神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ヌイグルマーZ』は『死霊の盆踊り』の忠実なリメイク?

 この映画はまさに“ヒロインアクションムービー”の直球ど真ん中な作品といえるだろう(^^)

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 主人公のロリータ娘(娘と呼ぶには微妙な線だが……(;^_^A)・鮎川夢子(中川翔子)と宇宙生命体ブースケ(声はやっぱりこの人、阿部サダヲ!!)が憑依した縫いぐるみが合体して、ぬいぐるみ戦士「ヌイグルマーZ」(武田梨奈)に変身する、という何なのか誰なのかようわからん物語なのだが、やはり着ぐるみは身につけても変わらぬ武田梨奈のキレキレのアクションが抜群で、見事にヒロインアクションしている

 その武田梨奈が、善悪双方で二役を演じ、しかもその中世的容姿を活かして悪側ではギリギリまで「男役」に徹しているところが面白い(「キル・ビリー」というスレスレのネーミングもGood!)。またかの猫ひろしを悪の首領・タケシ役に抜擢した企画の妙も秀逸で、当初はもてなくて酷い仕打ちにさらされていたタケシが宇宙生命体デバルザと合体してから突如超能力を発揮して悪の組織を立ち上げてリーダーに収まり、怪しげなフェロモンをまき散らして逆に女たちを虜にする、という設定も実にユニークだった。主人公の姪っ子のダチで登場する斉藤工がダメダメ男を嬉々として演じている(しかもすぐに殺されてFO)ってのも面白かったな……(;^_^A

 さて、ここからが本題なんだけれど、本作はヒロインアクションムービーなんだけれど、なかなか素直に楽しませてくれない。それというのも、あまりにも主人公の夢子に過剰なほどの過酷な設定をしているからだ。身寄りが亡くなった彼女が家族につてを頼って姉の家に転がり込んだとき、母親である姉の愛情に飢えていた一人娘の響子は、自分が独り占めしたい母の感情が夢子にも注がれるのを怖れ、彼女のその得意な容姿も相まって、彼女をとことん嫌悪する。しかも3人で外食中、突如現れたゾンビ集団に襲われた際、そのゾンビの一人が放った銃弾から響子をかばうために絶命した母親を、「夢子をかばった」と誤解した彼女は、嫉妬と共に夢子を徹底的に憎悪を抱くようになる。そんな中でも二人は共同生活をしなければならず、その後すっかりグレてしまった女子高生の響子と、それでも彼女に理解してもらいたく、必死に空しい努力を続けていく健気な夢子、という構図が続く。そんな響子の誤解はラスト近くまで解けることがなく、また夢子の良かれとした行動が又新たな誤解も招いていく、という展開は見ていて痛々しく、同じ井口昇監督作品『電人ザボーガー』の時もそうだったが、「もうそこまで追い詰めるなよ」って思えて仕方がなかったな。でも、だからこそ、最後まで観なければ浮かばれない、って思って一生懸命観たけどね(;^_^A

 これは「スカッとJAPAN」にも石井輝男監督の『地獄』にもいえることなんだけれど、いくら最後に勧善懲悪のオチが用意されているとしても、そこに至る過程があまりにも長く不愉快すぎると、却ってラストのオチが嘘くさく思えて、折角の敢然著悪を楽しめなくなるきらいがある。きっと作り手はその展開に“酔って”しまっているんだろう(自分は最初から結末を知っているからね)けど、観る側は実にヘビーだ。そこら辺をもっと考えて、楽しい映画にしてほしいモノだな。

 ところで本作の一番の見所は、阿波踊り大会をゾンビが襲った挙げ句、ゾンビの一大阿波踊り集団が出来上がるシーンだ。ここはまさに、かの迷作『死霊の盆踊り』の忠実なリメイクだと思ったね(;^_^A

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