神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『電人ザボーガー』に癒されて……「ザボーガー語録」

 「あきらめるな!立ち上がれ!」のキャッチフレーズも勇ましい、井口昇監督の『電人ザボーガー』。2011年の公開から既に10年近い歳月が経過してしまったが、往年の番組のリブート作品は数あれど、ここまで原典(オリジナル)にリスペクトしたリメイクはない、というくらいの素晴らしさだった。.それこそ、オリジナルを知らなくてもその“愛”が十分伝わってくる出来だった。しかも、オリジナルをオンエア時に観賞した世代はもはや壮年の域に達しているんだけれど、そんな壮年層へエールを送るような物語展開も実に心憎かった。何といっても、人口から考えたらそれこそ“針の先”のよう僅かな層をターゲットにして、こんな素敵な映画をこしらえてくれた井口監督の心意気と政治力には、ただただ感服するしかない。勇壮ながら実はマイナーコード(短調)の主題歌「戦え!電人ザボーガー」の楽曲も、心にビンビン響いてきて最高にいい。

 

 そんな訳で、“昔の少年たちへの応援歌”といっていい、この『電人ザボーガー』に登場する数多のシーンやセリフは、「心が風邪をひいた時」には、最高の“癒し薬”となってくれる。本作のレビューを書いた時には、観賞後で感動のあまり細かなセリフを失念してしまっていたが、、その後無事DVDも発売&レンタルされて久しく、改めて劇中の名シーン名セリフを振り返ることが出来るようになった。

 

 そこで、ここでまた我が“心のネジ”を巻くべく、名シーン・名セリフの数々を、独断と偏見を元に採録してみたい(;^_^A

 

 

大門「自分が紙切れ位の価値しかないと思うのなら、どんなことにも恐れずに立ち向かえるはずだ。俺はダメな自分に酔うだけのカッコ付けだったよ。」

 

 後半、落ちぶれて成人病まで患い、若い頃の情熱も正義への熱い心もすっかり失ってしまった、壮年期の主人公・大門豊(板尾創路)が、再び正義の心と勇気を取り戻す際の、静かな中に情熱と闘志をみなぎらせるシーンのセリフ。特に「俺はダメな自分に酔うだけのカッコ付けだったよ。」なんてのは、なんだか自分のことを言われているみたいで、ズンと胸に響く感動的なセリフだ。

 

 

中尾「新田さん! 俺、事故で足を怪我してから、もう何の役にも立たない、雑草になったと思ってましたァ」

 

中野「でも、貴方と一緒にいて、雑草でも大切な人を守れるって……知りました!」

 

新田「雑草は、見えないところで、花を咲かすものだよ」

 

中野「生身の人間だって、奇跡を起こせます! こんな風に!」

 

ブ~ッ!!!

 

中野「飛んだァ!!!!」

 

中野「リアリズムを超えるぞ、ていうか超えたぁ!」

 

新田「娘よ、父さんが笑顔のうちに、逃げてくれ!」

 

 

 オリジナルでは根上淳が演じた新田警部(渡辺裕之)は、中野(デモ田中)・松江(岸建太朗)両刑事を従えて、大門豊の良き理解者として登場するが、警察機構の立場故、政治家への忖度によって大門豊を裏切ることになり、しかもその警察からも用済みと3人揃ってお払い箱になってしまう。その後、新田は妻子から逃げられたり、中野は事故によって車椅子での生活を余儀なくされるなど憂き目に遭うが、そんな逆境の中3人は、警察機構のしがらみに中では実現できなかった“真の世直し”をするために「ニコニコ同盟」を結成する。そんな折、悪ノ宮博士(柄本明)の発明したジャンボメカ(佐津川愛美が都内で暴れだし、しかも手にした携帯型電磁波発生装置によって、都民が次々殺されていくという事態が発生した。ジャンボメカの放ったミサイルによって松江も命を落としてしまう。そこで残った新田・中野の両名は、電磁波発生装置を破壊するために、ジャンボメカへの特攻を決意する。上記のセリフ群はその一連のシーンで登場するものだ。そこには死地に赴く2人の、お互いへの敬意・感謝と決意が語られていて、その一言一言があまりにも清く、中でも事故で自暴自棄になっていた中野が、新田によって生きる価値を見出すことが出来たことを語るセリフなど、観ていて涙を禁じ得なかった。新田の「雑草は、見えないところで、花を咲かすものだよ」も泣けるくらい素敵すぎる!  やがて中野の車椅子に重なり合って座った2人は、中野が自らの屁にライターで点火して、そのジェット推進力で空を飛ぶ、という漫画でも書けないくらいバカバカしい手段で空を飛ぶ。その際、その説得力皆無のシチュエーションを誤魔化すかのような中野のセリフ「リアリズムを超えるぞ、ていうか超えたぁ!」が何とも秀逸である。結局、新田の娘に対する辞世の言葉が語られた直後、彼らは自らの命と引き換えに都民を殺害し続けた電磁波発生装置を破壊する。元来戦記物であれ、SFであれ、アクションであれ、「特攻」が大嫌いな私だが、この2人の「特攻」シーンだけはあまりにもバカバカしく且つ美しくて、唯一認めてもいいと思っている。劇中一番好きなシーンだ。

