神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

“メタモルフォーゼ”する斉藤由貴

 歌謡ポップスチャンネルでも、日本映画専門チャンネルと同様“80年代アイドル”に特化した企画が進行中で、そのカテゴリーである「80年代女性アイドルソングベストテン」では、小泉今日子菊池桃子と続き、斉藤由貴も登場した。

 

 

 今の私にとって、斉藤由貴とは、スケバン刑事“初代”麻宮サキ以外の何者でもないんだけれど、今回のような番組を見ると、それは鮮烈でありながらも彼女の芸能人生のほんの一部に過ぎないことがよくわかる。それにトレードマークのセーラー服だって、彼女はデビュー当時から“清純”のもののの姿で見事に着こなしていて、あのいい意味で野暮ったい「スケバン刑事」の姿は一過性のものだった。そういうことで、確かに“スケバン刑事斉藤由貴”なんだけど、逆に“斉藤由貴スケバン刑事”とは言えない、彼女の多様性を、この番組は垣間見させてくれた。

 

 デビュー曲にして、かの菊池桃子(他に倉沢淳美尾崎豊)と同時期の“競作”となった「卒業」から始まって、件の「スケバン刑事」主題歌として我々にとっては今でも“金字塔”の「白い炎」(今思えばセカンドシングルだったんだね(;^_^A)、そして東宝映画『雪の断章-情熱-』の主題歌「情熱」に、アニメ『めぞん一刻』主題歌の「悲しみよこんにちは」と続く一連の曲は、今もしっかり覚えている。その後も彼女の主演した映画の主題歌が続いた。

 


 彼女の凄いのは、『スケバン刑事』で心の闇と悲壮感を漂わせ、獣のようにギラギラした眼を見開いて、目いっぱい啖呵を切り、そして闘い続けるヒロインを演じたかと思えば、それとは全く逆の等身大の恋多き娘や、話から知り頃の黒柳徹子をコミカルに演じ切るなどの、良い意味でつかみどころのない演技力に尽きる。しかも、彼女のその後のフィルモグラフィーにおいて『スケバン刑事』のようなアクションは(コミカルな設定のものも含めて)皆無だし、この一作限りでまさにものの見事に“虫も殺さない娘”に“着地”した点である。これに関しては、二代目麻宮サキこと早乙女志織役の南野陽子との比較で顕著である。南野陽子はそれでも彼女のキャラクターを滲ませながら「スケバン刑事」を演じていたし、その後も『はいからさんが通る』」のように、活動的というか俗にいう“おきゃん”なキャラも演じ続けている。それに対して斉藤由貴は前述のように以後一度も「麻宮サキ」を感じさせる演技を、パロディーでも演じていない。彼女にとっては本作とその前にフジの「月曜ドラマランド」の枠で制作放映された『野球狂の詩』の水原勇気役くらいしか、男勝りの役を演じたことがないのではないか。よって、「スケバン刑事」は斉藤由貴を彩る一つの大きな要素ではあるが、決してそれが全てではない。そのことは、昭和60年代ヒロインアクションドラマファンとしても肝に銘じておかなければならないだろう(;^_^A

 

 

 今回の「ベストテン」の最後を飾ったのは、井上陽水の往年の名曲をカヴァーして、彼女にとっても最大のヒットとなった「夢の中へ」。これを久しぶりに聞いて、彼女が『ゴジラvsビオランテ』に出演していたことを思い出したよ(;^_^A 確かゴジラの大阪上陸のシーン(ゴジラ目線?)で、いきなりこの「夢の中へ」のイントロが流れ始めたかと思ったらいきなりプツンと切れて、斉藤由貴のあの舌っ足らずな声で、コンサートに中止と共に、ゴジラの上陸と観客避難を呼びかけるMCが流れ出すのだ。その間彼女の声しか流れないんだけれど、この“サプライズ”にはびっくりしながら嬉しくなってしまったよ(;^_^A  本作を演出した大森一樹監督の映画に出演していた縁で、急遽決まった“カメオ出演”だったようだけど(;^_^A