目指すは「面白真面目」
先日、『大怪獣のあとしまつ』のレビューを(それも辛口に)書いた際、“説明口調のギャグ”について言及したが、コメディーそのものを否定したつもりはない。当方の“広島発ヒロインアクションムービー”も基本はコメディータッチだ。要は方法論の違いである。
当方の作風はとにかく「面白真面目」。とにかく登場人物におふざけは全くない。みんなそれぞれ真面目で必死なキャラクターだ。しかしどこかピントがずれていたり、ミエミエを通り越したような予定調和の行動をとったりとmそんな違和感と“お約束”を畳みかけて、笑ってもらいたいと願って演出している。例えば『特命探偵☆葛城アキ』のクライマックス、いきなりセーラー服に黒グローブという典型的な「スケバン刑事」スタイルで主人公のアキが登場した際、東京の上映会では笑いが起こったと、当日会場にいらしたフォロワーのダイスさんに伝えて頂いたことがあった。これも「婦人自衛官は男性の隊員と異なり、セーラー服の制服がないから」という理由で、元上司に無理矢理着せられて、本人は不本意に、それでも大真面目に登場するシーンであるが、私としては十分笑いを狙ったシーンだったので、「してやったり」の思いだった(;^_^A(ダイスさんはその直後のアキがクローブの手を握り締めるカットを、とても好意的にとらえていただいていた)。
同じく『特命探偵☆葛城アキ』で、アキがピンヒールのニーハイブーツにてこずって坂道でコケるとか、そのピンヒールを履いたまま大立ち回りを演じるとか、敵役の生駒千歳専務が逆上するといきなり汚い広島弁でまくしたてるとか、他にも『電光石火☆八城忍』で、主人公の忍がセーラー服を着て覚醒するとか、大真面目なγ団の”同志”たちの言動がどこかユーモラスだったり、γ団尊師の神納清美の反原発の思想の源が極めて下世話で利己的なものだったりとか、『学園特捜☆伍代聖羅』で、主人公・聖羅を慕う恋人気取りの増田三平が、彼女を尾行し、勘違いに勘違いを重ねた挙句、敏腕の学園特捜である彼女を守ろうとしゃしゃり出て、逆にチンピラに伸されるとか、『女子高生戦士☆英あいり』で、主人公あいりのライバル、因幡珠美が『ピンクパンサー』の上司やカートゥーンアニメ『ロードランナー』のコヨーテよろしく、何とかあいりを陥れようとするが悉く失敗するとか、とにかく「面白真面目」もしくは「真面目だから面白い」を続けてきた。セリフ回しの場合も、例えば『天使諜報★神宮寺真琴』の一連のクライマックスで、主人公の真琴に“お約束”のように時代がかった口上を言わせるとかしたが、言葉で茶化すことは一度もしたことはなかったし、それでも会場では意図したシーンで意図した笑いを頂くことも出来た。現状では“番外編”として位置付けている後発の『THE 争奪戦っ!』『YOSHIKOを探せ!!』も、全編「面白真面目」のオンパレードだ。
女子高生然とした制服姿でヒロインが戦うこと自体、ある種“ギャグ”と言えなくもないかな(;^_^A
理想としては、仏頂面でギャグを(それもさりげなく)かまして、笑いをとっても「え、何で笑ってるの?」って表情をする、ってのが理想だ。そんな映画を目指していた。もっとも、そんな笑いも投げかけっ放しで、敢えて「突っ込み」を入れないのは、『大怪獣のあとしまつ』と一緒かもしれないけど、一応“回収”は出来ていると思っている。
怪獣映画でいえば、孫の手島でゴジラを「可哀そう」っていった女子大生(篠原ともえ)や、大涌谷でバラゴンの進行を前に記念撮影としゃれ込んだ不倫カップル(近藤芳正・奥貫薫)といった“舐めた”言動をしたものが、その直後ゴジラによって悲惨な最期を遂げるという、“ブラックユーモア”な演出が光る金子修介監督のセンスこそ、コメディーを目指す怪獣映画には必要だったのではなかろうか。