神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「娯楽アクション」のススメ

 うんと前の話だけれど、当時寮監を務めていた職場の先輩から、「何かおもろいチャンバラ映画知らん?」と相談され、すかさず『椿三十郎』のビデオをレンタルして差し出したことがあった。この黒澤明の傑作こそ、“くだらないチャンバラ”よりも絶対面白いはずだ”と確信したからである。しかし、自信満々で渡したものの、先輩の反応は「まあ……おもろかったよ」と、明らかなに落胆した様子だった。特に映画マニアではない先輩のその反応に、当時は「何故『椿三十郎』の素晴らしさが理解できないんだろう?」と訝しく思ったものだった。
 
 しかし、今では先輩の反応は十分理解できる。と同時に、先輩の意図にも気づかず、気取って“黒澤時代劇”を差し出した自分の浅はかさが恥ずかしい。思えば、当時は“B級”を映画で楽しむ、という感覚がまだ養われていなかったようだ。
 
 単に“B級映画”と書いてしまうと、「B級に拘るな」とお叱りを受けることもあるので、敢えて“娯楽アクション映画”と表現するが、たまたま勧められて、今まで“敬遠していた『仁義なき戦い』シリーズを観賞(『広島死闘編』)したのが、そもそも“娯楽アクション”を素直に受け入れるきっかけになった。ただ「惨い」映画だと思っていたが意外に馬鹿馬鹿しくて面白い。シリアスとギャグの“緩急”の具合も絶妙だったし、いささか例えは強引かも知れないが、『仮面ライダー』に端を発した一連の“東映TV特撮モノ”と同じ感覚で楽しめるということを発見した。
 
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 その後、『仁義なき戦い』シリーズのみならず、『広島仁義人質奪回作戦』『脱獄広島殺人囚』『暴動島根刑務所』『横浜暗黒街マシンガンの竜』といった東映“娯楽アクション”を借りまくって、その世界を堪能した。『トラック野郎』シリーズを心底楽しめるようになったのもこの頃だ。また東京出張時に、誘われて今は亡き大井武蔵野館で『徳川いれずみ師責め地獄』を観賞してからは“異常性愛路線”にも手を染め、同じ石井輝男監督の『恐怖奇形人形』『忘八武士道』、鈴木則文監督の『徳川セックス禁止令色情大名』『エロ将軍と二十一の愛妾』『堕靡泥の星 美少女狩り』(こちらはにっかつ)といった作品も堪能。それから、当時ビデオで“奇跡の復活”を遂げた“大蔵怪談”の『生首情痴事件』『沖縄怪談逆吊り幽霊 支那品怪談死棺破り』『怪談バラバラ幽霊』の陰惨かつチープな作品作りぶりに感銘を受けたりもした。大映の『座頭市』や『子連れ狼』シリーズを“残虐シーン”も含めて楽しめるようになったのもこの頃かな。
 
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 今は“ヒロインアクション”に特化しているけれど、そうやって“勧善懲悪”の映画を撮り続けるのも、現在こんなタイトルでこのブログを続けているのも、そんな一連の“体験”があればこそだ。だからこそ、今更ながら、数十年前の“青臭い映画マニア気取り”をちょっぴり恥ずかしく思ってしまうのである。
 
 大作、問題作、アート、娯楽アクション……人の数だけ映画の嗜好も違うだろうが、アマチュアとはいえ映画も「人に観られてナンボ」の媒体なんで、選択肢を広げる、という意味で、当面“娯楽アクション”に拘っていきたいと思う。