神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

深夜食堂『再び赤いウインナー』に感涙!

 『深夜食堂』というドラマは初めて観賞したんだけれど、その時のエピソードに泣けた!!

 タイトル『再び赤いウインナー』

 小林薫が経営する、深夜だけ営業する居酒屋(食べ物屋?)の常連である、新宿で幅を利かすヤクザ者の松重豊は、決まって“タコさんウインナー”を注文する。そんな彼は、かつて高校生時代福岡を代表するスラッガーで、プロからも引き合いのあるほどの実力を持っていたが、甲子園出場が決まった時に暴力事件を起こしてチームは出場辞退、そのまま中退してヤクザに身をやつした。そんな彼の同級生でチームメイトだった光石研は、今では彼と真逆の警視庁刑事となっていた。

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 そんな光石研が、ヤクザ者の松重豊に高校時代野球のマネージャーを務めた子の見舞いにいってくれと懇願する。件の“タコさんウインナー”も、そのマネージャーの得意料理だったらしい。だが、その元マネージャーは今や末期の乳ガンに蝕まれており余命幾ばくもない。実は、当時の野球部員(そして光石)の憧れのマドンナだったマネージャーは松重に惚れていて、甲子園出場決定後、彼女の誘いでデートしていた最中に、彼女がチンピラに絡まれ、彼女を救うためやむにやまれずチンピラに手を出したのが件の暴力事件の真相だったのだ。結婚を期に、松重や光石と同じ東京へ居を構えたマネージャーは、子宝に恵まれながら、病魔に蝕まれ、今まさにその生涯を閉じようとしている。

 彼女との再会を渋る松重に対して、その舎弟を公務執行妨害で捕まえる程の職権を濫用し、舎弟の釈放を条件にしてまで彼とマネージャーとの再会を後押しする光石。結局、小林薫からも「会うか会わないかはあんたに会いたがってる人が決めるんだ」と諭されて、松重はマネージャーへの見舞いを決心する。

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 そして光石に促されるまま、マネージャーとの数十年ぶりの再会を果たす松重。ここでここまでイメージを膨らませたマネージャー役を誰が務めているのか興味津々だったが、その大役を務めたのが、説得力十分の安田成美! ルックスといい年齢といい、まさに適材適所の絶妙なキャスティングだったと思う。

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 ぎこちない会話ながら長年の彼に対する想いを吐露する安田成美。ただ黙って彼女の話を聞くしかない木訥な松重。しかし彼女が「あの時自分がデートに誘わなければ、その後の運命が代わったかも知れない」と言った時だけ「そげんこつ言うな、喰らわずぞ!」と呟く、そのやさしすぎる「喰らわすぞ」の一言が、学生時代ネイティブに聞いていた福岡方言だけに何とも胸にしみた。

 その後、深夜食堂の“タコさんウィンナー”をどうしても食べたいと、無理を圧して外出した安田を車いすに乗せ、食堂に連れて行く松重と光石。そこへ件の松重の舎弟が彼女の車いす移動のため、店の段差に合わせた板きれを予め準備してアシストするシーンにもグッとくる。そして光石と松重が二人がかりで安田の車いすを店に運び、その次のシーンはカウンターに置かれた“タコさんウィンナー”のカット。しかしその次のカットは封を切られた「お清めの塩」で、そのまま、安田のいない、喪服姿で並ぶ松重と光石のカットになる。このもの凄い展開には正直圧倒された。喪に服しながら、小林薫のついだビールを神妙に飲み干す二人。それでもう十分だった。

 本作では、松重と安田のラブロマンスもさることながら、光石の“忍ぶ恋”演技も出色だった。松重の過去の暴力事件も、甲子園辞退より松重が安田とデートしていたことの方が許せなかったと公言するほど彼女に惚れていながら、最愛の安田が松重との再会を望むとあらば職権を濫用してまでその実現に尽力する。まさに“アガペの愛”である。しかも、二人の水入らずの場を演出するために、見舞いに来た安田の息子(実はこの子も野球少年)を敢えて病院外に連れ出し、キャッチボールに興じる。そんな彼が、安田の子の球を捕りそびれ、取りに向かう過程でその先にある安田の入院する病院の建物を観るや否や、その場にしゃがみ込んで人目も憚らず号泣する、そのシーンが一番泣けたかも知れない。

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 実はホント“ベタ”過ぎる展開でまさに王道演出。あざといドラマといえばそうなんだけれど……そこに一番の魅力を感じる作品だったと思う。私にとっても、というか配偶者を持つ身としては他人ごとではないシチュエーション。そんな“Xデイ”がもし訪れた場合、そこまで他者に対して寛容に慣れるか否か、なんてこんなドラマを観るとつい考えてしまうけれど……それが望みなら、きっと万難を排して実現してやろうと尽力するんだろうな………