神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『電人ザボーガー』を観たぞォ!

 13日にバルト11でチラシをゲットして以来、我が心の中の“ピープロ魂”に火がついて、「怒り」ならぬ「“期待”の電流」をほとばしらせながら、遂に念願の『電人ザボーガー”映画版を観ることが出来た。率直な感想は「嬉しかった」の一語に尽きる。なぜ「面白かった」よりも「嬉しかった」が先に来るのか、以下に記してみたい。
 
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 この映画は、何と云っても、井口監督の“ザボーガー愛”につきる。誰かの感想で「この映画はTV版『電人ザボーガー』のリメイクではなくパロディーだ」云々の記述があったが、確かにこの作品の全編に漂う旧作のテイストは、オリジナルを隅々まで観尽くした者でないと理解できないかもしれない(その分、理解出来る者はクスクス笑いながら“優越感”に浸っていただろうけど……)。しかし、この手のパロディーにありがちな、オリジナルの時代がかったチープさを笑い飛ばす、といった思惑は微塵もない。ただただ、オリジナルに対する、極限までのリスペクトだ。好きで好きでたまらなかったから、思い出す限りどれもこれも詰め込んだ、といった監督の心情が見えてきそうな位、この映画は“愛”に満ちている。この感覚は、実は自主映画人が懐かしのテレビドラマをパロディーとして撮ったりする感覚に非常に似ている。ダイコンの『帰ってきたウルトラマン』しかり、『ウルトラQ 第.29話 闇が来る』しかり……そんな“オリジナル愛”が全編を包んでいるからこそ、「嬉しかった」のである。
 
 作品の方は、ご存じのように2部構成。作品上は、2話を連続して放映する、というノリであったが、きちんと第1部の最後に、当時の字体のままで「つづく」と出た上に、ピープロお得意の劇画チックアイキャッチが新たに書き下ろされたのもの(しかもオリジナルと同じ効果音)で出てくるという念の入れよう(ここで前の席の学生たちがクスクス笑っていた)。出てくる怪人も、ミスボーグ・ヨロイなんとか(名前忘れた)・ラストの巨大ロボット以外は完璧なまでにオリジナルの姿を継承していた(「ドルマン9」が出てこなかったのは全く以て残念!)。「恐竜軍団シリーズ」も一応カジっていた(笑)
 
 オープニングから最初のΣ団の登場シーンも、オリジナル第1話の雰囲気そのものだったし、新田刑事役の渡辺裕之も、前半では根上淳の演技を意識したかのような重厚かつ抑えめの演技をしてたっけ。井口監督の「青年期編は完コピで」の言葉に恥じない出来だった。
 
 ただ途中(ここからは一部ネタバレあり!)、大門豊がミスボーグと本当に恋に堕ちる辺りから、自分の“正義”に疑問を感じ惑う件が、どうも観ていてのれなかった。何と云ってもオリジナルの大門豊は、直情直結一直線の真正直激烈男である。TV版でドラマ中何度も絶望的な危機に陥るが、それでも克服して勝利を収めるのは、「Σは悪」という、全くぶれない信念・怒りの賜物だ。私はオリジナル52話の全てを観たわけではないので断言は出来ないが、おそらく彼がそういう迷いを抱く回はなかったと思う。まさに究極の“勧善懲悪”が、同じピープロでも『宇宙猿人ゴリ』と『電人ザボーガー』との決定的な違いではなかったのか。これが、「面白かった」が「嬉しかった」の後に来てしまう理由だ。まあ、そんな情愛の結果、ミスボーグが大門の子を孕む、という破天荒な展開が、後半の感動へと繋がる訳だけれども………
 
 そんな訳で、前半の後半部分(?)辺りから、ちょっと心の中に「?」が浮かんでしまったまま、いきなり悪徳政治家に土下座して仕事を乞うシーンから始まる後半に突入した。この後半、前半部分はあまりにも惨めで、これまた「?」を抱えながら観てしまったが、職安で板尾大門が秋月玄と対峙する場面から、俄然盛り上がってくる。特にこの秋月玄役の宮下雄也の演技が実に素晴らしかった。最初は敵対するものの、最後は共闘するというキャラクターを実に味のある雰囲気で演じきっていた。もしかしたら本作で一番輝いていたのが彼だったんじゃないかな? 
 
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 クライマックスは、オリジナル第11話で登場するも、稼働前に破壊された無念のジャンボメカに37年の時を経て見事に“落とし前"をつけさせ、あり得ない位の"予定調和"な展開で、無理矢理ハッピーエンドに納めてくれた。私の思いとしては、この種のドラマでは"後味のいいハッピーエンド"が不可欠なんで、このラストは嬉しかったな(笑)
 
 それにしても、ジャンボメカ内で悪之宮博士(このネーミングも凄い!)と対決する場面やラストで明子と玄に語りかけるときの大門の台詞が、この"加齢臭オヤジ"には泣けるかっこいいものばかりだった。あまりに感動してどんな台詞だったか忘れてしまったけれど(苦笑)、とにかくダメダメ人間の私にさえ勇気を与えてくれる、それは素晴らしい台詞の応酬だった。これは完全に映画版だけのオリジナル台詞だが、脚本も務めた井口監督の素晴らしさにただただ感謝だ。
 
 エンディングで流れる旧作の映像は、ただオリジナルを懐かしむだけでなく、本作の元ネタがどれだったのかを丁寧に教えてくれる、とても親切なものだった。このエンディングを観ていると、何故か『ニューシネマパラダイス』のラストに出てくる、映画監督となったサルヴァトーレ(トト)が、試写室でアルフレードの形見のフィルムを観るシーンとオーバーラップして、本当に泣けてきた。片方のまぶたに涙をためて、劇場を後にしたっけ……
 
 さて、ピープロと云えば、「ハードすぎる展開」と「チープすぎる特撮」とのギャップが、弱点でもあり、反面魅力でもあったと思う。それが今回、最新のCG特撮技術を経て、この弱点が完璧に克服された作品に仕上がった。ハリウッドで『トランスフォーマー』がもてはやされているだけに、CGで蘇ったザボーガーは海外でも受けるのではないか、と思う。しかし、井口監督の“愛”がこの作品を、よそ行きの気取った映画ではなく、我々の目線で楽しめるものにしてくれた。ホント、針の先のようなごく僅かな層をターゲットにして撮られた“壮大すぎる自主映画”『電人ザボーガー』は、“大きなおともだち”たちの金字塔として、いつまでの燦然と光を放ってくれることだろう。
 
 DVDが出たら絶対買うぞ!
 
※確かエンディングでは紹介されなかったんじゃないかと思うが、屋台のおばちゃんが実はミスボーグの変装だった、というネタは、第26話「強奪! 狂犬ロボット ブル・ガンダー」で登場している(笑)。
 
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