神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

スーパーノアの“夢”を轟天に乗せて……(前篇)

 今日は7月7日は七夕……のみならず“日本特撮界の偉大なる父”円谷英二御大の誕生日でもある。そんなわけで、今回は氏に因んだ内容を一つ……

 今年は『スターウォーズ(SW)』の最新作が公開され、賛否両論渦巻く中、それでも上半期の映画界の話題を独り占めした感がある。それから遡ること40年前、その『SW』の第一作が鳴り物入りで本邦初公開される直前、その“柳の下のドジョウ”を狙って、「東宝」「東映」というSF特撮に精通した邦画界の両雄が、競って“亜流スペースオペラ”を制作し、駆け込み公開したことを、覚えている人はどのくらいいるだろうか?

「SW」狙いの邦画“亜流スペースオペラ”2作品

 ここからは、当時を知る者のマニアックな話題になってしまうが……『SW』が全米で大ヒット上映される中、「あの程度の特撮なら、東宝では『宇宙大戦争』の頃に既にやってましたよ」云々と豪語する中野昭慶特撮監督が、盟友福田純監督とタッグを組んで撮り上げたのが『惑星大戦争』。『SW』日本公開前、キネ旬辺りではタイトルをそのまま和訳して『惑星間戦争(惑星=STAR 戦争=WAR ってことなんだろうけど)』と紹介していたが、東宝版のタイトルも『SW』をそのままなぞっただけで、内容云々といったところまで考えずに撮ってしまったんだろう。

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 一方東映の『宇宙からのメッセージ』は、“日本のサム・ペキンパー”こと深作欣二監督が「特撮研究所」の矢島 監督と共に、『SW』的なビジュアルに日本の古典文学「南総里見八犬伝」世界観を融合した意欲作で、『新幹線大爆破』でミニチュア撮影に使用したシュノーケルカメラ(ミニチュアセットの中を這うように撮影できる当時の特殊カメラ)をアメリカより長期レンタルして、スピード感あふれる迫真のガバナス宇宙要塞攻撃シーンを描いている。亜流観およびゴージャスさ、という意味ではこの『宇宙からのメッセージ』に軍配を上げざるを得ないが、その分、アメリカのロジャー・コーマン御大あたりのB級映画のテイストに近い仕上がりになっている(もちろんそんな点も大好きだが……)

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 このように、“打倒(便乗?)『SW』”という共通の目的の下、「東宝」「東映」の2社が競って特撮大作を同時期に撮り上げたというのは、動機がどうであれ、今思うと凄いことだと思う。

『惑星大戦争』で、「轟天」である訳

 さて、前述の『惑星大戦争』だが、キャスティングでは、政治家になって信念が邪にぶれまくっている森田健作や“涅槃で待つ”の沖雅也、年を重ねて逆に妖艶さを増すことになる浅野ゆう子といった、既に若手と呼ぶには微妙ながら、それでも特撮世界には異質という意味でフレッシュなキャラを集めていて、それなりに新しい世界観、新たなファン層の獲得を目指した作品だったと思う。しかしながら、タイトルこそまんま『惑星(STAR)大戦争(WAR)』ながら、ストーリー展開および世界観は『宇宙からのメッセージ』とは異なり、「本当に観てきたのか」って思うくらい、『SW』の影響を受けていないように思える。敢えて共通点を挙げるとしたら、スペース・ファイターとヘル・ファイターとのドッグファイトシーンぐらいだろうか。

 それというのも、「地球侵略のため訪れた宇宙人の宇宙戦艦『金星大魔艦』によって滅亡の危機にさらされた人類が、極秘裏に開発を続けていた超宇宙戦艦『轟天』に一縷の望みを託し、両艦が、地球を、金星を舞台に激しいバトルを展開した挙げ句、数名の犠牲的行動によって危機を回避する」といった、当時ですら「往年」と呼ぶにふさわしい“東宝特撮のお家芸”ともいえるストーリーが展開するからだ(更にいうならば“宇宙戦艦繋がり”で『宇宙戦艦ヤマト』ととも酷似している。尤も“悲壮感”という点では『さらば宇宙戦艦ヤマト』の方に近いかな……?)。これでは申し訳ないが、とても『SW』公開を待望していたファンを取り込めるはすもない。この作品で“柳のしたのドジョウ”狙ったのならばあまりにもお粗末だ(ただ、個人的にはこんなストーリーだかこそ『惑星大戦争』が大好きだったりする)。

 そんなわけで、「何故あの時あのタイミングで『轟天』だったのか」という疑問を当時から長年抱き続けてた。 

〈後篇へ続く……〉