神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『破裏拳ポリマー』 ~リメイクの功罪~

「この世に悪のある限り、正義の怒りが俺を呼ぶ~ゥ!」

 破天荒なアクション(真空片手ゴマ他)や、時折覗かせるギャグ(タイフンホラマーの回とか)で当時とても気に入って観ていたタツノコプロアニメ『破裏拳ポリマー』(確か広島では裏番組が『アルプスの少女ハイジ』!!)。その『破裏拳ポリマー』が実写化されると知り、期待がいやが上にも高まったが、反面タツノコの実写版って『ガッチャマン』や『CASSHERN』の例もあるので一抹の不安もあった。しかし、予告篇を観て、決め台詞も踏襲してるしあの主題歌も新録されていたので、「これは是非劇場に観に行かねば!」と心に誓ったものの、ついうっかり行きそびれて口惜しい思いに陥っていた。

 それが昨日レンタルショップに顔を出すと、なんとその『破裏拳ポリマー』のDVDが既に「準新作」扱いで棚に並んでいるではないか! 気がついたがレジの前に並んで立っていたね(;^_^A そして深夜にも関わらず一気に観させてもらったよ(^^)

イメージ 1

 ストーリーは、オリジナルにリスペクトしつつも、現代の“理屈”に辻褄を合わせた内容になっていて、アクションも期待通り激しく、坂本浩一監督の面目躍如といった作りになっている。原作の「国際警察」が「警視庁」&「防衛省」となっているのも、現実風のアレンジで、一介の助手に過ぎなかった鎧武士は、見事探偵事務所のボス(とはいっても一匹狼だが)に君臨していて、浮気調査などケチな仕事で生計を立てている。この「しがない探偵」にして物語の中心人物・武士を溝端淳平が演じることを知った時には、「あの軟弱な好青年のイメージの溝端にこの役が務まるのか?」って不安もあったけど、なかなかどうして、ぶっきらぼうで粗暴な演技を見事にこなしていた。というか、本来のキャラとは違った役柄を無理矢理こなしている感が、『スケバン刑事』の斉藤由貴南野陽子っぽくて面白かった。実にいい味出していたと思うよ(;^_^A  相手役の山田裕貴は、個人的にはあまり認識していない俳優だったんだけど、煮え切らない、まるで「男じゃろ! しっかりせい!」ってケツでも叩きたくなるくらいだらしない、でも憎めない来間譲一(原作の探偵事務所ボス・車錠のセルフパロディ。しかも原作ファンしか分からないすれすれの“楽屋オチ”も劇中披露)刑事を実に好演していた。普段の山田裕貴はどちらかというとクールな役が似合う俳優らしいから、なかなかの演技力といえるのではなかろうか。

 また、この手の映画には欠かせない“キューティーハニー”こと原幹恵、トレンディードラマの重鎮、というよりは『ウルトラマン80』の“矢的猛先生”役で実は目一杯“こっち側”の男優・長谷川初範、登場した瞬間から悪役って分かるくらいアクの強さをのっけから見せつける神保悟志、といった面々がしっかり脇を固め……どころかガンガンストーリーに介入して八面六臂も活躍を魅せつけてくれる(^^) 特に原幹恵はここでもやはり変身し、悪の「女ポリマー」(この表現って性差別ではないですよねヾ(--;))として激しいアクションまで披露してくれる。

 原作にあるような、あからさまな盗賊団まがいの敵キャラ・組織が登場しないので、物語は結局は国家権力内の「内ゲバ」の如き様相を呈しており、「やっぱ国家権力は酷えや」的なクライマックスを迎える。そんな“権力批判”は嫌いじゃないけど、本作は他の日本のヒーローアクション映画同様、「理屈」「ファンタジー」「メロドラマ」の要素を織り込みすぎだとは思った。なんていうか、もっとストレートに原作世界そのままに、大見得切って外連味たっぷりに描いてくれさえすればいいのに……なんか煮え切らない気持ちになってしまった。

 正直、過去の作品をリメイクして、振り向いてくれるのは過去のファンだけだ。でも作り手にはどこか、「過去のファンから原作を知らない者まで観に来てほしい」との願いから、いらぬ新解釈や、今の時代に媚びた設定(「理屈」「ファンタジー」「メロドラマ」)をしてしまう傾向にある。その心理は分からないわけでもないけど、リメイクと決めた以上、ある程度は覚悟を持って撮ってほしいと思う。

 『電人ザボーガー』がそこそこヒットしたのは、井口昇監督が「リメイク」の意味を弁えていて、当時のファンと井口監督自身のファンという“針の先ほどの層”をキチンとターゲットにして、彼ら(彼女らはいたかな?)が喜ぶものを提供したからこそ、少なくともその層の圧倒的な支持によって、それなりの結果を残すことが出来たのではないかって思っている。そもそもリメイクってそんなもんじゃないだろうか。例えば「ガッチャマン」を知らない今の若い層で「ガッチャマン」のタイトルに惹かれて劇場に来る者なんて皆無だと思う。それよりも「松坂桃李剛力彩芽が主演する近未来SFアクション」のオリジナル映画を作った方がよっぽど観客動員が見込まれるんじゃないか。リメイクということで観客層がしぼられた挙げ句、原作の世界を期待したその層まで、新解釈で幻滅させる。これじゃ悪循環だ……もともと過去の作品のリメイク(昔のTV番組の映画化など)は観客動員の特効薬ではない。細々と、でも一定量確実に稼ぐ最終手段のはずである。それこそ『七人の侍』くらい誰もが知ってる映画のリメイクならば、タイトルだけで誰もが興味を持つかも知れないが(尤も『椿三十郎』『隠し砦の三悪人』リメイクの惨状を考えたら、それを実現する勇気のある……もとい無謀なプロデューサーはいないだろうけど……)、今更それを新解釈でわざわざ観たいってみんな思うかなぁ?

 過去の作品のリメイクの定義として、オリジナル当時は不可能だった技術面での作り直し(モノクロ→カラー、デジタル処理による特殊効果など)をするっていうのがあって、それなら面白いだろう。私も最新の技術によってカラーの『太平洋奇跡の作戦 キスカ』を是非リメイクしてほしいってずっと願い続けているし……。また同じ役を他の役者が演じたらどうなるだろうって興味もある。勿論アニメーションだったキャラを実際の役者がどう演じるかっていう興味も。でもそれならば尚更、原則“完コピ”が望ましいと思う。それで比較が可能になるから。要はリメイクを選んだ以上、作り手には、個々の作家性には多少なりとも目をつぶる勇気も必要なのではなかろうかって考えた次第。