貞淑なる中真千子
『ウルトラセブン』第2話「緑の恐怖」。地球侵略を狙う植物型宇宙人ワイアール星人が、休暇で地球に帰る宇宙ステーション職員のイシグロ隊員(松本明夫)を拉致してなりすまし、まんまと地球に飛来、人間を次々と襲い自らと同じ植物型宇宙人に変えていく、というストーリーだ。
ところで、前作『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」がかの人気キャラ“バルタン星人”初登場の回として1話以上に印象的であったことを考えると、日本を代表するSF特撮ドラマ『ウルトラセブン』でありながら、こちらの第2話の方は(あくまで個人的な見解かもしれないけれど)今まで恐ろしいくらい印象が薄かった(ワイアール星人の再登場もなかったし……)。しかしながら、今回再見してみて、実はとても緻密なストーリー・造形・特撮の、やはりドラマが展開していく重要な回の第2話にふさわしい内容だった。中でも、小田急ロマンスカー車内という現実の空間でイシグロ隊員(松本明夫)が苦悶の中ワイアール星人に変化していくくだりなど、まさに“アンバランスゾーン”!! また拉致されたイシグロ隊員を包んでいた宇宙物質が“チルソナイト808”だったり、同じ物質で作られた小型発信器が登場したりと、『ウルトラQ』第13話「ガラダマ」第16話「ガラモンの逆襲」の回との共通点が多いこともうれしい。
さて、本作では、件のイシグロ隊員の妻役で中真千子が出演してるんだけど、この妻の貞淑ぶりが半端ない!(;^_^A あどけない面があるものの、夫であるイシグロ隊員への一途な愛が端々に感じられた。特に偽のイシグロ隊員を信じて疑わず、彼が変身した(むしろ変身を解いた?)ワイアール星人に自宅で襲われそうになった時も「貴方!貴方!」と既にいない2階の夫に助けを乞うシーンなど切なすぎるくらい愛くるしい。
この中真千子という女優、決して絶世の美女というイメージではないものの、表情や仕草が実に愛らしい。『ウルトラQ』第22話「変身」においても、彼女は突如巨人と化した青年・浩二(野村浩二)の恋人・あや子役で出演し、ここでも怪獣化した後も恋人への変わらず一途な愛を貫く、という役どころを例の愛くるしい表情で演じきっている。