楽曲と物語の華麗なる”化学反応”~ウルトラQ第12話「鳥を見た」~
今では信じられないだろうが、ビデオソフトが普及する前の1980年代は、特撮ファンにとってのマストアイテムはサントラレコード。特に80年代後半の日本特撮映画・ドラマのリバイバルブームでは、数多のサントラレコードが発売された。中には『キングコング対ゴジラ』『海底軍艦』といった、劇中の音声・セリフ・効果音・BGMをまんま収録した「音で聴く映画」という、今思うと滑稽なものまで登場した。
そんな中、円谷プロ初の特撮ドラマ『ウルトラQ』の楽曲をデジタルで再現した「デジタルトリップウルトラQ」なるLPレコードが発売されたので早速購入した。そしてその中に収録された「鳥を見た・エンディング」という楽曲にいたく感動した。
私は『ウルトラQ』をリアルタイムで視聴した世代だ。もっとも、まだ物心もつく前で、断片的に『宇宙からの贈り物』のナメゴンが海中に落下するシーンと、『ガラタマ』における破壊されたダムでガラモンがよだれ(のような液体)を吐いて息絶えるシーンしか記憶に残っていなかった。だから『鳥を見た』に関しては、ラルゲユウスという、普通の文鳥のような鳥がそのまま巨大化した怪獣という設定を本などで読んだ知識で知るしかなかった。ただ、この楽曲の流れる中、感動的なシーンがあるんだろうと期待して、その後、我が家でついにビデオデッキ(ベータマックス!!!)が購入されるに至った際、早速一緒に手に入れたのが、件の「鳥を見た」が収録された『ウルトラQ 8』なるビデオソフトだった(一緒に収録されていたのが『宇宙指令M774』『SOS富士山』『ガラタマ』の3作品)。
今でも大切に取ってあるベータマックス版『ウルトラQ』ソフト。収録作品には「ガラモン」「ゴルゴス」「ボスタング」というスター怪獣が名を連ねているのに、パッケージ表面の怪獣がラルゲユウスってのが泣ける(;^_^A
早速、「鳥を見た」を観た。この回の主人公は、『ウルトラマン』でホシノ少年を演じる前の津沢彰秀で、彼とふしぎな文鳥・クロオ(のちの古代怪鳥ラルゲユウス)との交流を描いた、実に感動的な作品だった。孤児と思しき三郎少年(津沢)の演技が切なくて、そんな彼の唯一の友達となったクロオが、やがてラルゲユウスとわかって警察に無理矢理連れていかれるシーンなど、『戦え!マイティジャック』の第16話「来訪者を守りぬけ」のラストシーンを彷彿させて(もっとも『戦え!』の方が『Q』より後番組なんだけど)なんとも切ない。そんな中、獄中で本来のラルゲユウスに転身したクロオは自由な空に飛び立つものの、最後に三郎の許に飛んでくる。そして彼の上空で旋回する。そんなラルゲユウスに、三郎は「俺も連れて行ってくれよ」と叫ぶが、すぐに諦めて「さようなら……さようなら!」とラルゲユウスを見送る。そんなラルゲユウスと三郎の夕日を背景にしたシルエットに「鳥を見た エンディング」のオリジナル楽曲が流れるのである。オリジナルの曲は「デジタルトリップ」のそれとは異なった雰囲気の楽曲だったものの、私が思い描いたイメージとぴったりだった。
それから幾星霜、今週月曜日にNHKのBSプレミアムで放映されたのが『鳥を見た』だった。ホント久しぶりに観賞して、今から35年前の1984年にベータマックスビデオで観た時の記憶が鮮明に甦ってきた。やはり名作には名曲ありだって実感した。
ところで、件の「鳥を見た」は第12話。現在BSプレミアムで、同じ週で『ウルトラQ』と『ウルトラセブン』を放映しているが、今週から放映話数にズレが生じた。なぜならば、『ウルトラセブン』の第12話は、早く封印の悪夢が解かれることを祈念して止まない、実相寺昭雄監督・佐々木守脚本・桜井浩子ゲスト回でスペル星人が登場する「遊星より愛をこめて」だからだ。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm31651106
ちなみに、当方のヒロインアクション的見地で語るならば、本作『鳥を見た』を演出した中川晴之助監督は、『ゴジラvsキングギドラ』(大森一樹監督)でメカキングギドラを操縦した“怪獣使いの少女”こと中川安奈の父親である(;^_^A