神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

鈴木則文監督と『色情大名』の顛末②

 池玲子杉本美樹を輩出した「東映ポルノ路線」。その先鞭を切る形で石井輝男牧口雄二といった監督らが牽引した「東映異常性愛路線」よりもソフトで、その分いかがわしさとユーモア(ブラックではない!)、バカバカしさが誇張されたこのシリーズは、70年代にスマッシュヒットを続け、東映プログラムピクチャーの一翼を担った。低予算の過酷な条件を、奇抜なアイディアとバイタリティーで見事に克服し、その後の隆盛を紡ぎ出した同路線のエース格・鈴木則文監督が、その功労によって、予算をいつも以上に費やし、一大艶笑時代劇として描き上げたのが『徳川セックス禁止令 色情大名』である。

イメージ 7

イメージ 3

 フランスの著名なポルノ女優サンドラ・ジュリアンが 超乗り気で『先天性淫婦』以来の来日を果たし、その相手役として白羽の矢が立ったのは、彼女と『現代ポルノ伝 先天性淫婦』で競演し、これまた『温泉みみず芸者』でデビューして以来「衝撃のポルノ女優」として「ポルノ路線」を牽引してきた池玲子! プロデューサー・天尾完次、監督・鈴木則文ならずとも、ヒット間違いなし!ともくろんだ企画が、突然の「池玲子ヌード拒否」宣言で、いきなり苦境に立たされる。

イメージ 4


イメージ 5

 そこで急遽代役として名前が上がったのが、渡辺やよい(上記の写真上)と杉本美樹(同下)の2人。過去の自作出演を通して、その人柄の良さと、トランジスターグラマー(「小柄だがグラマーな女性」の意)ぶりが長身のサンドラとのコントラストで映えるという観点から、鈴木監督は渡辺やよいを熱烈に推したのだが、杉本美樹の意外性に賭けたい天尾プロデューサーに圧される形で、杉本美樹を抜擢することに決定。色黒でスレンダー、そして不良少女のイメージがつきまとう杉本美樹が、将軍家の血筋を引く清姫役を演じるのには、いささか無理があると不安視するスタッフ(そして監督)もいたようだが、彼女のシャープな相貌とぶっきらぼうな演技が、却って姫の気品の高さを醸し出し、時代劇に新しい風を吹き込んだようで、実際こんな裏エピソードなど知らない頃にこの映画を初見した私も、全く違和感を覚えることなく楽しんで観賞できたものだった。

イメージ 6

 本作の主演によって、杉本美樹は新たな「東映ポルノ路線」、そして東映プログラムピクチャー界の新たなエース、新たなヒロインとして君臨し、池玲子復帰後も「2枚看板」としてしばらく活躍することになる。もっとも、『徳川セックス禁止令』制作当初は、急ごしらえの代役に不安を感じたのか、本作の特報は、旅客機で羽田に着いたサンドラ・ジュリアンを初来日でもないのに、記者会見まで密着取材するなど、まるで本作がサンドラの「一枚看板」とでも言うがごとき演出になってるのが何とも可笑しい(;^_^A

イメージ 2

イメージ 1