神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

東映ゲリラ戦記!

 親愛なる故・鈴木則文監督の著「東映ゲリラ戦記」をようやく読み終えた。そしてこの上ない充実感に包まれている……

 本著は、70年代初頭からスタートし、当時任侠ものの企画を撮りたいと願っていた鈴木監督が、志半ばで会社の命じるまま「東映ポルノ路線」の旗手となることを強要され、そこで「池玲子」という、後に「衝撃のポルノ女優」として東映ポルノ路線を牽引することになる女優を発見し、『温泉みみず芸者』なる映画の制作をきっかけに、自分の思いとは裏腹に、かの石井輝男が築き上げた「東映異常性愛路線」のテイストを継承しつつ、より大衆に迎合した、そして大衆の願望を実現した映画造りに奔走するところから、結果的に氏の映画作品としては遺作となった、筒井康隆原作の『文芸賞殺人事件 大いなる助走』に至るまでの、氏の著による氏の視点から描いた、なんとも興味深い本である。

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 私事を言うと、現在熱烈歓迎する70~80年代東映B級映画だが、劇場で観た氏の作品は殆ど皆無で、専ら90年代のレンタルビデオブームの折、ビデオで観賞したものばかりである。それでも、スクリーンには凡そ及ばないものの。ブラウン管の中で展開する登場人物の激しいバトル・小気味よい“場違い”なギャグには心底惚れ込んでしまった(;^_^A そんな自分の往年の思いや疑問に、見事に答えてくれるのが本著である。

 その中でもとりわけ目を引くのは、『徳川セックス禁止令 色情大名』の主演が何故池玲子ではなく杉本美樹だったのか、いかにして志穂美悦子はアクションヒロインの主役を務められたのか等々、遅れて東映プログラムピクチャー(それも何気にヒロインアクション)のファンになった者にとって疑問だった点が、本書を読むことによってすっかり晴れてくれることが嬉しい! また、既に観賞した作品の舞台裏がそれとなく語られているのも、読んでいてたのしくなってしまう。まさに「一番知りたかった」部分を氏自らの筆で丁寧に教えてもらった思いだ(;^_^A

 勿論、邦画界が“斜陽”に向かっている中、おいそれと制作費のアップには応じられないし、そんななかギャラ的にもギリギリの生活を当時の映画人は余儀なくされていたのだろう。しかし、そこでそれすら逆手にとって、自ら「ゲリラ」と称する企画や撮影形態、そして次々に沸き上がる独創的なアイディアで乗り切った、氏をはじめ東映プログラムピクチャーの世界で活躍した諸氏には、頭の下がる思いである。

 「東映ゲリラ戦記」……まさに言い得て妙の素敵なタイトルだ! 見習っていきたいね(;^_^A