神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ワンダーウーマン1984』は、“ワンダーウーマン イン ワンダーランド』だった!!

 

 凡そ半年越しの念願がかない、ようやく観賞できた『ワンダーウーマン1984』。時代設定がいきなり第一次大戦時から、自分にとっても身近な、それでいて既に36年前となってしまった昭和59年(と敢えて書く)に変わったことで、よりリアルな世界観で展開していくことと思いきや、本作は、まさに“おとぎ話”だった。というか、“おとぎ話”が前提で展開していく物語だった。『不思議な国のアリス』に」ならって、『Woder Woman in Wonderland』って言ったところか。勿論、アマゾンの奥地に女性だけの国があって、そこの最強の戦士がアメリカにやってきて悪党を退治するっていう「ワンダーウーマン」の設定自体、おとぎ話といえばおとぎ話なんだけどね(;^_^A

 

 

 そして本作は、その“おとぎ話”前提の物語で、いわば「何でもあり」なんだけれど、それを敢えてリアルな世界観で構築しようとする試みがなされていた。物語はこうだ。

 

 ワンダーウーマンことダイアナが働くスミソニアン博物館に、押収された盗品の骨董品が届けられる。その官邸に派遣されたのが、引っ込み思案で風采の上がらないバーバラ博士。彼女は初対面がら気さくで夕食に誘ってくれたダイアナに対して強く惹かれるのであった。彼女が鑑定を依頼された骨董品の中に、「自分の願いを一つだけ叶えてくれる」と書かれた不可思議な石の置物があり、それを見つけたダイアナは、第一作で世界平和のために犠牲となった最愛の男性、スティーブ・トレバーとの再会を、そしてバーバラは憧れるダイアナのような女性になりたいと、つい石に念じてしまう。しかしそれは、代償と引き換えに実際に願いをかなえてくれる魔法の石、ドリーム・ストーンだったのである。

 

 そんな折、スミソニアンに多額の融資を申し出た投資会社社長・マックスは、バーバラに接近し、件のドリーム・ストーンをまんまと盗み出す。投資会社社長とは名ばかりの、多額の借金にまみれたマックスは、ドリームストーンの存在に気づき且つありかを見つけ出していたのである。彼は代償なく望みが何度でもかなえられるよう、自らがドリーム・ストーンになることを石に願い、他者を使って自らの願望と他者からの代償を同時に掴むことに成功する。

 

 ドリーム・ストーンの力によって、ダイアナは他者に憑依したスティーブ・トレバーと奇跡の再会を果たし、バーバラも性格も含め、ダイアナの長所を全て兼ね備えた別人のような女性に“変身”する。しかも彼女が知らなかったダイアナ=ワンダーウーマンの力さえも。

 

 マックスの野心は、自らの投資会社が目指した石油掘削の成功に端を発してどんどんエスカレートしていき、やがては欲望のために世界中を大混乱させてしまう。そんな、マックスの野望を阻止するために、スティーブと共に彼を追うダイアナことワンダーウーマンだったが、皮肉にもマックスにたぶらかされたバーバラがその行く手を断ちふさぐ。しかもダイアナもバーバラも、願望の代償に、とても大切なものを失うのであった。

 

 本作の特徴としてまず挙げたいのが、ワンダーウーマンがやたら弱い点である。それは肉体に限らず精神においてでもある。今回彼女は博物館に保管されていた旧型のジェット戦闘機を“透明化”して、スティーブの操縦の下一路エジプトに向かうという、リンダ・カーター主演のパイロット版(かつてNETの土曜洋画劇場で放映!)の“透明飛行機”を再現してくれているんだけれど、エジプト到着後、マックスが代償で石油王から奪った民兵たちと戦うシーンが、実は“らしくない”。本来ならばその圧倒的なパワーで蹴散らしてもおかしくない、生身の人間である民兵相手に相当苦戦するのである。しかも銃弾を浴びて血を流すという、ありえないシーンも登場する。更には、ホワイトハウスに乗り込んで、マックスに支配された大統領のSPと一戦交える時も、銃弾を跳ね返せずに身を隠したり、その直後のバーバラとの最初の死闘では、同等の力であるはずのバーバラに明らかに圧倒される始末。あの露出度の高いコスチュームでここまでらしくない弱々しさを見せられると、まるでGIGA辺りの“ヒロピンビデオ”(“ダイナウーマン”とか(;^_^A)のようだ。勿論、これにはストーリー上の“理由”があるんだけれど、「ヒロインは完全無欠でなければポルノに過ぎない」と考えている自分にとっては、特に「ワンダーウーマン」なだけに、ちょっぴり残念な展開だった。後半も、一時は“覚醒”して、今までなかった飛行能力を身につけて、文字通り「空飛ぶ鉄腕美女」と化したり、アマゾネス一族を救った伝説の女戦士・アステリアが着用したといわれる、真のヒロインだけが許される究極のゴールドアーマーを身に纏ったりして、クライマックスの決戦に挑むんだけれど、それさえもバーバラとは互角の勝負であり、最後もマックスを徹底的に打ちのめすという展開には至らない。彼女の“泣き言”と聞こえなくもない言葉が、ある種”人類の救い”になるだけだった。これ以上詳しくは書けないけど(;^_^A

