奥田圭子から綾瀬はるかへ ~“広島っ娘”「ヒロインアクション演技」の系譜~
先日のブログに書いたように、テレ東配給の『隠密・奥の細道』第21話「炎に甦る女の涙」を再見し、改めて、アクションヒロインとしての奥田圭子を再認識した。やはり彼女の、愛くるしさと共に闘志むき出しの情念を表現できるつぶらな瞳と、スレンダーでシャープな肢体、そして力強くしなやかなアクションを観るにつけ、そう思わざるを得ない。惜しむらくは、映像でこそ今でも甦るものの、既に30数年も前の姿、ということだ。
それというのも、今彼女が当時のままで活躍出来たならば、今の日本におけるヒロインアクションの系譜に多大なる影響を与えてくれたと思うからだ。それも地元、広島に特化して……
過日、「出自広島」「設定広島」という項目の下、広島のアクションヒロインについて考察したことがあるが、こと「出自広島」に関しては、私の勉強不足もあろうが、たちまち(あ、これは広島独特の言い回しで、実際は「さしあたり」って意味(;^_^A)5人の名前しか思いつかなかった。それも皆「リアルアクション」というよりは「演技としてのアクション」が光る女優ばかりである。そんな中で、今なお筆頭に挙げられるのが、綾瀬はるかであろう。
彼女のアクションに関わるフィルモグラフィーを挙げても『僕の彼女はサイボーグ』『ICHI』『精霊の守り人』『八重の桜』と枚挙に暇がない。しかも今年劇場版映画が公開予定の『奥様は、取り扱い注意』に至っては、『Mr&Mrsスミス』のアンジョリーナ・ジョリーや『ロング・キス・グッド・ナイト』のジーナ・デイヴィスもかくやといった「主婦が実は秘密諜報員」という役柄まで演じきっている。彼女の場合、“リアルアクション御三家”である武田梨奈や清野菜名、山本千尋のように特定の格闘技に精通しているわけではなく、あくまでその身体能力とたぐいまれなる演技力によって見事なまでに数多のアクションヒロインを演じている、そんな女優における「アクション演技」の第一人者といっても過言ではない。
昨今、女性のアクションといえば、刑事ものにおける女刑事や戦隊モノのヒロインが相場だが、不思議なことに綾瀬はるかの場合は、そのどれにも当てはまらず、演じるのはサイボーグだったり、瞽女の居合の達人だったり、短槍使いの女用心棒だったり、会津藩の女戦士だったり、と特殊な設定ばかり。それ故型にはまらないヒロイン像を構築していると思う。アクションを売りにしている俳優・女優は多くいるが、彼女ほど超一流のメジャー作品で大活躍している売れっ子ながら、ここまでアクション演技にも精通している女優は珍しい。
翻って、件の奥田圭子も、そのフィルモグラフィーにおいて、黒幕の拳法使い(最終話のアクションは圧巻の一言!)、教師を装う正義の戦士、催眠によって操られる女アサシンといった“変化球”なアクションキャラを見事に演じているし、『暴れん坊将軍』では、腰元から遊女まで多羅尾伴内もかくやの七変化を魅せる。“七変化”といえば、綾瀬はるかも『ひみつのアッコちゃん』で華麗なる変身を披露している。そう考えると、力強さ(綾瀬)とスマートさ(奥田)の違いこそあれ、普段の演技・キャラと戦闘時の勇壮さとのギャップの妙といい、2人に共通点は多い。
惜しむらくは、2人が同時代で活躍していたらどんなにすごかったか、という思いだ。もっとも、同系列のたぐいまれな「アクション演技」の両雄が別の時代で活躍したからこそ、奥田圭子から綾瀬はるかに「アクション演技」のバトンが渡された、って思えば感慨深い。しかも上記の通り、二人とも“広島っ娘”だ(;^_^A そう思うと何だかワクワクしてしまう(;^_^A
二人に至るまでの「アクション演技」の系譜を辿っていけば、そこに当然、斉藤由貴、南野陽子、相楽ハル子、吉沢秋絵、浅香唯、大西結花、中村由真、五十嵐いづみ、小高恵美、仙道敦子、中山美穂、山本理沙、後藤恭子といった80年代ヒロインアクションの「虫も殺さないような娘に無理矢理啖呵を切らせる」アクション演技の歴史が垣間見られるような気がする。
そんなわけで、奥田圭子がもっともっと芸能活動を続けていれば、まだたくさんの「アクション演技」を魅せてくれたのかと思うと、残念で仕方がないが、それはそうと、彼女が80年代の確立したフレキシブルな「アクション演技」の系譜(他の当時のヒロインはそのほどんどが一ドラマに限定したアクションぶりだったのに対して)が、綾瀬はるかに連綿と継承されているって思うと、「80年代系ヒロインアクション」のムーブメントは、恐竜が鳥類に進化して生き残っているように、姿を変えながらも未だ存在し続けているようで、何とも喜ばしい(;^_^A、