神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『スケバン刑事』の亜流なるが故に……

 昭和60年代ヒロインアクションドラマの双璧といえる『セーラー服反逆同盟』。しかし本作が、というか日テレ系の当時のヒロインアクションドラマが、フジの『スケバン刑事』の影響下で制作されたことはまぎれもない事実だろう。ただwikiこそ「『スケバン刑事』シリーズに対抗する形で制作された」と比較的ソフトな表現がなされているが、他では「亜流」「二番煎じ」なんてきつい表現もされていて、そこら辺は「ちょっと待って」っていいたい。

 

 確かにヒロインアクションドラマの金字塔である『スケバン刑事』は、「スケバン」と銘打ちながら、斉藤由貴南野陽子浅香唯といった“ズベ公”の極北といっていいアイドルを主人公に配したことで、いくら彼女らが荒っぽいスケバン言葉(っていうのかな?)を吐いても、とてもスケバンに見えない.。要は「悪(スケバン)を以て悪を征す」という設定から、単に「セーラー服の女子高生が学園を舞台に悪と戦う」という基本的なフォーマットを確立した。もしこれが当初の予定通り、健康美の裏に不良性も醸し出せる(奇しくも降板の原因となった『Vマドンナ大戦争』での演技でそのことが実証された)宇沙美ゆかり主演で始まっていたならば、もっとダークな雰囲気で、タイトル通りの“スケバン”刑事になっていたかもしれない。まあ、それは歴史の悪戯ということで、実際の『スケバン刑事』は、「セーラー服に正義の象徴の赤スカーフを纏った“守ってあげたい”カワイ子ちゃんが、精一杯啖呵切って、けっこう痛めつけられながらも最後に勝利する」という、これまたヒロインアクションの定義を作り上げた。

 

 そのため、『スケバン刑事』の好評ぶりに影響されて後発のヒロインアクション制作を目指そうにも、その局なり制作会社は苦戦を強いられることになる。ここまで完璧なるフォーマットが確立しては、どうやっても二番煎じは免れないからだ。そこで制作のユニオン映画が採った苦肉の策が、『セーラー服』『反逆同盟』というストレート且つ分かり易すぎるタイトルであり、「主人公クラスは用意するが基本3人(もしくは4人)が同等に戦う」という編成であり、「敢えて学園内での事件に限定する」という設定であり、それ故「キャストを固定してその分豪華なメンバーを揃える」というキャスティングの妙であり、そして何といっても、かの「白いセーラー服(夏服ではなく、冬服の色彩をネガのように真逆にした特別な衣装)」である。この白いセーラー服には正直度肝を抜かれたが、この制服にどぎついメイクも、そして普段の(スケバン刑事風)赤スカーフのセーラー服(制服)から戦闘時にはこの姿に“変身”するって設定も、学生シーンと戦闘シーンが同じ衣装の『スケバン刑事』に対する対抗心から生まれたと思う。

 

 

 このように、二番煎じの揶揄は避けられないものの、少しでも差別化を図ろうとした制作サイドの創意工夫は、実に評価できる。また本作の姉妹編ともいえる、よみうりテレビ・IVS制作の『こんな学園みたことない!』でも、前作の背景・キャスティングの妙などを踏襲しつつ、戦う主人公を女教師にするという設定でさらにひねりの利かせるなど、フジのヒロインアクションドラマの牙城に迫ろうとした日テレ系の奮闘は、また昭和60年代ヒロインアクションドラマに豊富なバリエーションを与えてくれるなど多大なる貢献をしてくれた。別にフジが勝とうが日テレが勝とうか、そんなことはどうでもいい。要はこの切磋琢磨が、少しでも多くの良質なヒロインアクションドラマの誕生に繋がった事実が喜ばしいのである。