神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『子連れ狼 死に風に向う乳母車』

 昨晩観た『子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる』に痛く感激して、そのまま、今まで“持ったまま”になっていた『子連れ狼 死に風に向う乳母車』のDVDを、勢い観賞した。 
 
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 本作も、過剰なまでの血飛沫と“切り株”残虐描写、圧倒的な主人公・拝一刀の活躍に充ち満ちた作品だったが、当然というか見せ場もたくさんあって、実に面白かった。今回のライバルは、渡り徒士・孫村官兵衛。重い過去を背負いながら、女でも行きずりの仲間でさえも情け容赦なく切り捨てる冷血漢である。この役を、「大岡越前」において“良心の塊”の如き越前守を務めた加藤剛が演じているのが何とも意外である。また敵(刺客のターゲット)として登場する代官・猿渡玄蕃役の山形勲はさておき、その手練れの部下として「ミラーマン」のSGM村上チーフ(和崎俊哉)と「恐竜戦隊コセイドン」のバンノ隊長(草野大悟)が競演しているのは、円谷特撮ファンとしては嬉しい限りだった もっとも“バンノ隊長”は「大五郎」の“子供の立場を利用した罠”にまんまとはまり、人間らしい情をもったことが仇となって絶命。また“村上チーフ”は拝一刀との一騎討ちで、ハラリと天空に舞った一刀から脳天に胴太貫を撃ち込まれてあっけなく命を失ってしまう。特に和崎俊哉など、加藤剛と同様“正義の男”のイメージが強いだけに、この決闘シーンは衝撃的だった。
 
 くだんの拝一刀は、今回は剣劇のすさまじさのみならず、劇中薄幸の田舎娘を救うべく自ら拷問を敢えて受けるシーンでも、その精神力の凄まじさをアピールする。拷問を仕掛けた側の女衒の元締め・木颪の酉蔵(浜木綿子)をして「本当のお侍」と言わしめるくらいだもの……ラストでは「ありゃ人間じゃねえ……化け物だ!」って酉蔵の部下が叫ぶシーンがあるけれど、本当にそう思ったね。心身ともに凄まじすぎる!
 
 クライマックスは玄蕃率いる軍団が待ち伏せる荒野へ、拝一刀は乳母車の大五郎と共に赴くのだが、ここでもかの乳母車が、それこそ“常識”と“物理の法則”を度外視したような超絶メカを繰り出して、並みいる敵の軍団を、ガドリング銃で、手榴弾で、槍で、そして胴太貫で、片っ端からなぎ倒す(手榴弾で吹っ飛ぶシーンでは、わざわざ千切れた四肢が飛び散るカットまで“ご丁寧”に挿入!)。しかも最後は2丁拳銃まで繰り出してくるからたまらない! 思えば時代劇ながら、荒野の雰囲気といい、照りつける太陽や青い空といい、あたかも西部劇のようなテイストで描かれていたよ。あれじゃ、タランティーノが狂喜乱舞するのも納得できるな。
 
 ラストは、拝一刀と孫村官兵衛との、武士の名誉と死に場所を賭けた一騎討ちになるのだが、そこでかの有名な“斬首された加藤剛の、転がる生首の視点のカメラワーク”という奇跡的な映像を目の当たりにすることが出来た。
 
 とにかく何もかもが破天荒で実験(冒険)精神に充ち満ちていながら、ドラマ自体は決して破綻せず、見せ場をふんだんに盛り込みながら、きちんとわかりやすい“予定調和”“勧善懲悪”で描いている所など、是非見習わなければならないと思わせる秀作だった。もっともっとシリーズの別作品が観たくなってきたよ