神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ゴジラvsコング』は70年代日本特撮・アニメにオマージュを捧げた作品だった!

 今日、観てきました、『ゴジラvsコング』! すでにyoutube上ではネタバレ映像が満載で、観賞前からクライマックスのシーンとエンディングをうっかり観てしまったという、何とも新鮮味に欠ける観賞となってしまった。それもこれも「ゴジラ」の生みの親でもあり、オリジナル『キングコング対ゴジラ』を今から60年前に制作した東宝を擁する日本が、あの忌々しい東京五輪のごり押し開催の煽りを喰らった、中途半端な時期の「緊急事態宣言」によって上映延期の憂き目に遭ったせいである。普段は首都東京に先んじられている地方都市が、こんな時だけ首都東京の都合に左右されてみすみす封切の機会を逸するなんて……ほんと忌々しい(# ゚Д゚)

 

 

 そんなわけで、既に世界中のネタバレ映像に晒さされつつ日本公開された『ゴジラvsコング』故、ネタバレ上等!ってノリで以下に記すので、未見の方はお気を付けください(;^_^A

 

以後、ストーリーに関わる記述もあるのでご注意ください。

 

 本作は、監督の趣味かどうか知らないが、この『ゴジラvsコング』には、ゴジラ東宝特撮のみならず、1970年代の日本怪獣特撮、アニメまでの限りなきオマージュが充ちていた。

 

 ぶっちゃけ書くが、本作の本来あるべき正式タイトルは『ゴジラ&コングvsメカゴジラ』であり、基本的なストーリーは、当初争い続けたゴジララドンが、モスラの説得によって最終的にキングギドラと戦う『三大怪獣地球最大の決戦』のノリと非常に似通っていた。だから『キングコング対ゴジラ』のリメイクといっては語弊がある。そして物語の基本設定には、『メカゴジラの逆襲』『キングコングの逆襲』のテイストが色濃く反映されているし、どこか「東宝チャンピオンまつり」を彷彿させる。

 

 キングコングを南の島から極点の南極に連れている設定は、北と南が逆ながら、『キングコングの逆襲』でエレメントX掘削のためにドクターフーがコングを船で北極へ輸送するところに似ている。髑髏島およびコングの故郷である空洞化された地球の描写やそこに登場する数多の怪獣たちの姿も、オリジナルの『キングコング』と共に『キン逆』のテイストも醸し出している(そして『ゴジラの息子』のゾルゲル島の雰囲気も)。メカゴジラが、小栗旬演じる芹沢猪四郎の息子・レンと精神的にシンクロするのは『メカゴジラの逆襲』における真船桂(藍とも子)のそれとそっくりだ。他にも前作でゴジラに始末されたキングギドラの頭部がメカゴジラの開発に繋がったのは、平成ゴジラシリーズの『ゴジラvsキングギドラ』から『ゴジラvsメカゴジラ』への橋渡しとそっくりだし、メカゴジラのエグイ武器はガイガンみたいだし、香港での対メカゴジラのシーンではコングが『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)のキングシーサーの役回りに見えたし、コングと心を通わせる少女の存在は「平成ゴジラ」シリーズの三枝美希(小高恵美)やインファント島の小美人(ザ・ピーナッツ)を彷彿させる。また、ゴジラが、メカゴジラを作ったエイベックス社(日本芸能界を牛耳る某レコード会社と同名なのはご愛敬か(;^_^A)だけを執拗に襲うのも、原発を作るたびにゴジラのピンポイントな襲撃を受け、ついに原発建設を断念する、という設定が秀逸の『ゴジラ×メカギラス G消滅作戦』みたいだった。

 