 

 もう一つの特徴として、前作の冷酷なナチスドイツ将校のような絶対的な悪人が一人も登場しない点が挙げられる。邪悪な実業家のマックスも、辛い幼少時代や事業の失敗などの〝枷”を背負い、妻との微妙な関係からなかなか面会できない息子アリスタを溺愛していて、彼の野望も、実は劣等感の塊でもある彼が、息子に立派な姿を魅せたい、その一念が大きな動機だった。また後半ワンダーウーマンと敵対し、願望の果てに人智を超えた彼女の言うところの〝百獣の王”チータにまで変身を遂げたバーバラも、素はホームレスの老人に毎日食事を届けるなど心優しい女性で、ただダイアナへの羨望と嫉妬が彼女の心を乱したといっていい。共に〝弱い”立場の人間たちである。他にも登場人物は皆心の弱いものばかりで、その願望も「有名になりたい」「百万ドルほしい」「異教徒を街から追い出したい」「核兵器が欲しい」とみなさもしいものばかり。、挙句には米大統領の「ソ連の何倍も核兵器が欲しい」の願望で、世界は一触即発の全面核戦争という緊急事態を迎えるのである。スーパーヒロインであるダイアナでさえも100年以上前に死別したスティーブのことが忘れられず、彼の奇跡の再会を果たした途端、彼を失いたくないと極めて〝守り”に入ってしまう。

 

 あたかもマジック・ストーンは人間の弱さを見極める〝合わせ鏡”のような存在で。それに人類が翻弄されつつ、結果自分を見つめ直す……そんなおとぎ話こそが、本作『ワンダーウーマン1984』の真のテーマだったのかもしれない。

 

 

 

 ダイアナ役のガル・ガドットは、もはや彼女なくして「ワンダーウーマン」はありえない、といっても過言でないくらいのハマり役となった。もっとも、元ミスイスラエルにしてイスラエル軍兵士の過去を持つ彼女は、今では和平を結んだとはいえ、かつての敵国であったエジプトの軍隊相手に苦戦する、という展開をどう思っただろうか? それにしても、CGに補助されているとはいえ、彼女の躍動感はあまりにも素晴らしく、件のエジプトでの死闘も、からりと晴れ上がった天候の下、あのコスチュームをキラキラ輝かせながら、弾けるような、そして手に汗握るような展開、活躍ぶりだった。

 

 思えば本作の舞台となった1984年は、ちょうど学生の頃。そして私事ながら翌1985年に初監督作品を撮った。そう考えると、この映画世界の時代と自分の記憶をシンクロさせて、何ともいえない感慨に浸ってしまう。あの頃は、夢と希望と不安とがない交ぜになったような気分でいた。もともと景気とは関係ない職種を希望していたので、景気の動向に関心はなかったが、それでもよもや日本経済が今のように衰退するなんて、夢にも思わないくらい好況だったのを記憶している。まさに未来にまだまだ夢を持てる”昭和59年”だったよ。そうか、その頃ワンダーウーマンは世界のために頑張ってくれていたんだなぁ(;^_^A そういえば、その3年前の高3の頃に〝妖星ゴラス”が地球に最接近してたんだっけ(;^_^A


 それはそうと、本作のエンドクレジットのサプライズ映像には本当に感動した! 感激して泣けて仕方がなかった! だって今までずっと描いていた願望が実現してたんだから! 実は既にwikiでネタ晴らしがされていたようなんだけれど、嗚呼、事前に見てなくてよかったよ(;^_^A 見てたら感動は半減していたかもしれない。そんなわけで、今からご覧になる方は、くれぐれも事前にwikiをご覧になりませんように(;^_^A