神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『英雄本色Ⅲ 夕陽乃歌』

 気が滅入っているときに、我が心を鼓舞してくれる映画なんてものがあったりする。私の場合、それは『狂い咲きサンダーロード』だったり『暴走パニック大激突』だったり『男たちの挽歌Ⅱ』だったりする訳なんだけれど、そのうち、テーマ曲を聴いただけでウルウルしてしまう『男たちの挽歌』シリーズの、大好きな『Ⅱ』ではなく『Ⅲ』の方を、先日CATVで観賞。

 本作は、『Ⅲ』と銘打ちながら、実際は第一作の前日壇。チョウ・ユンファ演じるマークを第一作で殺してしまい、苦肉の策で、彼の従兄弟・ケンとして再びチョウ・ユンファを続編に再登板させたものの、またもや生死の判別がつきかねるラストにしてしまったため、まさに“ウルトラC”の発想の転換で、第一作の設定の前、まだマークが生きていた頃の時代設定で、それによって三度チョウ・ユンファ主演で撮った、シリーズの異色作である。一度『Ⅲ』『Ⅰ』『Ⅱ』の順に時系列で観賞したい思いもあるが、未だ実現してはいない。

 さて、件の『Ⅲ』だが、ベトナム戦争の末期の時代に、サイゴン←→香港を舞台に展開していく物語で、チョウ・ユンファと共に、ヒロインのキティにアニタ・ムイ、彼の叔父に『燃えよドラゴン』ハン役のシー・クエンを、そして従兄弟のマイケル役にご存知レオン・カーフェイを配するなど、なかなかの布陣(敵役は時任三郎!)。マークとキティの“ロミオとジュリエット”的恋のすれ違い&マイケルとの微妙な三角関係を軸にしながら、激しいガンアクションから、最後は戦車まで登場する壮絶な物語だ。

 そしてラスト、抗争の裏側で展開するベトナム戦争の最終局面、遂に勝利した北ベトナム軍のサイゴン侵攻の中、抗争の果てに瀕死の重傷を負ったキティを、マークとマイケルが庇いながら、ギリギリのところで米軍が用意した最後の脱出ヘリに搭乗するものの、キティはあえなく他界。それに気付いて悲嘆するマークとマイケルを乗せたヘリが、夕陽の空に消えていく、その背景に流れるのは、近藤真彦「夕陽の歌」の広東語カバーバージョン。本作は原題を『英雄本色Ⅲ 夕陽乃歌』といって、まさにこの曲とこのラストカットを想定して撮られてもいるんだけど、曲にシンクロして夕陽をバックにシルエットになって飛んでいくヘリの情景は、いつ観てもグッと胸に迫る。正直このカットを観られれば、それだけで満足してしまうくらいだ。

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 ちなみに本作が撮られたのは平成に突入したばかりの1989年。当時二十代後半だったアニタ・ムイは、2003年に子宮癌で僅か40歳の若さで死去してしまったことを考えると何とも感慨深い。その10年後、香港は中国に返還され、多くの香港映画人は他国に拠点を置くようになってしまった。ディズニー資本の『パイレーツオブカリビアン』シリーズにチョウ・ユンファが出演している姿を見ると、何とも複雑だったりするが………(;^_^A

 今はともあれ、あの頃の香港映画は、実に猥雑且つ混沌としていて、とても面白かったなぁ……(;^_^A