神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『キスカ』のテーマ(主題)に涙する……

 これはちょっと前の話だが、チャンネルNECOで『太平洋奇跡の作戦キスカ』を放映していた。当然ながら録画したし、「そもそもDVDも所持しているが、それでもあの、キスカ守備隊5200余名が“大発”に乗り込んで、軽巡洋艦阿武隈」他日本海軍艦艇によって撤収されるシーンは、どうしても魅入ってしまう。かの團伊玖磨作曲による名劇伴「キスカマーチ」と相まって、いつ見ても熱いモノがこみ上げてしまう(;^_^A 

 

 


 人と人とが殺し合う様を描く戦争映画にあって、「人を救う」ことがテーマな作品って、この『キスカ』ぐらいじゃなかろうか。確かにスピルバーグの『プライベートライアン』も一米兵士を救出する話だが、その過程が余りにも悲惨で、しかも主人公たちには悲劇的結末が用意されているわけだから、敵米兵を始め、一人たりとも死なせず、救出作戦を見事遂行する本作の爽快感ったらない!

 主人公の大村(史実では木村)少将からして、兵学校成績ビリっ尻の”たたき上げ”で、それ故戦果の名誉にとらわれない好漢であり、彼が撤退作戦の指揮を執る第五艦隊も、北方領土・幌筵にとどまって南方の戦線も参加できず「"う”五艦隊(動かん隊)」と揶揄される、聯合艦隊の“日陰者”。そんな“独立愚連隊”な面々が、その面目躍如のため、一切の戦績を期待せず、ただひたすら人命救助のために、霧のアリューシャン列島に決死の突入を試みる。このシチェーションに熱くならない“漢”はいないんじゃないかな。

 特殊効果や合成を考えて、既に同じ特撮映画では前年に『モスラ対ゴジラ』『三大怪獣地球最大の決戦』といった極彩色のカラー映画が登場していたのにも関わらず、敢えてモノクロで制作された、っていうのは、今思うと惜しいような気がするが、三船敏郎山村聰田崎潤、藤田進、土屋嘉男、平田昭彦、稲葉義男、そして志村喬といった、今や比肩する者のいない錚々たる名優が名を連ねているだけでも十分だ。また特撮ファンとしては、『ウルトラマン』のハヤタが隻脚の傷痍兵として登場し、しかも劇中手榴弾で自決するとか、同じく『ウルトラマン』のイデと『ウルトラセブン』のソガが隊の輪を乱すふてくされた兵を演じ、「電送人間」の鉄拳制裁を喰らうという、子供の頃観たら“トラウマ必至”のシーン・キャスティングが登場するのも印象的だ(;^_^A 

 邦画の戦争映画は、とかく戦争の悲惨さ・非人道性を“被害者的立場”で描くものが多い。あまたの「特攻映画」あたりはその傾向が如実だ。散る者の潔さ、残された家族の悲しみが中心で、敵はあくまでアメリカを始めとする連合軍やソ連軍。確かにそうなんだけれど、「特攻」を強要したのは時の日本軍、ひいては為政者じゃないか。当時の戦争相手を隠れ蓑にやたら特攻隊員を美化し神化し、そのくせちゃっかり“拝米”な輩がいる限り、日本の戦争映画の歪さは拭えないと、私は思っている。

 そんな中、『独立愚連隊』シリーズ同様、邪なイデオロギーや政治的プロパガンダを鼻で笑うような、こんな爽快な戦争映画の存在意義は大きい。ホント本作のリメイクを期待したいものだ。もっとも、そうなっても、件の大村少将は役所広司をキャスティングするんだろうな、今の邦画界は…………

 ところで、ウヨクのことばかり批判したが、この『太平洋奇跡の作戦キスカ』が公開された時、五艦隊がキスカ将兵を無事撤収するこの作戦の成功を以てして、「日本軍が勝利する映画を制作するのは如何なものか」云々の指摘をする“反戦サイド”の意見もあったそうだ。反戦はもちろん大事だが、これは極端過ぎる意見である。こんな極端な考えに固執するから、その反動で今や世を挙げての右傾化を許す羽目になったんじゃないかな…………

 

※件の「キスカマーチ」を聞いた家内が一言、「これ、『アトム』のハクリじゃん!」。いや、違うんだって! この映画はモノクロで『鉄腕アトム』のアニメ化より古いんだから…………あれ、『アトム』の方が古かった…………?(*゚Д゚)  でも決して『アトム』じゃないんだよ! 『キスカマーチ」は!