不二子役も十分務まりそうなほどの妖艶さだ。

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 一方、本作の良心を一心に引き受けているのが、水軍の唯一の末裔である鳴海屋の下女(こんな表現大丈夫でしょうか?)役の姿三千子である。前述の玉緒と比べても、あまりにも可憐! その上屈託のない笑顔の中に気丈な性格も合わせ持ち、主人公の狂四郎さえもつかの間の平安を覚えるほどの、一服の清涼剤のようなキャラクターだ。ところで件の姿三千子嬢は、大映を代表する女優さんの一人で、かの『大怪獣ガメラ』にも、主人公の少年の姉役で出演していたようだ(^^)

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 今回は生憎の中途観賞だったけれど、眠狂四郎の、それこそトミー版映画『子連の狼』の拝一刀を彷彿させるくらいの“完全無欠”ぶりが素晴らしいんで、もうオチがわかった後でも何度も何度も観返したくなる見事な“王道映画”に仕上がっていた。とにかくこんなに『眠狂四郎』映画が面白いとは思わなかった。ニヒルアンチヒーローの活躍を、ともかくもまた観ていきたいと思う(^^)