神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

2代巨匠による最強タッグの2本立て!

 気が付けば日本中をシネコンが席巻し、かつては大都市中心だった劇場における指定席・入れ替え制が常識となり、一日中映画館に居座って同じ作品を延々観続けるなんてことは“過去の出来事”と化してしまった。中二の頃に今は亡き新天地の広島東宝市川崑監督の『女王蜂』を3回連続で観たとか、学生時代に同劇場で『さびしんぼう』を3回観るために『カリブ・愛のシンフォニー』を2回観ることとなったなんて“武勇伝”も、もはや“前世紀の遺物”……(;^_^A

 

 それと共に、俗にいうロードショー公開がすっかり主流となり、70~80年代の映画界には当たり前だった2本立て興行なんて、最近では、復活した『東映まんがまつり』や『人体のサバイバル!/がんばれいわ!!ロボコン』のような稀有な例を除き、ほとんどお目にかかることもなくなった。

 

 しかし、昭和から平成の早い時期までは、やはり2本立てが主流だった。その名に“平成”と銘打たれている、近く日本映画専門チャンネルで公開される、石田純一主演『愛と平成の色男』だって、『バカヤロー!2 幸せになりたい。』と2本立て上映だった。思えばいつから2本立て興行は淘汰されていったのだろう……?

 

 というわけで、『さびしんぼう』と『カリブ・愛のシンフォニー』である。1985年4月13日に同時公開という、まるで“双子”のようなこの2作、ご覧のように最初から2本立てを意識したチラシが用意されていた。勿論これはチラシにかける経費を削減しようとした宣伝部の意図が十分うかがえるが、この1枚に凝縮された全く異なるベクトルの作品が、あたかも化学反応を起こしているかのような言い知れぬパワーに、改めて見て圧倒される思いだ。

 

 

 当時は勿論、東宝サイドとしては松田聖子主演の、しかもこの映画がきっかけで“聖輝の結婚”が実現したという話題性抜群の『カリブ・愛のシンフォニー』がA面で、明らかに『さびしんぼう』ばB面扱いだった。だから上映順は『さびしんぼう』が先で『カリブ』が後だったのを記憶している。しかし、試写会で涙を流すまで感動し、あくまで『さびしんぼう』が目当てで劇場に都合3回通った自分としては、この順番は好都合で、朝一番の上映に間に合うように劇場(広島東宝)に向かい、上記のように『さびしんぼう』『カリブ』『さびしんぼう』『カリブ』『さびしんぼう』と、ほぼ1日映画館に居座って、映画を観続けたものだった。今思うと、『さびしんぼう』が流れる映画館のシートに身を沈めることが、この上なく心地よかったことを覚えている。だから、『さびしんぼう』のパンフは今も後生大事に取っているが、『カリブ』のパンフはもとより購入していなかった。

 

 しかし、後に映画に対する嗜好も変わりはじめ、そんな時におそらく『堕靡泥の星 美少女狩り』をビデオで観たのがきっかけだと思うが、鈴木則文監督の外連味たっぷりでサービス精神旺盛な娯楽性や反権力の姿勢に大いに共鳴し、『トラック野郎』シリーズの再評価、そしてビデオやテレビで拝見した『徳川セックス禁止令 色情大名』『エロ将軍と二十一人の愛妾』『華麗なる追跡』『多羅尾伴内』『パンツの穴』といった一連の作品ですっかり氏の作風に傾倒してしまった。ただその頃は既に監督は一線から退いていて、今思うと、鈴木則文監督の作品を劇場で封切観賞したのは、どうもこの『カリブ・愛のシンフォニー』だけらしかった。そう思うと、当時なんて粗末な観方しかしていなかったんだ、って後悔することしきりである(;^_^A

 

 勿論、この2本立ての両作品も、さらに言えば大林宣彦監督と鈴木則文監督のベクトルの方向性も真逆といっていいくらい接点はない。しかし、それぞれのベクトルの違いを認めたうえで、両監督を同様に尊敬する身としては、まさにこの上映は“玉手箱”のよう。まさに「キネマの玉手箱」といっていい! 当方ではほかにも『伊豆の踊子』と『エスパイ』や、『霧の旗』と『惑星大戦争』といった、アイドル映画と特撮を2本立てにするといった節操のないカップリングを何の衒いもなくやってのけるところがあって(他にも『エレキの若大将』と『怪獣大戦争』など)、そこら辺りは東映もかくやというくらいの潔さだ(そう考えると、大映が『大魔神』と『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』という新作特撮映画2本立てを敢行したことは快挙といっていい!)。しかしながら、そんなラインナップだからこそ醸し出される“化学反応”の妙も、また劇場映画観賞の醍醐味だ。しかも私にとっては、後付けながら全く別次元で敬愛してやまない大林宣彦鈴木則文両監督の作品を、図らずも2本立てとして観賞できたのは、今となっては奇跡のような貴重な体験だった。

 

 今映画を撮っている私の作風は、主に大林宣彦監督的なファンタジー・メロドラマと、鈴木則文監督的な外連味溢れるヒロインアクションの2系統で、まさに上記の“2本立て”をずっと踏襲しているわけだが(;^_^A、最近はヒロインアクションにばかり特化しているので、たまには大林監督的ファンタジーの世界に再び戻ってみてもいいかもしれな、なんて思ってしまったね(;^_^A  そしていずれは、敢えて「ファンタジー」と「ヒロインアクション」の2本立て興行も行ってみたい。そして両作とも“撮り下ろし”だったらなおいいだろうなぁ(;^_^A