東映スペースオペラの「宇宙姫」
円谷プロ“ヒーロー特撮”の原点ともいうべき『ウルトラマン』から『ウルトラセブン』へと移り変わる過程で、全く異なる映画会社・東映が制作した特撮ドラマ『キャプテンウルトラ』が挿入されたのは周知の事実である。ここには『ウルトラマン』の制作が放映に追いつかないため、その狭間を、NET(テレビ朝日)以外での活動の場を求めていた東映が短期参入して穴埋めした、という“大人の事情”が存在したことが、大人になってから知ったことだが、不思議なことに、「円谷」を「えんたに」としか読めなかったくらい制作会社に疎かった当時の私は、この転換を何の抵抗もなく受け入れたことを覚えている。
さすがに、世界観といおうか“質感”の違いにはすぐに気づいたし、「ウルトラ」といっても巨大な超人は登場しないし(赤い服着た強面の“お兄さん”)、シュピーゲル号のデザインもいまいち、の印象を受けた。怪獣のどこかグロテスクで気味悪がったことを覚えている。ただ、これは好みの問題なんで語弊を招いては恐縮なんだが、ヒロインのアカネ隊員は、「ウルトラマン」科特隊のフジアキコ隊員よりは魅力的なキャラだと思っていた。それは今でも……否、より強く感じている次第だ
思うに、後に時代劇の悪代官がはまり役となる主人公の中田博久と同様、演じる城野ゆき嬢は、その芸名も含め、実に「時代劇の姫君か町娘」がしっくりくる、しっとりした美女だった。そんな女性が宇宙服(当時の野暮ったいイメージのもの)を着て、ハリボテ風の“宇宙空間”を闊歩するという、ミスマッチの妙も手伝って、実に可憐な“宇宙姫”となってくれたように思う。東映でいえば「藤純子」の系列の美女といえる。
何だが、江戸時代の一行がタイムスリップして未来に来てしまったようなキャラクターが、毎回不気味な怪獣・宇宙人を打ちのめす、背景の“宇宙空間(の幕)”が倒れてしまったらいきなり「太秦映画村」が現れそうな(実際には東映東京作品)、そんな雰囲気を持った東映スペースオペラは、意外と『ウルトラマン』から“地球外生物の驚異”をテーマにした『ウルトラセブン』への橋渡しをうまく“演出”してくれたのではないか、と今更ながら思う。