神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

伊福部サウンドの“呪縛”

 久々『シン・ゴジラ』に関わるネタなんだけど……(;^_^A

 クライマックスの「ヤシオリ作戦」、BDで何度観返してもその都度ゾクゾクワクワク感が止まらない。それはひとえにあのシーン、特に新幹線爆弾がゴジラめがけて突進するタイミングを計ったかのように流れ始める「宇宙大戦争マーチ」。一般にはこの楽曲から派生した「怪獣大戦争マーチ」(メインタイトル)の方が有名だが、敢えてそのプロトタイプの「宇宙大戦争マーチ」の方をチョイスした庵野総監督の心意気に感激すると共に、「彼も“拘り”を持ってんだな」って思って微笑ましくなったりもした。

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 ところで、この『シン・ゴジラ』では、この曲の他にも「昭和ゴジラ」から「vsシリーズ」に至るまで、多くのゴジラテーマ曲が劇中流用されている。再録音ではなくあくまで“流用”。その証拠に『モスラ対ゴジラ』から引用したゴジラの進撃テーマ曲では、曲冒頭の管楽器をピーッってふかした音さえ流れるもの。しかも全て伊福部昭氏による楽曲ばかり。それだけ庵野総監督が歴代ゴジラや伊福部サウンドをリスペクトし続けたからに他ならないだろう。

 伊福部サウンドの特徴は、どこまでも重厚な味わいだ。軽快なマーチからおどろおどろしい曲、怪獣・超兵器の登場曲、果ては『宇宙大戦争』における主人公二人のデートシーンに流れる愛のテーマに至るまで、どこか重々しい、圧倒的なパワーを秘めている。そんな楽曲は、重厚にただただ「進撃」する重厚なゴジラ映像に実にマッチしていた……と言いたいところだが、実際にはむしろ逆に“軽く”感じられてしまった。それは何故か……?

 例えば、鎌倉からゴジラが再上陸したシーンに流れる前出の「ゴジラの進撃テーマ曲」なんだが、一見大変マッチしているように思えるが、どこかズレているような気がしてならなかった。それは、この作品のどこか終末的な映像に、外連味たっぷりの伊福部サウンドではどこか“浮いて”しまった感が半端なかった。むしろ、ゴジラの第3変態のシーンやゴジラ放射能攻撃で都内が火の海になる絶望的な映像の背景で流れる鷺巣詩郎氏の楽曲の方がよっぽど作品世界にマッチしていたように思えた。

 かつて『ゴジラ』(1984)から「vsシリーズ」が始まった際、第二弾『ゴジラvsビオランテ』において早くも伊福部昭氏の数曲がメインで使用され、当時はその重量感に狂喜乱舞したものだった。以後も事ある度に伊福部サウンド劇中復活し、それを誰もが拍手喝采で迎え入れ、「伊福部サウンドこそ、一番の怪獣特撮映画のBGM」っって思われていたきらいがある。かく言う私もその一人だが、今回の『シン・ゴジラ』のような、過去の怪獣映画の固定観念の上を行くような企画・作品に関しては、その「伊福部サウンドベスト」の考え方をそろそろ改めなければならないのではなかろうか。

 古典は古典としてリスペクトするとして、それでもあまりそのことに囚われないよう、新しい感性の楽曲を大いに取り入れていくべきではなかろうか。「伊福部サウンド」が「呪縛」にならないよう………

 でも完全なるリメイクならば、楽曲は勿論、そのテーマ曲は絶対引用すべき、ってもの、もう一つの私の考え方だったりするんだけど………ヾ(ーー )