神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「三輪里香」という人

 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」の中に、映画『野生の証明』における主人公・長井頼子オーディションに関する角川春樹氏自身の述懐があるのだが、当時氏は事前に薬師丸ひろ子という逸材を見出していて、最初から彼女を抜擢しようと決めていたようだ。しかし実際原作の長井頼子は中学生というよりも小学生、しかもラスト、味沢(高倉健)に背負われるシーンもあり、長身の薬師丸ではその撮影も難しい、ということで、彼女よりも幼く且つ主人公の持つサイコバス的な影も感じさせる三輪里香を、本作品を演出する佐藤純彌はとても買っていたらしい。

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 そこで角川春樹は審査員に対して根回しを始めるわけだが、肝心の佐藤純彌監督には結局根回しが出来なかったらしい。その理由として、監督である佐藤に根回しをすること自体失礼に当たるという、彼なりの美学・価値観があったそうだ。ともすればブルドーザーの如くワンマンな雰囲気ばかり漂う春樹氏の、意外に繊細な面が見て取れて、このエピソードは嬉しい(;^_^A

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 春樹氏が三輪里香を勧めなかった理由として、この子は例え『野生の証明』の頼子役にうってつけとはいえ、その後もあらゆる映画に出演するだけのものはなく、早く芸能界から去ってしまうだろう、との危惧があったそうだが、図らずもその予想は派的中する。実際薬師丸に継ぐ地位で角川春樹事務所に雇われた三輪は、TV版の『野生の証明』に出演したものの、その後数作のドラマ・映画に出演した後、芸能界を引退している。

 ただそれ故、彼女がスクリーンに、VTRに残した映像は貴重だし、その年齢、その時代にしか出せなかった独特の雰囲気を、いくつもの映画・ドラマで醸し出してくれたことは、賞賛に値する。それはTV版『野生の証明』のエンディングタイトルの映像で彼女が魅せてくれる演技で十分伝わってくる。

 件の薬師丸ひろ子が“知命”の域に達してすっかり“お母さん俳優”に成り果ててしまったり、原田知世が時折大人の色香を漂わせる演技を魅せたり、渡邉典子がどこにFOしたか分からなかったりヾ(ーー )、と、角川3人娘でさえこんな状況なんだから、なかなか三輪里香にまで思いを馳せることは難しいが、こんな“昭和史”の一頁を懐かしく感じるのもまた趣があっていいんじゃないかな(;^_^A