神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

本当の娯楽を追求した鈴木則文監督

 これも“虫の知らせ”だったのか……一昨日、当ブログで志穂美悦子の『華麗なる追跡』に言及し、それとなく作品スチールを掲載したが、その翌日、まさか本作を演出した鈴木則文監督の訃報を知ってしまうとは……最近映画の現場から遠ざかっていたものの、いずれ捲土重来を期して、深作欣二監督の『バトルロワイヤル』よろしく“最後の一花”を咲かせてくれるものだと期待していたのに……今はただただ、あまりのショックで言葉を失っている、そんな気分だ。
 
イメージ 1
 
 思えば16年前の1998年、『キネマ百景』なるイベントを画策し、当時インディーズで映画を撮り続けている著名な監督に8ミリ映画の制作を依頼、全国5都市(東京・大阪・広島・尾道・福岡)で上映したことがあったが、その東京上映時に、参加したシネマ愚連隊の高橋監督の計らいで、件の鈴木則文監督が来場してくださった。私としては、もう感激で感激で……自作品をお見せできなかったことが残念で仕方なかったものの、鈴木監督と直に言葉を交わす光栄に、激しく感動したことを覚えている。
 
 鈴木則文監督ほど“大衆娯楽”の意味を理解し、いい意味で“下世話な娯楽作品”に執着した監督はいないと思う。70年代、かつて新東宝で活躍した石井輝男監督によって東映にもたらされた“異常性愛路線”。確かにその旗手であった石井監督の作品はとにかく“カルト”になるくらい激しかったが、それよりも、氏のフォーマットを踏襲した鈴木監督の作品の方が、観ていて安心できるというか、すんでの所で“前衛”に入らない程度の過激さで、作品を破綻させない妙があった。思い出に残る作品として、“快傑ズバット”の宮内洋の濡れ場か光る『現代ポルノ伝 先天性淫婦』、東映異常性愛路線の最高傑作と思う『徳川セックス禁止令 色情大名』、『エロ将軍と二十一人の愛妾』、氏が“当然の成り行き”としてにっかつに招かれて撮った、“星桃次郎”もカメオ出演する『堕靡泥の星 美少女狩り』、そして『トラック野郎』シリーズ(個人的には「天下御免」が一番好き!)、さらには、かの“汚れない”菊池桃子主演作品ながら、スカトロにとことん拘った『パンツの穴』など枚挙に暇がない。当団体の看板シリーズ『天使諜報★神宮寺真琴」の各クライマックスシーンも氏の『多羅尾伴内』に多大な影響を受けてたっけ……
 
 現在“制作委員会”の映画がまかり通り、ヨーロッパの“反娯楽”“反ハリウッド”に特化した各種映画祭での賞獲りがステータスと化した邦画界に於いて、B級王道娯楽に徹する最後の“巨人”であったはずの鈴木監督の今回の訃報……悲しみは潰えいないが、せめて、氏の志を継ぎ、この広島の地ではあるが、娯楽に徹した映画を撮らなければ、と切に思った。さあ、今から徹夜で企画作りだ! 新作には、氏縁のキャラクターの名を拝借し、完成の暁には、不躾ながら「鈴木則文監督に捧ぐ」のテロップを入れたい度思う。
 
 カミングアウトすると、鈴木監督の作品を劇場で観賞したのは『カリブ愛のシンフォニー』の一作だけ。しかも目当ては併映の『さびしんぼう』だった。
 
 それはともかく、今まで観客目線の“娯楽作品”をいっぱい世に送り出して戴き、本当に有難うございました! 氏を送るにあたり、やはりこの歌を送りたいと思います……合掌