神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「見合い」はドラマチック

 昨日11月6日は「縁結びの日」だったそうで……そのネタで……

 

 今から14年前の2006年、ちょうど“広島発ヒロインアクションムービー”シリーズの制作が始まる直前に、『AGAPE』という作品を公開した。物語は以下の通り。

 

 主人公の高校教師は突然不治の病を宣告される。死への恐怖と孤独感に苛まれ思い余った彼は、あろう事か結婚情報サービスの会員に登録してしまう。残りの少ない人生を、その場つなぎの恋愛で紛らわせようという魂胆だ。そんな彼の彼の思惑を知ってか知らずか、度重なる見合いはことごとく失敗。そんなある日、とある女性を紹介され思いがけない恋愛が始まった。彼の実情も知らずに彼女の感情は高まり、その恋愛が成就し始めた矢先、彼の心に意外な葛藤が巻き起こる。 

 

 

 この物語の根幹にあるのは「愛すればこそ別れなければならない、愛のパラドックス」というものである。実際に不治の病を宣告されたら人は何を考えるのか、テーマにいささか変化球気味のストーリーが展開していくが、結局はメロドラマとして完結する内容で、制作当時はいささか陳腐な物語だったか知れなかったが、その後“韓流映画”ブームが席巻し、『秋の童話』『冬のソナタ』といった、往年の70年代大映ドラマ『赤い』シリーズを彷彿させるベタなメロドラマがもてはやされるようになったので、そんな時勢に乗れば、結構受けるんじゃないか、って公開当時は期待したものだった。まあ、そんなにうまくことは運ばなかったけどね(;^_^A

 

 そんな『AGAPE』だけど、悲運のメロドラマの体裁を持ちながら、オチを含め実は随所にコメディーの要素も備えていて、中でも主人公が見合いで悉く成就しないシーンは、彼と相手の女性とのすれ違いをユーモラスに描いてみた。今まで全く設定のなかった者同士が、いきなり「結婚」という人生を左右する大きな決断を腐るべく会うわけだから、それ自体壮大な物語であり、且つ傍から見れば実に興味深い行為だ。お互いの価値観を小出し小出しにしながら必死になって相手の正体を伺ったり、そこはかとなく裏で”値踏み”したりする見合いの場面は、無垢な恋愛以上にドラマチックだ。だから失敗すればするほど、観る側はやきもきし、それ故その先にある成就に大いなるカタルシスを覚えることが出来るものではないだろうか本作ではそんな線も狙って演出してみた。

 

 

 同じく「見合い」をテーマを全編広島でロケされた劇場映画に、金子修介監督の『こいのわ 婚活クルージング』という作品がある。本作もやはりベースはコメディーで、主人公の高齢な富豪(元社長)が、”終活”もかねての婚活に勤しみ、様々な観亜相手との葛藤の果てに、一度は反目し合った相手と紆余曲折を経て結ばれる、という物語を、一切辛気臭くなく描いた、古くて新しい物語だった。このように「見合い」は実にドラマ・映画向きなテーマ故、今後もいろんな形で「見合い」が物語世界で取り上げられるようになったらいいと思う。まあ、その前に、若者が安心して「見合い」出来るような、生活面が安定した社会の実現を目指す方が先なんだけどね。