神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

2本の切ない「~愛をこめて」

 『帰ってきたウルトラマン』第44話「星空に愛をこめて」を観賞。この回は、マットの岸田隊員(西田健)が怪獣に襲われていた女性を救出し、それがきっかけでその女性と結婚を考えるまで愛し合うが、実は彼女はあろうことか岸田が開発したレーダーを破壊するために、怪獣グラナダスと共に地球に派遣された工作員ケンタウルス星人だった、というお話。

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 ドラマ初期は、あたかもエリート官僚のように悉く新入隊員郷秀樹(団次郎)に辛く当たる憎まれキャラだった岸田隊員も、金城哲夫の遺作ともいえる脚本による第11話「毒ガス怪獣出現」以降、郷と軽妙なギャグを言い合う人間的なキャラに姿を変えていき、そんな中、この第44話では主人公格の活躍を魅せる。

 ケンタウルス星人(広田あかね)を演じた井波ゆき子嬢の、実に庶民的で何とも柔和で優しげなキャラクターは、堅物っぽい岸田に訪れた初めての“春”を彩る恋人というイメージにピッタリで、そんな彼らの恋路は、虚構のドラマながら実にリアルで心温まる。しかしながら、今回のドラマ展開の宿命として、ラスト彼女は自分の身の上を岸田に告げる。その際の岸田の「うそだ~!」のセリフも妙にリアル。そしてあかねはそのままその実体であるケンタウルス星人に身を変え、グラナダスに特攻自爆し、果てる。ここら辺は、「モテない男が、何故か素敵な女性と奇跡的な恋をスタートさせるが、彼女の偶発的な病・事故によって悲劇的な別れを余儀なくされる」という王道メロドラマを地でいく展開だった(かつて『トラック野郎・度胸一番星』で桃次郎が初めてマドンナの乙羽水名子《片平なぎさ》と相思相愛になるものの、水名子は台風による水害で命を落とす、って悲恋もあった)。改めて観ていても、何とも切ないストーリーだったよ。

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 ところで、この作品のラスト、何故か闘いのフィールドに自転車で駆けつけた次郎少年とルミ子が、この事態を目の当たりにし、ルミ子が「いつか宇宙人とも仲良くなれる」云々の言葉を口にするんだけれど、これって、実はかの封印作品ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」でこの回のヒロイン・桜井浩子が語るセリフと同じニュアンスなのである。あの時は、同じロケで撮られたもう一つの実相寺昭雄佐々木守コンビの作品「狙われた街」で同じ地球人の信頼関係を破壊する、というテーマと対になって、宇宙人と地球人とでも信頼関係はいつか築けるはず、というのが「遊星より愛をこめて」のテーマだった。物語も宇宙人(スペル星人)のサタケが、桜井浩子演じる山辺早苗との(スペル星人の策略ではあったが)恋を“演出”する話だったし。

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 台本は佐々木守ではなく田口成光だったものの、タイトルは奇しくも「星空に愛をこめて」「遊星より愛をこめて」と非常に似ており、『帰ってきたウルトラマン』自体、かのセブン12話封印事件の翌年度からスタートしたウルトラシリーズだ。もしも、12話封印時の円谷プロ上層部の迅速すぎる封印に内心抗議した現場のスタッフが、その心意気をこめて“確信犯的”に「星空に愛をこめて」を獲ったのだとしたら、実に小気味いい。飽くまで“仮説”だけれど……

 昨今、人種差別に端を発したヘイトスピーチ・心なきネット書き込みが横行する現代日本社会を生きる皆に、是非本作とそのプロトタイプである「遊星より愛をこめて」を観賞していただきたい。その為に、12話の封印を何としても早く解かなければ……

 ちなみにケンタウルス星人こと井波ゆき子嬢は、自分にとっては「ルックルックこんにちは」に出演していたレポーター役の方が印象に残っている(;^_^A