神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『カムバック★トゥ★ハリウッド』~ハリウッドの超一流が演じる、予定調和のB級娯楽ムービー~

 この週末に、イオンシネマ広島西風新都で『カムバックトゥハリウッド』を観賞。ロバート・デニーロモーガン・フリーマントミー・リー・ジョーンズといった、泣く子も黙るハリウッドの重鎮が名を連ねた、それでいてとことんB級テイストに満ち溢れた、予定調和のギャグムービーだった。

 

 

 デニーロ演ずるB級映画監督&プロデューサーのマックスは、先に制作したエクスプロイテーションムービーの『尼さんは殺し屋』が、宗教団体の抗議行動によって不入りが続き、映画好きのマフィアのボス・レジーモーガン・フリーマン)から出資してもらった35万ドルの返済のめどが立たず窮地に陥る。そんな折、元後輩の現場でスター俳優が事故死し、それによって莫大な保険金が支払わせたことを知り、起死回生のアイディアがひらめく。

 

 即刻マックスは、とある作戦をレジーに伝えて、更に100万ドルの収支を募ると、それを軍資金に新作映画を企画。しかしその主演俳優を老人ホームに求め、たまたま入居していた、今は落ち目の元西部劇スター・デューク(トミー・リー・ジョーンズ)を、新作映画の主演男優に決定する。しかしマックスに映画を製作する気などサラサラなく、デュークに多額の保険金をかけ、撮影中の事故を装い彼を死なせて保険金をせしめるという、詐欺が本当の目的だったわけだ。勿論あくまで“死なせて”な訳で、直接手を下すことなく、敢えて不慣れな新人監督を抜擢し、危険なスタントを提案しながら、本当に事故死を図るのが作戦だ。それ故、老い先短い老人を主人公に抜擢しなければならなかったわけだ。

 

 マックスの思惑通り、久々の主演に燃えるデュークは、危険なアクションも自身で演じようとする。しかし、彼が仕掛けた燃え盛る馬車を飛び越えさせる危険なシーンも、細工を施した一本橋つり橋の崩壊事故でも、そして赤いテンガロンハットをかぶらせて獰猛なバッファローをけしかた時も、デュークは信じられない身体能力でそれを乗り越え、そのたびに素晴らしいカットが撮り上げられていく。マックスの思惑とは裏腹に、「これならアカデミー賞が狙えるのでは!」と大いに盛り上がる現場。

 

 そんな折、たまたま制作会社の社員である甥っ子のウォルターから、制作中の映画『西部の老銃士』のラッシュフィルムを見せる。するとその素晴らしい出来ばえとデュークの颯爽とした演技に、欲に駆られて眠っていたはずのマックスの映画魂に俄然灯がともる。しかし丁度その時、何時になっても、デューク死亡の連絡が入らないレジーは、ついに業を煮やして、直接デュークを殺害すべく、部下を引き連れて撮影現場に向っていた。果たしてデュークの、マックスの運命や如何に………?

 

 なんて謎かけが陳腐に思えるほど、物語はこの後もラストに向かって予定調和に進行していく。登場人物だけがその先を分かっていないだけで。ただ、その結末に向けて、これまた陳腐ながら、映画ファンにとってホロリとさせられる展開が挿入されている。他にも、マフィアのレジーが台詞に端々に映画のタイトルや名シーンを引用したり(それだけ映画好きであることを強調しつつ、それが伏線となってクライマックスの“ホロリ”に繋がる)、マックスがお気に入りの台本を譲るよう元後輩から執拗に迫られた時、「お前に売るくらいなら、エド・ウッドにくれてやった方がましだ」云々といったところなど、1970年代映画界の小ネタがふんだんに散りばめられている。設定も1974年らしい。それでいうと、マックスのミラクル映画社は、まるで同時代に“B級映画の帝王”ことロジャ-・コーマン御大の数多の作品を配給したAIPのようである(でも、決してマックス=コーマン御大ではない)。とにかく、前述のラッシュを観たマックスがそれで改心する(そして同様のシーンががクライマックスにもある)という設定などを見ても、まるで映画マニアの素人が考えたのかっていうくらい、ベタなまでに映画愛に満ち溢れた作品に仕上がっていた。

 

 内容もまさによくあるB級映画のストーリーだし、ホントに1970年代に、バート・ヤング(マックス)、ジョン・キャラダイン(デューク)、ジョージ・ケネディ(レジー)あたりで制作されていてもおかしくないような作品だ。それを超メジャーの重鎮俳優たちが何ともみすぼらしく演じているのが、それだけでギャグだ。モーガン・フリーマンが間抜けなマフィアのボスを演じるのも、デニーロが、本当に身も心もクズなプロデューサーを演じるのも。その中で唯一ある種バカバカしいまでに“超人ヒーロー”を演じるトミー・リー・ジョーンズは、強いて言えば3人の中で一番本作に向いている俳優だったかな(まぁ『ローリングサンダー』にも出てる役者だしね)。そういえば、マックスがあの手この手でデューク殺害を図り悉く失敗してしっぺ返しを食らう場面は、まるで『暗闇でドッキリ』でクルーゾー警部の殺害をたくらみいつも失敗するドレファス本部長や、ワーナーアニメ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー』で、執拗にロードランナーの捕獲を試み、毎回失敗の上ひどい仕打ちを受けるコヨーテのようである(;^_^A

 

 そういえば、予定調和の中物語が終了し、「予定調和過ぎてちょっと物足りないなぁ」なんて思っていたら、アバンタイトルでとんでもないものを見せてもらった。もうこの映像だけで入場料の半分以上は回収できたっていうくらいのサプライズ映像だった(^^)

 

 すでにその映像はYoutube上にUPされているし、直接本作ストーリーのネタバレにもならないので、また改めて紹介したい。何と「ヒロインアクション」だったよ!?(;^_^A