 東宝怪獣特撮映画以外にも、『キングコング髑髏島の巨神』ではコングの最大のライバルだったのに、本作ではメカゴジラの性能を試す“咬ませ犬”として登場するスカルクローラーは、大映ガメラ対大悪獣ギロン』の「宇宙ギャオス」そのものだし、計3回の死闘を演じ最終的に勝利する(本作では敗者が何であれキングコングだが)展開は、昭和ガメラシリーズのパターンだし、香港におけるゴジラとコングの2度目の死闘では、まさにタイマン勝負を演じて、闘い済んだらノーサイドの、『夕焼け番長』というか、70年代不良番長系のアニメドラマ・映画のようだし、最初反目し合ったタイトルを冠する両雄が、やがて共闘して共通の敵に立ち向かうって、「東宝チャンピオンまつり」を超えて、「東映まんがまつり」の『マジンガーZデビルマン』『グレートマジンガーゲッターロボ』の世界観である。

 

 オリジナルの『キングコング対ゴジラ』に目を向けると……残念ながら大蛸は出なかった。ドラマ設定もコメディータッチではなかった。しかしコングが空洞化された地球内部に転げ落ちていくところなどは、富士山から滑降してゴジラにぶち当たる時の東宝キングコングのようだし、何といっても、オリジナルでは長い間そのほとんどが編集カットされていた、そして個人的には大好きな「キングコング輸送作戦」が再現されていたのには感動した(;^_^A ヘリによって空輸されるコングのシーンを観た時には、正直なところ、『ワンダーウーマン1984』のアヴァンタイトルでリンダ・カーター嬢の姿を拝見した時や、『カムバック★トゥ★ハリウッド!!』で『尼さんは殺し屋』のフェイク予告編を観た時と同じくらいの胸の震えを覚えたもの(;^_^A   何はともあれ、本作を演出したアダム・ウィンガード監督は、相当日本の特撮・アニメに精通していらっしゃるようである。それこそ『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督に匹敵するくらい(;^_^A  でもいきなり空輸シーンから始まる(よってコングを如何に吊り上げるかのシーンがない)のは、もしやウィンガード監督、「東宝チャンピオンまつり」バージョンの『キンゴジ』しか観てないんじゃないかな?(;^_^A

 

 

 

 

 物語は怪獣たちに感情移入しながら比較的予定調和に進み、一応のハッピーエンドを迎える。ゴジラとの共闘によってメカゴジラを倒したものの、『ゴジラ対メカゴジラ』ではゴジラの役どころだった、メカゴジラの首を引っこ抜いてとどめを刺すのがキングコングだったのは、流石にコングを生んだアメリカ映画のなせる業か。東宝コングはアメリカでは不評だっただけに、60年の年月を経て、こうやって自国のコングに華を持たせたのかな(;^_^A

 

 『シン・ゴジラ』が撮られるまで、日本で最後のゴジラ映画だった『ゴジラファイナルウォーズ』も、設定上は当時のゴジラファンの少年の夢をそのまま映画にしたようなものだったが、あいにく監督の北村龍平にはゴジラに対する愛情は少なかったようで、いびつなアクション映画に仕上がってしまった。それからすると、今までのようにアヴァンタイトルで次回作を暗示するシーンもなく、もしかしたらレジェンダリー版最後のゴジラ映画になるのかもしれない『ゴジラ対コング』の方が、より日本のゴジラファンに向き合った、“暫定的”最後のゴジラ映画だったかもしれない。どちらかといえば、規模的にも『怪獣総進撃』に近いかな。

 

 それにしても、前作の渡辺謙を引き継ぎ、ゴジラを生んだ日本人の俳優として唯一出演した小栗旬の役どころは、「おい、お前はゴジラと運命を共にした芹沢猪四郎博士の息子で、被爆三世という十字架を背負った人間じゃないのか!」って思うくらい、暴力と破壊に加担したものだったのは如何ともしがたかった。尤も、彼と同様『メカゴジラの逆襲』でメカゴジラとシンクロした真船桂の父親である真船博士役の平田明彦は、第一作『ゴジラ』でオキシジュン・デストロイヤーによってゴジラと運命を共にした芹沢博士を演じていた。結局、日米ともに、芹沢博士はゴジラのために自ら命を落とし、その子はメカゴジラを毎度コントロールするようである(;^_^A