神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『大都会』 ドラマからアクションへの変遷

 かつて広島の高校生だった頃、東京にある地名「日暮里」を「ひぐれざと」だと思いこんでいた。当然ながら、実際は「にっぽり」。高校卒業直後の東京旅行で初めて山手線に乗ったとき、そのアナウンスを聴いて驚いたのを、今も記憶している。
 
 ではなぜ、そんな勘違いをしてしまったか……? それは「日暮れ坂」(渡哲也)の影響が大だったと思う。
 
 これは、彼が主演を務める石原プロモーションの刑事ドラマ、『大都会PARTⅢ』のエンディングテーマとして、毎回大団円の中流れていた歌謡曲だ。当時刑事ドラマ(そして「火曜サスペンス」が始まる前の、火曜9時の日テレ枠)にかぶれ、本作をその前身『大都会PARTⅡ』の頃から欠かさず見てきた私の耳に、この歌はこびりついていた、といっても過言ではない。毎週、「人権」や「モラル」といったものを遙か彼方に忘れてきたかのような、激しい銃撃戦と情け容赦ない暴力に充ち満ちた演出に、いつも心の底から爽快感に浸ったものだった。
 
 またエンディングの渡哲也の渋い歌のみならず、ブラスによるオープニングテーマのかっこよさも魅力的だった。当時吹奏楽部に所属してたため、見様見真似で吹いたりもしたが、「PARTⅢ」の3オクターブにもまたがる音階には苦闘したものだった
 
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 さて、ドラマの方だが、個人的には「PARTⅡ」の方が好きだった。それというのも、“トク”こと徳吉刑事役の松田優作の、人をなめたような馬鹿ギャグ演技があまりにもおもしろく、それまでの硬質な優作のイメージとのギャップですっかりハマってしまったからだ(結構アドリブもあったらしい……)。このノリは『探偵物語』で昇華されていったと思うが、とにかく楽しかった。ドラマもまだ「PARTⅡ」の方が、アクションというよりはドラマで魅せていたように思う。
 
 それが「PARTⅢ」になってから、“マグナム弾”を打ちまくる牧野刑事(寺尾聰)の合流を含め、急に情け無用のガンアクションにシフトしていった。この後、石原プロはテレ朝で『西部警察』を製作していくのだが、思うに、日テレでスタートした『太陽にほえろ』で新たな“TV刑事ドラマ”を構築した同プロが、その世界観を一気に破壊するような“刑事ウエスタン”を撮る過程で、その橋渡し的な役割を果たしたのが、件の『大都会PARTⅢ』であったような気がする。
 
 この“火曜9時日テレ枠”の黄金時間帯は、石原プロ撤退後も、前出の『探偵物語』、『大激闘マッドポリス'80(特命刑事)』、『警視-K』とすさまじいラインナップで、我々の世代の“男子”を大いに楽しませてくれた。今や刑事ドラマそのものの需要もなく、これらの番組を“懐ドラ”としてDVDや「ファミリー劇場」で楽しむ術しか「刑事ドラマファン」の選択肢は無くなってしまったが、この頃の情熱が、私にとっては今も映画製作の糧になっている……と思う。