 

 

大門「確かに俺は、自分の無力さを知った。しかし、たくさんの愛も知った。愛はつらく、厳しいことも学んだ」

 

大門「だがお前は、愛を得られない苛立ちを、破壊することで逃げてるだけだ!」

 

悪ノ宮「わかったふりをするな! この世に生きる価値のある人間など、いないのだ!」

 

大門「違う! 糖尿でも、ポンコツでも、必死に道を歩けば、最後の一秒まで闘うことが出来るんだ!」

 

 一時は悪ノ宮博士に操られていたザボーガーを何とか修繕した大門は、敵に渡った自らの息子・秋月玄(宮下雄也)との死闘を制し、ジャンボメカへの潜入に成功する。しかしそこでザボーガーはミニブルガンダー集団の攻撃を受け、また大門も悪ノ宮博士の許までたどり着いたものの、彼の足から発射される無数のナイフによって深く傷つく。そんな絶望的なシーンで、大門が起死回生の大逆転を成し遂げる過程で、自らの思いを吐露するのが上記の一連のセリフだ。自らの至らなさを後悔しつつも、不屈の闘志を徐々に一言一言に込めていくこのシーンは、まさにオリジナルの『電人ザボーガー』をリアルタイムで観てきた、現在の“加齢臭漂う大きなお友達”に対する精一杯のエールのように聞こえてならない。このシーンを観る度に、「ああ、俺もグダグダ考えずに、前を向いて頑張らないと!」って気持ちにさせてくれる。まさに“カンフル剤”のようなシーンだ。その後、ブルガンダー蹴散らしたザボーガーや、良心を取り戻した秋月の助けによって、見事大門は、悪ノ宮博士とΣ団の野望を粉砕する。壮年だって、ポンコツだって「やれば、できる!!」

 

 

大門「何言ってやがるんだ、俺は神様が、タイムオーバーを告げる、最後の一秒まで、平和を守るぜ!」

 

 大団円を迎えて、ジャンボメカの呪縛から解き放たれた娘のAKIKO(佐津川愛美)や秋月と別れを告げる際の、大門の粋なセリフ。壮年なるが故の様が、タイムオーバーを告げる、最後の一秒まで」という言い回しが、我が心にズシンと来る。そうだ、年齢に縛られてはダメなんだ!  運命は自分自身の手で切り開いていくものなんだ!  人生は誰のものでもない自分自身のものなんだ!  そんな当たり前のことを改めて思い知らせてくれる、何とも勇ましく、そしていつまでも本作を観続けたくなる名セリフだ。まさに本作は“元気玉の塊”のような名ゼリフの宝庫だといっていい。

 

 ホント、“ケムール人に陰謀”か、2020年はへこむくらいろくでもないことが続いて、心か折れそうになることが多々ある(唯一いいことは、先のアルコール悪増税の対象に酎ハイが入っていなかったことと、愛飲しているトップバリューの第三のビールが、イオンの方針で増税分の値上げをしない宣言をしたことだけだ!)。そんな時は、この『電人ザボーガー』を観て、「ザボーガー語録」を聴いて、大いに癒されたり、明日への活力をもらったりしたくなる。まだまだ暗い世相は続くが、せめてこの映画から元気を戴こう!